始祖竜の力
光の神具、双陽刀。闇の神具、闇狼槍。魔の神具、星紡剣。火の神具、牙焔剣。水の神具、聖流の杖。風の神具、蒼楓の弓。
地の神具は力を取り戻したのみの現状。そして今から、最後の神具を取り戻しに行く。
「ねぇ、最後の神具ってなに?」
種族ごとの神具はわかった。けれどそれ以外にある神具とはなんなのか。柊稀にはまったくわからなかった。
柊稀だけではない。虚空や蒼翔、瑚蝶も知らないようで不思議そうにしている。
「神竜の腕輪。天竜王が引き継いでいる物だ。使いこなした者はあまりいないが」
本来なら天竜王と魔法槍士しか知らないことだと言えば、虚空達も納得。
「使いこなした王は、最近いたのかな?」
過去から来た飛狛には、それ以降は知らない。他にいたなら、次に待ち受けるのはその人物ということになる。
そうでなければ、待ち受けているのは彼らが仕えている王となるのだ。
問いかけられれば、いないと陽霜が言う。自分達が知る限り、最後に使いこなしたのは聖なる王だと。
「なら、いるのは、はく兄か」
「そうなりますね」
聖なる王が敵だと言われれば、いろんな意味で複雑な気持ちとなる。造られているとわかっていても、気持ちがついていけない。
「腕輪は誰が取り戻すのかしら」
使い手になっていないのは、柏羅と氷穂の二人しかいないのだ。
「柏羅じゃないかな? これは、きっと柏羅のためのなんだよね?」
「だろうな。俺も柊稀と同意見だ」
自分の意見を発言するのは初めてだ。柊稀の成長なのだと思うと、過去から来た三人は笑みを浮かべる。
もう彼は、なにも知らなく無力だった頃とは違う。
「私、やります」
そして、この少女も護られるだけの少女ではない。自分の意思で武器を手にし、戦う道を選んだ少女だ。
いくら戦えるようになったとはいえ、柏羅一人で戦えるわけでもなく、少女が倒さなくてはいけないわけでもない。
前衛に虚空と黒耀が入ることになり、確実に襲いかかってくるだろう朱華に備え、柊稀はなるべく温存。
援護に入れるようなら蒼翔と瑚蝶が入る。妨げになるようなら、動けるように待機しておく。
光の神具を取り戻すため使い手と戦った陽霜と星霜は、次に向けなるべくなら背後で待機。
まだ終わりではない。この先があるのだと、一同の認識を改めさせるには十分だった。
「行こう」
黒耀が先頭で歩き出せば、一番後ろは過去からきた三人がいる。見守るだけだが、これぐらいはいいだろうという判断。
彼らは常にこの位置で歩いていた。関わらないと意思表示すると同時に、背後の警戒ぐらいならやるよ、という意味で。
(はく兄さんかぁ。魔法は一切効かないし、瑚蝶は待機だなぁ)
詳しい情報を与えてないため、まだ本人は知らないこと。それを思いながら、飛狛は背後の視線を感じていた。
竜王山内部。入ってすぐ、荒れ狂うような力が溢れているのを感じる。それは今までとは桁違いな力。
最後の神具が、過去の使い手と共に現れた。
「白麟さん……」
強いのだろうか。強いのだろう、と柊稀は思う。手合わせをしたことはないが、立ち振舞いが強さを感じさせた。
「来るぞ!」
警戒するように黒耀が言うのと、虚空が刃を交えるのは同時。
「くっ…重い…」
想像以上の重さに剣を両手で掴む。
聖なる王、賢王と呼ばれていることから、武術はそこまでではないと思っていたのだ。
「ぐっ…」
力押しで足元がふらつく。強引に体制を崩された瞬間、柏羅が上から槍を突き刺しに行く。
身軽な少女は柊稀に足場を作ってもらい、跳び上がったのだ。
無機質な青い瞳が槍を捉え、虚空を弾きそのまま柏羅の槍を掴む。引っ張り身体を叩きつければ、瑚蝶の放った水の渦が襲いかかる。
なにが起きたのか。瑚蝶は呆然と白麟を見る。
直撃だと確信した攻撃は、身体をすり抜けるように白麟の背後へ飛んでいった。
「魔法は効かない! 過去でもそうだったんだ!」
華朱に襲われたときのことを思いだし、柊稀が叫ぶ。どのような仕掛けかはわからないが、彼にはすべての魔法が無効化されてしまう。
「それだけじゃないみたいだぜ」
星霜が険しい表情で見ている。その先で傷が自然と治癒されていったのだ。
「自然治癒能力。無限ではないけど、はく兄さんは一定期間、怪我を勝手に治癒させることができる。効果は、たぶん魔力が尽きるまでかな」
穏やかな笑みを浮かべながら、飛狛がどうすると聞いている。
彼はもちろん、その能力を知っていたからこそどうするのか気になった。
「剣一本でやれってことか」
「なら、やりましょう」
黒耀と柏羅が槍をぎゅっと握り締める。
.




