第57話 メイド(ほぼ)全員とお風呂!
「ふう、この姿で風呂は復活した時ぶりだな」
全裸でその巨体を見せつけるユピアーナ様、
そう、今回はみんなのお風呂も兼ねているため、
メイドは全員、素っ裸だ、いやカタリヌさんは眼鏡を付けているけど。
(そして僕の全身を洗ってくれるのはドリーちゃんタマラさんだ)
タマラさんの方は目に毒なため、
ドリーちゃんの方に目をやるが……
うん、こっちもこっちで目に毒だ、犯罪臭がする。
(22歳は合法です!!)
ブランカちゃん(16)が休みで良かった。
「んもう、そんなにお姉さんが気になる?」
「いやその、女性の裸自体、慣れなくって」
「学院へ行くまでに、きちんとした紳士にしてあげるわ」
えっ、ドリーちゃんが?!
と思わなくもないがとりあえず湯船に目を移す、
仰向けで浮いているナンスィーちゃんはあれいいのか。
(広すぎるお風呂の弊害だな)
ユピアーナ様の身体を洗いはじめたカタリヌさんサエラスさん、
あっそうか、今は魔神としての立場だからいいのか、いいのか?
まあ僕が洗わせさせられないからいいか、逆にあの姿で僕が洗われたら、どこかがもげそう。
(でも、ユピアーナとして世話するとか言っていたような)
「とにかく、みんな無事に帰ってきて良かったです」
「明日も行くぞ、本来は私は休みだが、いままで八十年も休んでいたんだ、いいだろう」
「えっ、そうなんですか? あっ、順番ってそういう」
一巡したからね、
今朝起こしに来たアンヌさんアンナさんが僕の今夜の添い寝、
そして起きてベッドを、寝室を掃除して休みっていう流れだ。
(このローテーションが王都出発まで続くのかな)
「それに私は普通の身体ではないからな、この程度、休みはいらない」
「僕としてはメイドはきっちり休んで貰った方が」
「正直、前に休みを貰って持て余した、手紙を読む時間に使わせてもらったがな」
手紙……?
あっそうか、僕がひい爺ちゃんから分厚い手紙を貰ったように、
ユピアーナ様だってかつての仲間から遺言みたいなのが来ててもおかしくは無い。
「まあ、休みの使い方は自由ですけど、その、
僕がメイドのアンヌやアンナを不眠不休で働かせている、みたいな噂は」
「わかった、そのあたりは留意しておこう」「さあダルちゃん、お湯をかけるわよ」「はいドリーちゃん」
ざばぁーーーっと掛けられて気持ちが良い。
「ダルマシオさま、私からも」
「あっはいタマラさん、どうぞ」
なんだろう、
目を瞑っているのに、
たわわな物体の気配がする!
(これだから裸でのお世話は……)
「さ、顔を拭くわよ」
「はいはい……よし、じゃあお風呂へ!」
逃げるように入浴、
ちょっと熱いからぬるい端の方へと……
みんなが身体を洗っているのを避けて目線を天井の方へ。
「その、みんな冒険者として働いてくれるのは嬉しいんですが、
儲けたお金はできるだけ自分のために使って下さい、お小遣いみたいな」
「そうね、でも冒険者パーティーのリーダーとして言えば、オーナーは上前をはねないと不味いわ」
サエラスさんの言っている事は、まあわかる。
「じゃあ、僕に出来ることは」
「私達のオーナーだってことを、威張ってもらう事かしら?」
「いやいや、そんな」「そうする事で、良いお嫁さんが見つかるかもしれないわ」
それだと冒険者目的、
メイド目的になっちゃうな、
下手すると『あの貴族、メイドが本体だ』とか言われかねない。
「まあ、良いメイドが貴族の条件みたいなところがあるって聞いた覚えは」
ここで洗い終わったであろう巨女の影が迫ってきた!
ざっばああああああああん!!
(うっわ、ユピアーナ様が浸かると一気にお湯が!)
「私がこうして目覚める前の情報だと、
戦闘メイドというのは貴族に取ってトロフィーのようなものだと聞いたぞ?」
「そ、そうなんですか」「今はそのトロフィーの奪い合いをしているのだろう」
まあ確かに、
でも僕は自分のメイドを飾り物だなんて思いたくは無い。
(あっ、他のメイドも続々入ってきた、そして僕に近づいてくる!)
「ダルマシオ様、私達は、私カタリヌも含め、いつでもダルマシオ様のトロフィーに、
駒になる覚悟を持っていますし、一時的に離れても、必ず戻していただけると信じておりますわ」
「でも、あまりメイドバトルに関わらせたくないのが本音かなあ」「でしたら従いますが」
その言葉にユピアーナ様が男前に近づいて来て、
僕の首に腕を回してきた、ほんっと太くてでかいなぁ。
「なあに安心しろ、欲しいメイドがあれば喧嘩ふっかけて奪ってやる」
「そんな、欲しいメイドだなんて」
「私は戦う気満々だ、むしろ戦いたい、戦わせてくれ、アンヌとアンナの姿がハンディだ」
あれでハンディって!
「その事なのですがダルマシオ様」
「はいカタリヌさん」
「ザード様がひとつ、危惧してらしたことが……」
なんだろなんだろ、
目の前を浮かびながら通過するナンスィーちゃんは放っておいて。
「どんな危惧でしょうか」
「はい、やはりユピアーナ様は、アンヌやアンナでも魔力が強すぎると」
「そんなにですか」「このままでは魔神とばれる相手が多いそうです、そこで」
カタリヌさんが浮いているナンスィーちゃんに眼鏡をかける、
いやそれどこから出したの! バシャッと立ち上がるナンスィーちゃん。
「私が、魔力を抑える魔道具を、開発中ですう!」
「そ、そうなんだ」
「最初は半分以下の魔力で戦い、ピンチになれば解放する、かっこいいですよねっ?!」
何かの小説みたいだな。
「やっぱりそうした方が、良い感じですか」
「王都で、正体をバラさないためには必要かとっ!」
「じゃ、じゃあそれで、お願いします」
ミスって解放前に倒されるとか無いと良いけれども。
「ではダルマシオ、いや御主人様、せっかくの風呂だ、好きにして良いぞ」
「えっユピアーナ様、す、すすす好きにって!」
「文字通りだ、さあどうする、お世話もするぞ、好きな事を好きなように!」
(そ、そんなこと言われましてもおおおおお!!!)
結局、普通に浸かって普通に出ました。