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メイドが本体!  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 闇のメイドを引き連れて王都の学院へ行こう!
83/122

第83話 これがメイドバトル前哨戦だ!

 ダクリュセック辺境伯邸の中庭、

 そこそこのギャラリーが取り囲む屋敷の内外あちこちから見守る中、

 いよいよ義兄、ダクリュセック家次男ことジルジュのメイドとの対戦だ。


「えー、審判を務めるアレルだ、公平に行くのは領主様にご了承を得ている」


 ウチの私兵、衛兵副隊長さんで王城からのお下がり兵士だ、

 バリバリに厳しくプライドある人だからちゃんとジャッジはしてくれる、はず。


「では戦闘方法を決める、コインを投げ表が出てば旧式、裏が出れば本式だ」


 新銀貨を投げて手で受けるアレルさん、

 それを見て高らかにせんげんする、さあ、どっちだ。


「旧式と出た、使える武器はメイド道具のみとする!」


 うん、大丈夫だ、ちゃんとその訓練もやっていた。


「よっし貰ったぞ!」


 喜ぶのはジルジュ義兄さん、

 ワンディちゃんを奪われた時も戦う前はあんな風に喜んでいたのだろうか、

 タマラさんは中身の入っていないバケツを持って入場だ。


(うん、歩いているだけで、ゆっさゆっさだね!)


 相手のメイドは確か、

 胸の名札を見ればわかるか、

 立派な身体つきの大人の女性、ナッシラさんだ、武器は(ほうき)


「それではここにダクリュセック辺境伯家当主キリアン様の代理として宣言する、

 ナッシラが勝てばタマラは次男ジルジュ様の所有物に、タマラが勝てば四男ダルマシオ様には、

 王都の学院生活においてダクリュセック辺境伯家一族は敵対せず協力するようお触れを出す!」


 ここで三階から見ている父上が……


「うむ、認めよう!」


 これで言質は取った、

 約束を破られたらお爺様に告げ口して良くなった、

 父上もこれだけの事になった以上、約束はさすがに守るだろう。


「ではお互い、構えて!」


 勝敗は主審が確実に『勝った』と感じた場合に決まる、

 ただ角度的に見えなかったりあまりに主観が酷いとまずいので、

 四方から副審が見てて意義を唱える事ができる、が最終判断は主審だ。


(副審四人も衛兵さんだよ!)


 さあ、王都のコロシアムで日常的に行われるらしいメイドバトル、

 その前哨戦を見られると言っても過言では無いだろうっていうか、

 ここで負けたら話にならない、まであるな……果たしてタマラさんの現在の実力は?!


(おお、メイド同士で何か話すみたいだ!)


「私はナッシラ、御主人ジルジュ様に汚名を返上させていただく良い機会が貰えたわ、

 戦利品としてピンクのリボンを付けた貴女を献上する、悪くは思わない事ね、ふふっ」


 もう貰った気であるような鼻笑い、

 彼女自身は青いリボンだからそういう事はしていないのか、

 おさらいすると青は主人に夜お手付き禁止、ピンクは可能って意味だ。


「タマラと申します、貴女の事はダルマシオさまは不必要だそうです、

 ですので協力体制だけ頂いて帰ります、貴女は不要です、以上です」


 煽るなぁ、悪くは無いけど。


(それにしてもバケツで戦っているのは見た事なかったな)


 (ほうき)とか塵取(ちりと)りとかは見たけど、

 色々と試した結果がバケツかぁ、どうやるんだろう?


「それでは互いに離れて!」


 アレルさんの声に距離を取るメイドふたり、

 僕は隣のアンヌさんに確認するかのように尋ねる。


「……勝てますよね?」

「余裕だ、むしろどう遊んで勝つかを考えているだろう」

「でも勝敗は主観ですからねえ」「心配はいらぬ……いりませんよ御主人様」


 あっ、近くにこの屋敷のメイドが来たから慌てて口調を変えた、

 このあたり、もうこの屋敷に入った瞬間から口調を変えさせないとな、

 いかに魔神様でもそういった部分はまだ、メイドに成りきっていないらしい。


「それでは結果に異論を挟めるのは副審のみとする、始めっ!!」


 箒で殴りかかってくるナッシラ!


「でえええええええええ!!!」


 威勢の良い声と共に、

 箒の払う部分で殴りかかってくる、

 と思いきや柄の部分で突いてくるフェイント!


「ふんっ!!」


 ガコンッとそれをバケツで防ぐタマラさん!

 すると防いだバケツを(ほうき)で引っ掛けて思いっきり上空へ飛ばす!

 そしてその振りかぶった勢いでタマラさんの頭へ柄の部分を当てに……!!


「貰ったわ!」

「いいえ、残念ねっ!!」


 スッと躱したタマラさんが(ほうき)を両手で握り、

 ナッシラを思いっきり横へ引きずると、その上空から……!!


 ガコンッ!!


「ひっ?!」


 バケツが落ちてきてナッシラの頭を、顔をかぶせる!


「はい、お疲れ様でした」


 そう言いながらそしてバケツを手の平で、

 掌底で殴って弾き飛ばす、背中から地面に倒れるナッシラ!


「そこまで、勝者タマラ!」

 

 攻防はあったものの瞬殺と言えるような決着に、

 衛兵は盛り上がり、辺境伯邸のメイド達は唖然としているようだ。 

 僕は隣のアンヌさんに改めて聞く。


「あんな勝ち方があるんですね」

「対人練習は念入りにしました、さすがにバケツがすっぽり収まるのは偶然でしょうが」

「頭に当たればって感じだったんですね」


 負けたナッシラを引き起こそうとするタマラさんだったが……


「またかこの役立たずめっ!!」


 ジルジュ義兄さんがわざわざ来てナッシラさんを蹴ってる、

 可哀想に……止めようとするタマラさんに義兄さんが正面に立つ。


「どうだウチに来ないか、給金は倍、いや三倍出す!」

「……お断りします、私はダルマシオさまのメイドですので」

「父上! 父上ーー!!」「……あきらめろ」


 こうして前哨戦は我がメイドが圧勝したのであった。


(あっ、一番上の義兄上がいつのまにかテラスから見てた!)


 そして引っ込んだ、まあいいや。

 さて、仕度してお爺ちゃんの所へ行かないとね!

 と、その前に……やってきたタマラさん。


「ダルマシオさま」

「うん、ありがとう、強かったよ!」

「まだまだ戦闘メイドとしても、精進させていただきます」


 とはいえ、あんまり戦わせたく無いんだけどなあ……。

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