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【第7話/13日目】 ブラウスと制服の距離感

朝、シャツのボタンが上まで閉まらなかった。


「……は?」


鏡の前でシャツを引っ張る。だけど、第二ボタンのところで布がつっぱって、指先が止まった。

まるでそこに“膨らみ”があることを、制服そのものが主張してきているみたいだった。


(いやいや、洗濯ミス? 縮んだだけ?)


そう思い込もうとしたが、違った。

だって昨日の夜、風呂上がりにブラを外したとき――確かに、指先に伝わった丸みと柔らかさ。

あれは、気のせいなんかじゃない。


「……っくそ」


慌ててTシャツを下に重ねて、ボタンをなんとか留める。

けれどそれでも、胸元にうっすらと浮き出るライン。

スラックスのウエストも、少し緩くなっていて、骨盤の角度すら違ってきた気がする。


(これ、もう“服”じゃ隠せないんじゃ……)


登校中、すれ違う視線が、気のせいじゃないように思えてしまう。

誰かに見られている――そんな意識が全身に張りついて、息苦しい。


「よ、陽翔! お前さ、なんか背伸びた?」


悠真の何気ない一言に、びくりとする。

背じゃない。多分、胸元か、腰回りのラインだ。

けれど悠真は、気づいていても笑うだけだ。

そこに優しさがあるからこそ、余計に胸が締めつけられる。


教室に入ると、女子たちが視線を交わすのが見えた。


「……あの子、なんか最近雰囲気変わったよね」

「髪伸ばしてるのかな?てか、あれ……?」


声には出さない。でも、目線が語っている。

“なんか、違う”。それがはっきりと、距離に滲んでいた。


授業中、前かがみになるだけでブラウスが引っ張られ、背中が妙に突っ張る。

板書する腕の動きに合わせて、胸の布地が微かに波打つのが、気になって仕方がなかった。


(こんなの、普通の男子なら絶対に感じない)


けど――その「違和感」が、今の“俺”にとっては日常になりつつある。

制服の中で変わっていくのは、ただの身体じゃない。

“男だった自分”の輪郭が、少しずつ、制服の布地に飲み込まれていく。


──13日目。パツパツのシャツが、変化の証だった。

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