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【第12話/22日目】 “女”として恋されている予感

最近の悠真は、ちょっとおかしい。


いや、きっと変わったのは、悠真じゃなくて――俺の方なのかもしれない。


「ほら、前髪また伸びてきてんじゃん。目にかかってて邪魔そう」


放課後、図書室帰りの廊下。

何気なく俺の髪に手を伸ばして、指先で軽く持ち上げる。


ただそれだけのこと。

昔なら、笑って「うっせーな」で流せた。

でも今は、指先が触れた瞬間に、呼吸が浅くなる。


「切った方がいいか?」


「……そ、そうだな、今度な……」


声がうわずりそうになるのを、必死でごまかす。


悠真の仕草は、ずっと昔から変わらない。

けど、視線だけが――少し違う。


どこか探るように。

でも優しさに包まれていて、まっすぐで。


それが、怖かった。


(見てるのは、“俺”じゃない。たぶん……“私”だ)


ほんの少しずつ、俺の中の“何か”が変わっていって。

でも、自分ではまだ「男だ」と思ってる。そう言い聞かせてる。


なのに――悠真の視線が、

その“自己認識”を揺さぶってくる。


この前、手が触れたときの感触が、まだ身体に残っていて。

それからずっと、あいつと目が合うたびに、胸がじんわりと温かくなる。


そして今日の帰り道、信号待ちのとき――


「なあ、陽翔ってさ」


悠真がふと、俺の横顔を見ながら言った。


「なんか最近……“優しくなった”っていうか、“柔らかくなった”って思うの、俺だけか?」


「……それ、どんな意味で?」


笑って流そうとした声が、かすれていた。

心の奥が、ぎゅっと音を立てる。


「いや、悪い意味じゃない。……なんか、ドキッとするっていうか」


「…………っ」


鼓動が、跳ねた。


悠真は気づいていない。

たぶん、そんなつもりじゃない。

あくまで無自覚。そう思いたい。


でも。

あの“ドキッとする”って言葉が。

あの視線が。


俺に向いているのは、“男友達としての陽翔”じゃない気がして――


それが、怖くて。

けど、どうしようもなく、嬉しかった。


──22日目。恋は、知らないうちに始まっていた。

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