始祖竜の力2
柏羅のサポートから手合わせの相手まで、ほとんどを黒耀がやっていた。だからこそ二人の間にできた絆がある。
合図も視線を合わせるだけで十分。いつのまにこれだけ成長したのか。
みんなが見守るなか、二人が同時に攻撃を仕掛けた。
「黒竜聖牙破!」
「王竜煉獄!」
黒い気をまとう黒耀と、赤い荒々しい気をまとう柏羅が同じタイミングで攻撃をする。
白麟の左手がなにかを描くように動き、次の瞬間、光の槍が大量に降り注いだ。
「キャッ」
触れる直前に光の槍が邪魔をし、二人を阻む。光の槍はそれだけではなく、背後にいた仲間達へも襲いかかっていく。
広範囲の攻撃を平然とやる力は、さすがと言うべきなのかもしれない。
「結界で防げない。この力、なんなんだ?」
虚空が答えを求めるよう黒耀を見る。
「……天使…いや、だが」
あり得るのか、と彼は小さく呟いた。
剣技はなんとか受け止めていたが、魔法が防げない。見かねたように星霜が戦闘に加わる。
四人がかりで攻め立てるが、白麟は想像を裏切るほどの強さを見せた。
魔法はそこまで使わないが、とにかく剣技が強い。魔技が強いわけでもなく、力押しで弾いていくのだ。
「星霜!」
体制を崩したところ、光の渦が襲いかかる。陽霜が慌てたように結界を張るがすり抜けてしまう。
「星霜様!」
直撃を覚悟した星霜の視界に、ここにはいないはずの銀色の髪が。
「莱緋!?」
里へ置いてきたはずの少女がなぜかいる。それも気になったが、もっと驚くことが起きた。
光り輝く魔法陣が描かれ、光の渦がすべて受け止められてしまったのだ。
そのまま金色に輝きだす魔法陣は、凄まじい力を放出する。一撃で白麟を吹き飛ばしたほどの。
「今だ!」
ふらっと後ろへ倒れた少女を受け止め、星霜が怒鳴る。
莱緋のお陰で白麟は体制を崩した。狙うのはこのタイミングしかない。立て直されたら、また隙を作るところから始めなければいけないのだ。
「魔竜破傲陣!」
言われるまでもないと言うように、虚空が動く。魔刻山では倒すために使ったが、今回は束縛のために放つ。
「黒鳳槍!」
束縛と同時に黒耀が動き、力強く槍を突き立てた。直接魔力を送り込み、黒耀は造られた身体を壊す。
残されたのは神竜の腕輪であった剣が一本。ここからは柏羅がやるのだと注目を浴びれば、少女の瞳は強く輝きだす。
これで最後の神具ということは、始祖竜の力を完全に取り戻したことになる。
(柏羅が、柏羅じゃなくなるのかな)
始祖竜としての人格は別人であった。それを考えると、柊稀は少しばかり不安だった。
柏羅の中へすべての力が戻っていく。力と共に始祖竜としての記憶が戻る。
遥か彼方の遠い、遠い昔の記憶。まだ仲間がたくさんいた頃の記憶。
すべてを取り戻した少女へ、始祖竜の本能が問いかける。どうしたいのかと。
「お兄ちゃんといたい……」
柊稀や仲間達といたい。それが柏羅の答え。ここで生きていきたいと。
そのためにどうすればいいのか。答えはすべてが自分の中へある。
「まだ、できない……」
この戦いが終わるまで柏羅はそれをしたくない。この先、もっと過酷になるからだ。
やっと自分というものを取り戻した。だからわかることがある。彼女は、仲間のために動くのだと決めた。
どこかで始祖竜の本能が笑う。それでいいと言っているのか、それとも呆れているのか。柏羅には判断できないが、受け入れられたようだ。
光が身体の中に入り込み、別々であった柏羅と始祖竜の本能は混ざり合った。
強い光が身体を包み、少女はさらなる成長を遂げた。身長は決して高くないが、容姿はどこからどう見ても女性のものだ。
金色の瞳からは強い輝きを感じられたが、始祖竜ではない。柊稀には、目の前にいるのは柏羅だとハッキリと言い切れた。
「あら、可愛らしいじゃない」
「うんうん。可愛いね」
美人というよりは可愛らしい女性になり、瑚蝶と蒼翔が笑みを浮かべながら見る。
当の柏羅は恥ずかしくなったのか、近くにいた黒耀の後ろへ隠れてしまった。
「気になることがある」
そんな柏羅を気にせず、黒耀が切り出す。
「行こうぜ。たぶん、答えは中にいる」
言いたいことはわかっているというように星霜は歩き出す。同じことを彼も思っていたからだ。
「潮時、かな……」
「はい」
陽霜の呟きに、黒耀は真剣な表情で頷いた。
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