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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
三部 神具編
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始祖竜の力

 光の神具、双陽刀(そうようとう)。闇の神具、闇狼槍(あんろうそう)。魔の神具、星紡剣(せいぼうけん)。火の神具、牙焔剣(がえんけん)。水の神具、聖流(せいりゅう)の杖。風の神具、蒼楓(そうふう)の弓。


 地の神具は力を取り戻したのみの現状。そして今から、最後の神具を取り戻しに行く。


「ねぇ、最後の神具ってなに?」


 種族ごとの神具はわかった。けれどそれ以外にある神具とはなんなのか。柊稀にはまったくわからなかった。


 柊稀だけではない。虚空や蒼翔、瑚蝶も知らないようで不思議そうにしている。


「神竜の腕輪。天竜王が引き継いでいる物だ。使いこなした者はあまりいないが」


 本来なら天竜王と魔法槍士しか知らないことだと言えば、虚空達も納得。


「使いこなした王は、最近いたのかな?」


 過去から来た飛狛には、それ以降は知らない。他にいたなら、次に待ち受けるのはその人物ということになる。


 そうでなければ、待ち受けているのは彼らが仕えている王となるのだ。


 問いかけられれば、いないと陽霜が言う。自分達が知る限り、最後に使いこなしたのは聖なる王だと。


「なら、いるのは、はく兄か」


「そうなりますね」


 聖なる王が敵だと言われれば、いろんな意味で複雑な気持ちとなる。造られているとわかっていても、気持ちがついていけない。


「腕輪は誰が取り戻すのかしら」


 使い手になっていないのは、柏羅と氷穂の二人しかいないのだ。


「柏羅じゃないかな? これは、きっと柏羅のためのなんだよね?」


「だろうな。俺も柊稀と同意見だ」


 自分の意見を発言するのは初めてだ。柊稀の成長なのだと思うと、過去から来た三人は笑みを浮かべる。


 もう彼は、なにも知らなく無力だった頃とは違う。


「私、やります」


 そして、この少女も護られるだけの少女ではない。自分の意思で武器を手にし、戦う道を選んだ少女だ。


 いくら戦えるようになったとはいえ、柏羅一人で戦えるわけでもなく、少女が倒さなくてはいけないわけでもない。


 前衛に虚空と黒耀が入ることになり、確実に襲いかかってくるだろう朱華に備え、柊稀はなるべく温存。


 援護に入れるようなら蒼翔と瑚蝶が入る。妨げになるようなら、動けるように待機しておく。


 光の神具を取り戻すため使い手と戦った陽霜と星霜は、次に向けなるべくなら背後で待機。


 まだ終わりではない。この先があるのだと、一同の認識を改めさせるには十分だった。


「行こう」


 黒耀が先頭で歩き出せば、一番後ろは過去からきた三人がいる。見守るだけだが、これぐらいはいいだろうという判断。


 彼らは常にこの位置で歩いていた。関わらないと意思表示すると同時に、背後の警戒ぐらいならやるよ、という意味で。


(はく兄さんかぁ。魔法は一切効かないし、瑚蝶は待機だなぁ)


 詳しい情報を与えてないため、まだ本人は知らないこと。それを思いながら、飛狛は背後の視線を感じていた。


 竜王山内部。入ってすぐ、荒れ狂うような力が溢れているのを感じる。それは今までとは桁違いな力。


 最後の神具が、過去の使い手と共に現れた。


「白麟さん……」


 強いのだろうか。強いのだろう、と柊稀は思う。手合わせをしたことはないが、立ち振舞いが強さを感じさせた。


「来るぞ!」


 警戒するように黒耀が言うのと、虚空が刃を交えるのは同時。


「くっ…重い…」


 想像以上の重さに剣を両手で掴む。


 聖なる王、賢王と呼ばれていることから、武術はそこまでではないと思っていたのだ。


「ぐっ…」


 力押しで足元がふらつく。強引に体制を崩された瞬間、柏羅が上から槍を突き刺しに行く。


 身軽な少女は柊稀に足場を作ってもらい、跳び上がったのだ。


 無機質な青い瞳が槍を捉え、虚空を弾きそのまま柏羅の槍を掴む。引っ張り身体を叩きつければ、瑚蝶の放った水の渦が襲いかかる。


 なにが起きたのか。瑚蝶は呆然と白麟を見る。


 直撃だと確信した攻撃は、身体をすり抜けるように白麟の背後へ飛んでいった。


「魔法は効かない! 過去でもそうだったんだ!」


 華朱に襲われたときのことを思いだし、柊稀が叫ぶ。どのような仕掛けかはわからないが、彼にはすべての魔法が無効化されてしまう。


「それだけじゃないみたいだぜ」


 星霜が険しい表情で見ている。その先で傷が自然と治癒されていったのだ。


「自然治癒能力。無限ではないけど、はく兄さんは一定期間、怪我を勝手に治癒させることができる。効果は、たぶん魔力が尽きるまでかな」


 穏やかな笑みを浮かべながら、飛狛がどうすると聞いている。


 彼はもちろん、その能力を知っていたからこそどうするのか気になった。


「剣一本でやれってことか」


「なら、やりましょう」


 黒耀と柏羅が槍をぎゅっと握り締める。






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