【第19話/37日目】 好きになっちゃいけない人を、好きになった
「……マジで、悠真、ずるいよ」
声には出さなかったけれど、心の中では、もう何度もそう呟いていた。
今日は、悠真とふたりで駅前の文房具屋に寄った帰り道だった。
買い物の内容なんて、大したことじゃない。
試験用のシャーペンと、新しいノートと――
でも、そういう“くだらない日常”の中で、一緒にいられる時間が、どんどん特別になっていく。
「ほら、これ陽翔好きそうじゃね? なんか、ちょっとおしゃれな感じのやつ」
「……お、おしゃれって……俺そんなキャラじゃないし」
「いや、最近は“それっぽく”なってきてんだよ、いろいろ」
無自覚に放たれるその言葉が、
無防備な笑顔が、
まっすぐに俺の胸を貫いてくる。
(そういうの……ダメだろ、悠真)
“男同士”だった。ずっと、そうだった。
家族みたいで、気楽で、深く考えない関係だった。
だけど、今は――違う。
隣を歩くだけで、
手が触れそうな距離にいるだけで、
心がざわついて、目を合わせるのが怖くなる。
“恋”だって、自分でも分かってしまった。
しかも、それは――
(好きになっちゃいけない相手への、気持ちだ)
もし、あいつにこの想いがバレたらどうなる?
気持ち悪がられる? 離れられる? 軽蔑される?
そんな想像ばかりが、頭の中をぐるぐる回る。
だけど、それでも。
「なあ、陽翔」
不意に呼ばれた声に、思わず肩が跳ねた。
「……え、なに?」
「最近さ。……お前が女になっても、たぶん俺、普通に友達でいられると思うわ」
一瞬、時が止まった。
「……それって、冗談?」
「いや、本気。……てか、なんでそんな顔してんの?」
「……わかんねぇよ、そんなの……っ」
声が震えそうになるのを、噛みしめて抑えた。
悠真は、悪くない。
ずっと変わらず、俺を友達として接してくれている。
優しいし、器用じゃないけど真っ直ぐで、そこがずるいくらい魅力的で――
だから、好きになっちゃった。
絶対に、いけないと思ってたのに。
(どうして、こうなったんだよ……)
変わっていく身体。
それより早く変わっていった心。
追いつけないのは、いつも“理性”だった。
──37日目。恋は、ダメだと思うほど深くなる。
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