表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/42

【第15話/30日目】 もう“戻りたい”だけじゃない気がした

朝、制服を着る手が、やけにスムーズだった。

第二ボタンをひとつ残し、シャツの裾をスカートに――じゃない、スラックスに押し込む。


……そう、まだ制服は“男のもの”のまま。

だけど、ブラの締め付けに自然と身体が馴染んでいて、もはや着ないことの方が不安に感じるようになっていた。


(……慣れてきてる? 俺)


洗面所の鏡の前。

そこに映るのは、もう“あの頃の俺”じゃない。


頬は少しだけ丸みを帯び、髪も伸びて、声も柔らかくなっていた。

顔を歪めようとしても、それは“男の俺”の顔ではなかった。


(戻りたいって、思ってたはずなのに)


呪いが解ければ、元の身体に戻れる。

100日以内に誰かに“愛されて満たされれば”……それが条件だった。


けど、そのために頑張ってきたはずなのに――


最近の俺は、その“条件”を果たすことよりも、“今の自分”とどう付き合っていくかに意識を向け始めている。


「“女にならないように”頑張る」のではなく、

「“このままでも平気かも”って思い始めてる」自分に、ふと気づいた。


学校では、もう誰も明確に「おかしい」とは言わない。

けど、視線は変わった。

空気も、距離も、微妙に違う。


そんななかで、唯一変わらないのは――悠真だった。


「陽翔、お前ってさ。最近ちょっと、“余裕出てきた”よな」


「は? なんだよそれ、変な意味で言ってないだろうな」


「いやいや、いい意味。前はピリピリしてたけど、今は……うん、“肩の力抜けてる”って感じ」


笑ってそう言う悠真の目が、まっすぐで。

それが、嬉しくて――でも、苦しくて。


“今の俺”を、ちゃんと見てくれてる気がしたから。

それが、居心地よすぎて。

このまま、“男に戻ること”が怖くなりかけていた。


(もしかして……俺、もう“戻らなくてもいい”って思ってる?)


言葉にするのはまだ怖い。

でも、心のどこかで確かに、そんな声が響いていた。


「……変わっちまったな、俺」


誰に言うでもなく、そう呟いた声は、

自分の中で妙に澄んで、どこか優しく響いていた。


──30日目。“戻る”ことだけが正解じゃない気がしてきた。

この作品が面白い、続きが読みたいと思ったらブクマ・評価・リアクション・感想などよろしくお願いします。


続きを書くための励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ