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【第38話/95日目】 涙の夜、恋の答えはこの胸に

夜、雨が降っていた。


静かに、けれど絶え間なく窓を叩くその音が、まるで私の心をなぞるように響いていた。

答えは出さなきゃいけない。

そう思いながら、胸の奥ではとっくに鳴っていた“本音”の声を、

私はずっと、聞こえないふりをしていた。


遥香は、過去をつないでくれた人だった。

優しさで抱きしめてくれた。

“今の私”を、まるごと包み込んでくれた。


でも、なぜだろう。


その温もりの中で、私はずっと“良い子”でいようとしていた。


(傷つけたくないから、選ばなきゃって思ってた)


(でも……それって、本当の“好き”じゃない)


スマホの画面に浮かぶ悠真の名前を、何度も見ては閉じた。

でもその手は、なぜか震えていた。


“怖い”のは、拒絶じゃない。

“好き”だと伝えた瞬間に、自分という存在が誰かに“完全に委ねられてしまう”ことだった。


でも。


もし、その人の前でだけ、

何も飾らず、何も考えず、

ただ“私”でいられるなら――


それが、“恋”なんじゃないかって思った。


気づけば、玄関のドアを開けていた。


小さな傘をさして向かったのは、悠真の家だった。


呼び鈴を押す手が震える。

心臓が痛いくらい脈打っていた。


ドアが開いた瞬間、見慣れた顔と、

見慣れたはずなのに、今夜はやけに優しく見える目が現れた。


「……陽翔?」


「ちょっとだけ、顔……見たくて」


言葉にした途端、涙がこぼれた。


拭こうとする間もなく、悠真が私を引き寄せて、

何も言わずに、ただぎゅっと抱きしめてくれた。


それだけで、

この胸の奥にあった答えが、はっきりと形を持った。


(私は――この人の前で、ずっと“わたし”でいたい)


誰を好きかじゃなく、

誰の前で一番、素直になれるか。


恋の答えは、最初からずっと、

この胸の奥で鳴っていた。


ただ、それに気づくのが、少し遅れただけ。


──95日目。私の“好き”は、もう迷わなかった。

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