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「だから、あたしらが結婚する相手は、お前だ」

「………は?」


 んん? リージュたちが結婚する相手が、俺? …………は? え? 俺斉藤と結婚する、っていうか、え?


「タカオさん、常識的に考えて、私たちにタカオさん以外に身近な男性はいないと思うんですが」

「え、は、いや、でも俺、斉藤と結婚するし」

「高雄君、日本の常識に縛られすぎだよ。この国では一夫多妻も珍しくないんだから」

「…いっぷたさい? ……え、ちょっ、ちょっと待てよ。つまり、三人とも俺の奥さんになるってこと?」

「そうですよ」


 は? ………は?


「え、お前ら、俺のこと好きなの?」

「好きですよ?」

「ハズいこと言わせんなよ、好きじゃねーやつと結婚するわけないだろ」

「え、マジで? ちょっと、ちょっとちょっとほんとに待て。そんないきなり言われても。ていうか斉藤はいいのかよ」

「この二人なら、私も好きだしね」

「好きとかいう問題か!?」

「タカオさん、さっき私たちがタカオさんの知らない男性と結婚すると勘違いした時、どう思いました?」

「え?」

「いいから、一回頭からっぽにして、私の質問に答えてください」

「え、そりゃ、嫌だけど」

「それはなんでですか?」

「それは…知らないやつといきなり結婚するとか、薄情すぎるというか、水くさいし」

「じゃあタカオさんにちゃんと紹介したとして、不細工で弱くて無職でも祝福してくれましたか?」

「するかっ! 絶対認めねー!」

「では、逆にタカオさんより背が高くて顔がよくて強くて収入がいい人なら、心から祝福してくれますか?」

「う……そ、それは…」


正直、それはそれで嫌だ。いや、二人が選んだ以上、そもそも最初のダメな方でも否定する権利とかないけど、でも二人が俺の知らないとこで男とキスしたりいちゃついてるとか、何か嫌だ。


「嫌ですか?」

「まぁ……なんというか、ほら、家族みたいなものだし、姉をとられたくない弟心と言いますか」

「なんでもいいです。嫌なんでしょう? ならタカオさんと結婚すれば、ほら解決です」

「えー、解決かぁ?」

「あーもう! ぐずぐずうっせぇんだよ! タカオ!」

「お、おう!」

「あたしらを女として見れるのか、見れないのか、どっちだよ!?」

「……見れる」


 答えてから、今更きづく。そうだ。俺は家族としてとか言いつつも、こうやってちゃんと見れば普通に女と意識する。だからこそ他の誰かと結婚されるともやもやする。

 もちろん一番好きなのは斉藤だ。でももし斉藤と再会できないままなら、多分どっちかと結婚しただろう。そのくらいには普通に二人とも愛してる。仲間としても、女としても。


「なら結婚してもいいだろうが! ていうか、もうあたしらもいい年だし、この年までお前に付き合ってんだから、責任とれよ馬鹿野郎!」 

「わ、わかった! わかったよ!」

「ほ、ほんとか? ほんとにあたしと結婚してくれんのか?」

「ああ。お前ら一回しか言わないからよく聞けよ!? 俺はお前らが好きだ! 他の誰にも渡したくない! だから三人まとめて俺の嫁になって、ずっと一緒にいろ!」

「うん!」

「仕方ねーから、いてやるよ」

「タカオさんは私たちがいないと、ダメダメですからねぇ」

「人が真面目にプロポーズしてんだから、そこは素直に頷けよ! やっぱり斉藤だけと結婚するぞ!?」

「それはダメだよ、高雄君。男に二言はなしだからね」

「は、はい」


 あれ、なんで斉藤にダメ出しされてんの? おかしくない?


「それではタカオさんも納得したところで、そろそろ式場に向かいましょうか」

「あたしは右な」

「私は左をいただきます」


 シュシュとリージュに左右を挟まれる。お、おいおい。二人に挟まれるのが嫌なわけじゃないけど、斉藤はどうするんだよ?


「高雄君、私ね、二人のこと好きだから、四人で結婚して暮らすのってすごく楽しいと思うんだ」

「あ、ああ、そうだな」

「でもね」


 斎藤は正面から俺に抱きついてジャンプするから思わず抱きかかえ、流れでお姫様抱っこになる。


「第一夫人は、私だからね」


 とびきりの笑顔になる斎藤に、俺はなんと言おうか考えて、わからないのでとりあえず。


「斎藤は可愛いなぁちくしょう!」

「タカオさん、私は?」

「あたしのことも褒めろよ」

「はいはい。お前らも最高に可愛いです!」








 結婚をした俺たちは、四人で暮らすことになった。ザウルさんとのんびり暮らすこと3ヶ月。何故か俺は、海の上にいた。


「おいタカオ」

「なんだ、リージュ」

「どうしてあたしらは、船に乗ってるんだ?」

「さっきシュシュが説明しただろ」

「あいつの説明は難しいからわからん。タカオくらい馬鹿なやつからの説明のがわかりやすいんだよ」

「誰が馬鹿だ。あんまりむかつくこと言うとキスするぞ」

「ばっ、な、何言ってんだよ! ったく、恥ずかしいこと言うなよ」

「散々キスくらいしてるだろうが」

「そういう問題じゃねぇよ。人に聞かれたらどうすんだ」

「船員はみんな忙しいし、聞いてないさ。それに俺たち夫婦なんだし、別にいいだろ」


 というか、逆にお前が初すぎるんだよ。全く。可愛いんだから。リージュをからかってから、でもさすがにこれ以上すると拗ねてしまうので、改めて説明してやる。

 発端は斎藤の発案だった。魔大陸の魔族と仲良くなれないか、というものだ。魔大陸は魔物のものだと思われているが、そうではない。確かに魔物が溢れているが、人に近い魔族たちがすんでいる。魔物がいても気にならないほど魔族は強くて、人間を見下していて交流をもとうとしない。魔族が関わろうとしないので魔大陸にいったらそく死ぬ人間は魔族の存在すら知らなかった。

 だが斉藤は知っている。なんだかんだ言って斉藤は魔族を嫌いにはなれないのだ。ラーディンの存在もそうだが、言葉を交わして、意志疎通できるのに全く関わらないなんて勿体ないと斉藤は考えている。

 そしたらシュシュが何を考えてるのか、魔大陸を旅して歩き、魔族と交流すれば人間への意識を変えさせられるんじゃないかと言い出した。魔族が人間に関わらないのは弱いからで、ほんとに全く関わろうとしないので、食わず嫌いなようなものだ。強い俺たちなら相手にできるし、やってみる価値はあると、そう言った。


 そうしてあれよあれよと言う間に海の上だ。


 まだ全然新婚を満喫してないのに、何を考えてるんだかシュシュは。斉藤は単に善意とかだろうが、シュシュはなーんか企んでる気がする。というか、そうじゃなきゃ言い出さないだろう。


「うーん、まぁ、いいか。旅するの好きだし、それに魔族と戦うのも楽しそうだしな」

「おい、別に魔族と戦争しにいくわけじゃないんだぞ?」

「わかってるって。でも絶対戦闘になるだろ?」

「まぁ……なるな」

「だろ? よし、なんか燃えてきた。あたし、部屋行って剣といでくる!」


 疑問顔だったリージュも、自分で納得できたらしくにかっと笑うと立ち上がって走るように去った。元気なやつだ。

 俺はリージュが去ってから、船の先へ移動する。遠くに見える魔大陸。懐かしいような、そうでもないような。


 まぁ、いいか。四人一緒なら、どこにいたって楽しい。長い人生だ。のんびりといこう。










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