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【第11話/20日目】 悠真の手に触れたとき

日が暮れかけた放課後。

コンビニでアイスを買った帰り道、俺と悠真は、いつものように並んで歩いていた。


「うわ、これマジで溶けるの早ぇ……あ、ティッシュ持ってたっけ?」


悠真がポケットを探りながら、アイスの棒からポタポタと雫をこぼしている。

俺は、何気なくバッグを開けて中を探った。


「あ、あるわ。ほら」


手を伸ばす。その瞬間――

アイスを受け取ろうとした悠真の手と、俺の手が触れ合った。


“ピリッ”


本当に、音が聞こえたんじゃないかと思うほどだった。

ただ指先がかすっただけなのに、背筋を何かが這い上がるような感覚が走る。


「……っ!」


反射的に手を引っ込めた。

その反動で、カバンの中のノートがひとつ、地面に落ちた。


「お、おい、大丈夫か?」


悠真がしゃがんで拾ってくれる。

俺は、とっさに背を向けて、うつむいたまま顔を隠した。


(な、に……今の……)


ただの“接触”だ。

手と手が、少し重なっただけ。

それだけなのに、心臓がバクバクして止まらない。


それはドキドキじゃなくて、“ざわざわ”だった。

身体の内側が、勝手に反応して、妙に熱くなって、指先まで火照ってる。


「なんか……顔、赤くね?」


「ち、ちがっ……そ、日焼け。たぶん、紫外線」


噛み合わない言い訳を口にしながら、俺は歩幅を速めた。


(……ありえない。これって、なんなんだよ……)


男同士だった。ずっと、そうだった。

悠真の手なんて、今まで何度も触れてきた。肩も、背中も、取っ組み合いのケンカだってした。


けど、今のは――まるで別の人間の手だった。


そこに“女としての自分”が確かにいて。

触れられただけで、全身が意識してしまった。


(……やだ。こんなの)


やだ、って思ったのに。

でも心のどこかで、まだあの“熱”を引きずっている自分がいた。


胸の奥の高鳴りが、耳の奥でずっと響いている。


──20日目。触れるだけで、身体が語り始めた。

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