表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの竜  作者: 朱漓 翼
三部 神具編
73/174

聖なる一族2

「おぉー! 未来もシェサーラの空気は変わらねぇな!」


「そうだろ、そうだろ! ここは簡単には変わらねぇよ!」


「……」


 なんとか場を盛り上げようと、秋星とユフィが頑張るも、空気はあまりよくない。


 誰もが琅悸の一件を引きずっているのだ。


「だぁー! いつまでもくよくよすんなよ! あれをなんとかするんだろ!」


「そうだそうだ!」


 町の宿から見える竜王山を指差し、秋星とユフィが怒鳴る。すっかりいいコンビとなったよう。


 このコンビに、飛狛と夜秋は一歩引いて関わらないようにした。巻き込まれたくなかったのだ。


「……そうだな。今は先に進むしかない。少し町へでて情報を得てくる」


 姿を消した琅悸は気になるが、動きを止めることはできない。


「なら、私も行こう。竜王山がどうなっているか、麓街から逃げ出したのがいるかもしれない」


 黒耀と虚空が立ち上がると、町へと出掛けていった。


 今彼らがいるのは、竜王山の南に位置するペリーダという町。誰かが逃げてくるとしたら、ここか東のコルセアだと推測している。


 西南にある町も近いが、ここは天使族が多くいる関係で、竜族が避難するとは思えなかった。


「私はシェサーラに詳しくない。黒耀の考えで動くのがいいな」


「楽をしようとするな」


「ハハハッ。考えることは任せた、魔法槍士殿」


 嫌そうな表情を浮かべる黒耀。けれど、すぐに表情は険しくなる。


 過去からの客人により、彼の中にあった自信は崩れ落ちた。自分よりも格段に能力の高い魔法槍士に、魔法槍士補佐官。自分の方が知識を持っているはずなのに、彼ら三人には知識面でも劣っているように感じる。


 不甲斐なさを感じ、悔しくてたまらない。もっと力があれば、このような事態にはならなかったかもしれないのだ。


「俺は……魔法槍士としては失格だな」


「ならば、私は長として失格だな」


「琅悸か……」


 ユフィから散々聞かされていた。彼の情報は山のようにあったはずなのだ。


 二人の足がピタリと止まる。考えないようにしていても、どうしても頭の片隅に過ってしまう。


「怪我人が南の森に?」


「シャロンから来たのか?」


「かもしれないな。なんか、見覚えがあったような気がするんだ」


 時間が止まったような二人に、町民の会話が聞こえてきた。


「ありゃ、天竜王だよ!」


「天使族の集落へ行ったのかもな」


 ハッとしたように二人の視線が絡む。


「天使族の集落……行ってみよう」


 天竜王がいるというなら、魔法槍士として保護する必要がある。また、街から逃げた民なら、中の様子がわかるはず。


 どちらにしろ、その怪我人へ会いに行く必要がある。二人は頷き合い、意見が同じのを確認するなり宿へ戻っていく。


 一行が町を出たのは、それから一時間とかからなかった。


「ここまで、来ちゃったんだね。柊稀……」


 その姿を悲しげな表情をうかべながら、朱華が見ていたなど気付かずに。




 ペリーダから南へ数日。シェサーラには珍しい森へ入れば、さらに数日ほど馬獣を走らせる。


 森へ入ったという怪我人。急いで捜すべきと、とにかく彼らは急ぐ。


「誰かいる!」


 慌てて馬獣を止める虚空。前方に一人の少女を見つけたのだ。噂の怪我人ではないが、知っているかもしれない。


 聞こうと思い馬獣から降りて近寄った瞬間、少女は弓を構えた。


「あ、あの…近づいたら…攻撃しますよ……」


「えっ、敵じゃないんだが」


 両手をあげて無抵抗を示すが、少女は構えを解く気配がない。


「あの人を…狙っているんですよね…させません……」


「だから、違うんだが…」


 どうすれば信じてくれるのか。彼女の言葉からして、間違いなくこの少女は怪我人を知っている。


「覚悟してください…」


 夜が放たれる。そう思った瞬間、後方から慌てたように蒼翔が走ってきた。


「待って待って! 莱緋! 僕だよ!」


「……蒼翔ちゃん?」


「うん!」


 ハッとしたように周りを見て、恥ずかしそうに少女は木の影へ逃げた。


「すみませんすみません! 蒼翔ちゃんの仲間だなんて思わなかったんです!」


 木から顔だけだし、少女が必死に謝る。誰も責めてはいないのだから、逆に気にするなと宥める。


 それでも謝る少女に、ひたすら気にするなと言い続ける現状。


「莱緋、もういいから! ねっ!」


「う、うん」


 誰も気にしていないと何度目かの説得をすれば、ようやく落ち着いたようだ。


「莱緋は、天使族の長の妹だよ。こう見えても弓の腕はすごいんだから!」


「そ、蒼翔ちゃんより、強くないよ。たまに外すし……」


 次は蒼翔の後ろに隠れる少女。どうやら、人見知りしているようだ。この距離感は当分埋まらないだろう。


 それはそれで可愛いな、とこの少女は見ていて思えた。


「それでね、莱緋。聞きたいことがあるんだ。怪我人こなかった?」


「えっと…」


 言ってもいいのか、少女は戸惑ったように一同を見回す。


「お願い、教えて。魔法槍士殿もいるから」


 何度目かわからない蒼翔の頼みで、ようやく少女は話してくれた。






.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ