仲間の大切さ
「…でも、前科持ちは弁護士なんかになれないんじゃないか?」
中森は不安そうに尋ねた。
「大丈夫。私、日弁連の会長と仲がいいの。事情を話せば、きっと何とかなる」
上山は自信満々に言った。
「挑戦しない未来に、希望はない。あなたはそれでいいの? そんな汚い世の中に満足しているの? そんな世界で生きていきたいの?」
上山は真剣な眼差しで言った。
その言葉を聞いた瞬間、中森の脳裏に四年前の出来事がよみがえった。
「この世界は立場がすべてだ。学校では生徒は教師に従い、会社では部下は上司に従う。そして社会では、警察が決めたことが真実になる。憲法など、きれいごとに過ぎない。逆らっても無駄だ。罪を認めろ」
氷山のその冷たい声を思い出し、中森は絶望のあまり崩れ落ちた。
——違う! そんなはずない!!
世界はもっと自由で、平等で、素晴らしいはずだ!!!——
中森は心の中で叫んだ。
ーああ、俺はこの世界を、自由で、平等で、素晴らしいものにしたかったんだ……。今なら、仲間がいる。今なら叶うかもしれない。わずかな希望の光を信じて、挑戦してみようー
そう決意し、中森は顔を上げて言った。
「俺の夢は、世界をより良く変えることだ。よし、決めた。俺、弁護士になる!」
力強く言い切ると、上山は彼のまっすぐな目をじっと見つめた。
その日の夕方。
バイトを終えた中森がマークドナルドを出ると、そこには上山が待っていた。
「さあ、特訓よ」
二人は鎌倉駅前のカフェ「スターダストコーヒー」に入り、さっそく勉強を始めた。
「違う。sinθは y/r、cosθは x/r。じゃあ、tanθは?」
上山は真剣な表情で問いかけた。
中森は首をかしげた。
「タンジェントシータは…a分のb?」
「違う! tanθは y/x!! いい加減覚えて!」
こうして、特訓の日々が始まった。
上山は毎日のように中森に勉強を教え、中森も必死に食らいついた。
ある日、中森はふと尋ねた。
「大学…どうするの?」
「あなたはどうするの?」
「俺、赤山学院大学にする。頭もいいし、何よりおしゃれで楽しそうだ。でも、上山は…」
上山は少しだけ微笑んで言った。
「じゃあ私も東大はやめて、赤学に行く。あなたと一緒がいいから」




