表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/42

【プロローグ】忘れられた祠と、過去の約束

春が終わりかけた、ゴールデンウィーク明け。

どこか蒸し暑さすら感じる放課後、俺――相川陽翔あいかわ はるとは、駅前のコンビニで買ったペットボトルを片手に、小さくため息をついた。


「……やっぱ、神頼みくらいしとくか」


この春、高2になったばかりの俺には、ひとつ大きな目標があった。

それは、志望校に受かること。いや、それ以前に、親に「本気でやってる」って証明すること。


でも本音を言えば、最近なんとなく自分の居場所がわからない。

友達はいるけど“浅い”。家は居心地いいけど、妙に静かすぎる。

そんな「空白」に、俺は気づかないふりをしていた。


神社までは、実家から歩いて20分。

昔、親に連れられて何度か来たことのある小さな神社だった。


鳥居をくぐり、絵馬が並ぶ回廊を抜けた奥――

その先に、なぜか昔から気になっていた“祠”がある。


苔むした石段の先。誰も手入れしていないのか、鳥居の木は朽ち、屋根も傾いていた。

けれど、そこに足を向けると、なぜか胸の奥がざわついた。


(……懐かしい? なんで?)


ふと足元に転がる、色褪せた結び札。

拾い上げた瞬間、風が強く吹き抜けた。


「――お前は、約束を破った」


風に混じって、女の声が、囁いた。

それはまるで、耳の奥に直接流れ込むような、不思議な声だった。


「百日。百日以内に“愛されて、満たされた”ときのみ、呪いは解ける」

「さもなければ、お前は完全に“女”になる」


一瞬、時間が止まった気がした。

頭が真っ白になって、呼吸の仕方を忘れかける。


なにそれ。なにが、“呪い”?

そんな中二病みたいな……と笑い飛ばしたかったのに――


次の瞬間、胸の奥が、ズキンと痛んだ。


(まさか……これって……)


そのときの俺は、まだ知らなかった。

あの風が、あの声が、あの日あの場所で交わした“誰かとの約束”を、俺の無意識が裏切った瞬間だったということを。


時計の針は、動き出していた。


──残り、100日。

この作品が面白い、続きが読みたいと思ったらブクマ・評価・リアクション・感想などよろしくお願いします。


続きを書くための励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ