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ななみけ  作者: るべの
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第九話:今井の襲来

「お、今井か? 」


今井は家に帰ろうと下足ロッカーの前で靴を履き替えると担任に声を掛けられる。


40代ぐらいで顎鬚が特徴の名前は田路だったはずだ。


語尾が“はずだ”なのは、今井はそんなムサイ男には興味がない青春真っ只中の男子高校生だからである。


「はい、何でしょうか? 」


だが、今井はそんなことを顔に出さずに聞き返す。


「悪いが七海にこれ届けといてくれ」


「何ですかこれ? 」


「これって、そりゃあれだろう、鞄に靴にブレザーだろ」


「そ、そうですよね」


「見たら分かるだろう」


可笑しな事を言うやつだな、とでも言いたげな表情でこちらを見てくる多分、田路先生。


「ははは、そうですよね・・・とでも言うとでも」


「ははは、そうなるよね」


二人で笑い合いった後、およそ田路先生が言う。


「俺もびっくりしたよ。教室に鞄とブレザーがあったからまだ学校にいるのかなと思ったけどさ」


「いなかったんですか? 」


「まあな。その後、弟さんから電話があってな」


仁君のことか、と今井は思った。


「うちの雪が今日、学校から何も持って帰って来ずに帰ってきてそのまま遊びにいったんですけど、何か知りませんかって? 凄く礼儀正しい子だったぞ」


七海・・・どんだけ無邪気なんだっ!!と、今井は更に雪の好感度を上げつつ、田路らしき人の話を聞く。


「で、まあ色々あって、今井に持っていってもらうことにした」


「色々って何ですか? 」


「まあ色々だ。まぁよかったじゃないか」


そう言って、今井の傍まで寄って持っているものを渡す。



「コレで七瀬のハートをキャッチしてこいっ!! 」



うわ、凄くうざいよこの人。何で知ってんだよ。やめろ、親指を突き出すな。


今井は軽く担任の好感度を下げつつ、七瀬の家に向かう。





「わざわざ届けてくれてありがとう。へんた、じゃなかった今井」


「今、変態と言おうとしたよね。したよね」


「まあ、折角来たんだ、コーヒーぐらい淹れよう。それと蒸しパンがあったはずだからあがってくれ」


「え、無視なの!? そこ無視なの!? 」


「蒸しパン嫌いなのか? 」


「いや、そうじゃないけど。って君、今のもわざとだろっ!? 」


「まあ、お遊びはここらへんにして入ってくれ」


「遊びだったの!? 」


「悪いのか? 」


「開き直っちゃったよっ!! 」


と、今井は仁に散々いじられた後、遠慮がちに玄関に入る。


そこで今井は前回来た時より靴の数が多いことに気づく。


「お客さん? 」


「ん? あぁ、これは話すと長くならないんだがな」


「・・・じゃあ話してよっ!! 」


「ツッコミが遅れたな。それじゃまだまだだな」


「いや、別にツッコミをマスターしようとしてるわけじゃ」


「そうなのか? 」


そう言って、本当に驚いたみたいな顔をする仁。


「まぁもうどうでもいいや・・・そろそろ、上がらしてもらっていいですか」


「ん、千円」


「・・・なんでやねん」





「仁にぃ、お客さん? 」


玄関からリビングへ行く途中の廊下で仁の後ろを歩いていると脇の部屋からショートカットで小学生高学年ぐらいだろうと思われる少女が仁の下に駆け寄ってきた。


「あぁそうだぞ夢。ちゃんと挨拶しなさい。この人は雪のストっじゃなくて、今井君だ」


仁は夢というらしい少女の頭を撫でながら、そう言った。撫でられた彼女は少しくすぐったそうにしているがとても喜んでいる。


笑顔が少し雪に似ていて可愛らしいなと思った。じゃなくて、


「今、ストって言ったでしょっ!! スト何? スト何なの? 」


今井がそう叫ぶと夢はびっくりしたようで仁の後ろに隠れてしまった。


「仁にぃ」


助けを請う様な目で仁を見ながらそう弱弱しい声音で言った。


「大丈夫だ夢。この人はちょっと頭がおかしいけど根は優しい人なんだぞ・・・多分」


仁はもう一度夢の頭を撫でてやると優しい口調でそう語りかけた。


それはそれは優しい笑顔で、清清しいぐらいの笑顔で。



「こらこらっ変な印象を植え付けるのはやめてよっ」


「じゃあ取りあえず、大きい声は止めてくれるかな」


「君がそうさしてるんだろっ!! 」


「え、まじ? 」


「・・・もういいです」


両手を投げ出して惚ける仁は放って置いて、今井は夢に近づく。


そして夢の前まで来ると少ししゃがみ込んで彼女の顔が目の位置に来るようにする。


「えっと、僕は雪さんのクラスメイトの今井です」


「クラスメイト? 」


雪は小首を傾げる。クラスメイトの意味が分からなかったらしい。


今井は少し微笑んで意味を教えてあげることにする。


「えっとね、クラスメイトっていうのは」


「許婚と言う意味だ」


だが突然、あの男に横槍を投げ入れられる。今井は引きつった顔で仁を睨んだが、仁は惚けるように視線をそらす。



「えぇぇぇぇ」


仁を睨んでいると突然、耳の中に直接響くような甲高い声が聞こえた。


その叫びのほうに視線をやると夢が目を大きく見開いて口を両手で塞いでいた。


って、許婚は分かるのかよっ。そう思いながら、今井は慌てて訂正を加える。


「えっと、違うよ夢ちゃん。クラスメイトっていうのはね・・・」


「よろしくお願いします。お義兄さん」


「えっと夢ちゃん多分、そのおにいさんは漢字が違う気がするよ」


「ふはあっはは」


「って君も笑ってないで何とかいいなよっ!! 」


「いや、だって、プッ、面白すぎる」


「えっと、雪ねぇはちょっと情けないところもあるけど、根は優しいから、えっと見捨てないでくださいっ!! 」


「こらこら、夢ちゃんも落ち着いてっ」


「ふ、ははっはははあはは」


「お前はそろそろ黙れっ!! 」



そんなこんなで今井が終始いじられて続く。





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