第87話 学院前の仕上げが必要!
ひい爺ちゃんに僕の世話を強く言われていた爺ちゃん、
七英傑の大魔導師ギリオスその一人息子ことリアッド様が、
魔神ユピアーナ様との約束『なんでも一回だけ力になってくれる』を使わそうとしてきた。
「アンヌさん、お断りって必要ないってことですか」
「まず屋敷はこちらで何とでも出来ます、例の方法も使えますし」
「例の……ああ、あれですね」「なんじゃい亜空間に住めるようにでもしたのか」
さすが爺ちゃん勘が良い、でもちょっと違う。
「……お爺様になら言っても大丈夫そうですね、転移魔方陣というのを作りまして」
「なんと?!」「上手く行けば、王都からユピアーナ様が封印されていた闇の村、その屋敷まで」
「すでに完成しております、御主人様の命令があらば、ここにでも」「それは是非ともじゃな」
かといってここと繋げるメリットって……
墓参りくらい? あと一応は爺ちゃんは、
我が派閥ことダクリュセック一門の事実上のトップだ。
(派閥間のややこしい事になったら口添えは欲しい)
うん、僕ってつくずく他力本願だな。
「えっとそれでもうひとつは」
「はい、執事についてはもちろん必要ですが、
何も『権利』を施行しないと寄こしてくれない、という事は無いかと」
もちろん義務的には爺ちゃんには、
学院へ行く僕に出してくれる必要がある。
「……質は保障せんぞ」
「はい、秘密が守れる口の堅い方が条件ですが」
「わかった、望みとは別で一人出そう、『執事』はな」
うん、これで爺ちゃんの特別な力を借りずに解決できた、
さすがアンヌさんだ、僕ひとりで交渉してたらどうせきっと、
上手い具合に言い包められて権利を施行していた事だったろうに。
「という事で『権利』はいざという時のために取っておきます、ごめんなさい」
「……まあ良いわ、では早速その転移魔方陣とやらを、と言いたいのじゃが、
ひとつ忠告というか、さすがに見過ごせんことがひとつばかしある」「はぁ」
なんだろう、
奪われた婚約者メイドであるワンディちゃんの事かな?!
「率直に言う、アンヌとやら、アンナとやらの魔力が、極端に言えばダダ漏れじゃ」
「えっ、そんなにですか?!」「ああ、わかる者にはわかる、もちろんそうは多くは無いがの」
「じゃあ学院へ行ったら」「魔神に結びつく者もおるじゃろう、だからその魔力は隠した方が良い」
そういや前も言われたな……
自力で何とかできないんだろうか?
「アンヌさん、隠せますか?」
「……難しいですね、八分身くらいすれば、あるいは」
「嫌ですよそこまでバラバラになるのは」「まあ、魔道具じゃな」
そう言って爺ちゃんが見た視線の先は……ナンスィーちゃんだ。
(なぜかタマラさんにお姫様抱っこされてる!!)
「ええっとナンスィーちゃん」
「……ZZZzzz……」
「こうするとどうかな……えいっ」
胸元に挟んであった眼鏡を装着させてみる!
「……ハッ! もう到着ですかっ?!」
「爺ちゃんの、いやお爺様の侯爵邸にね」
「も、申し訳ありませんっ!」「良い良い」
しゅたっ、と着地した。
「ナンスィーちゃん、アンヌさんアンナさんの魔力が強すぎてダダ漏れって件だけど」
「はいそうですねっ、他の皆さんも闇の魔力を隠さないと、私はまあ立場がアレなので平気ですがっ」
「じゃからワシんとこの弟子と、魔力を抑えたり隠したりする魔道具を作れ、学院へ行く前の仕上げじゃ」
そう言った爺ちゃんに頭を下げるナンスィーちゃん。
「ご無沙汰しておりますっ、それでいつまででしょうか」
「出発までじゃな」「あ、朝まで?! というか今は夜?!?!」
「ウチの魔道具師の事じゃ、まだ起きて作業しとるじゃろう」
熟女メイドに扉の鍵を開けてもらう。
「では、行って参りますですぅ!!」
……さっさと行っちゃった、
さすがにナンスィーちゃん単独だと無理な作業らしい、
でも朝までにねぇ……あっ、そういえば!
「お爺様、ナンスィーちゃん無しでは転移魔方陣が」
「明日朝で良い、もう眠いから寝るぞ」
「あっはい、色々とありがとうございます」「父上に頼まれたからの」
そんな念押しに言わなくても、
これは僕の中に僅かに残るひい爺ちゃんに言っているのかも?
よっぽど怖いんだな、いつもはもっと冷たい感じでおっかないのに。
「それじゃあ、ええっと」
「風呂じゃ、一緒に入るぞ」
「は、はい、も、もったいなき、感謝します」
爺ちゃんのお風呂、
ひい爺ちゃんもだったけど、やたら熱いんだよなぁ……
「メイドはメイドの風呂じゃ、わかっておろうがの」
そう言って爺ちゃんに連れて行かれたお風呂は、
熟女メイドの皆さんがが沢山スタンバイをしていた!
(あっ、これは)
「遠慮せず脱がせて貰うが良い」
「は、はいいぃぃいいぃぃぃ……」
うん、爺ちゃんには逆らえないから、仕方ないねっ!!
……とまあこうして身体まで洗ってもらいつつ、爺ちゃんと会話。
「学院では何を学んでくるつもりじゃ」
「ええっと、領主としての仕事と、あとお嫁さん探しを」
「魔法は」「あっ、使えるようになりました、光魔法と闇魔法」
ウンウン頷いてくれている。
「一目見て『変わったな』と感じてはおったぞ」
「そ、そうなんですか」
「しかも相当なもんじゃ、じゃからワシも態度を変えた」
そうなんだ、
前までの僕は魔法がまるっきりだったから、
それで冷たかったのもあるのかも、肉親とはいえ。
(でもそれを言ったらひい爺ちゃんだって魔力はもう……いや、そのあたりは師弟って部分もあるのか)
ちょっとライト魔法をやってみせる。
「ライト!」
「……今のダルマシオなら無詠唱でもできるじゃろ」
「そうなんですか?! では改めて……」
あっ本当だ、
念じただけで出来た、凄い!
「覚醒したのは良いが強すぎる、下手に使わん方が良い」
「魔法をですか」
「そういうのはメイドに全て任せろ、任せられるものは全て任せてしまえ」
爺ちゃんがここまで言うんだから、
僕の魔力、正確にはひい爺ちゃんの魂の外郭だけで、
相当なものなんだろうな、僕なんかが受けちゃって本当に良かったんだか。
(ま、選んだのは、授けてくれたのはユピアーナ様だしぃ)
「わかりました、あんまり任せ過ぎるとメイドが本体になりそうですが」
「今夜のベッドも任せるが良い、若い床上手を揃えてやるわい」
「えええ」「嫌なら『権利』を使っても良いが?」「いやいやそんなことで」
この夜、僕はベッドで、
熟女のテクニックを思い知らされた。
(いや、あくまで添い寝ですよ、添い寝っ!!)