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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
三部 神具編
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触れられない心2

 二人のあとを追えば、宿屋の庭へと向かっていく。なぜと四人は思ったが、理由はすぐにわかる。


 黒耀と赤混じりの黒髪をした青年が、手合わせをしていたのだ。


「おーい、仲間が来たぜ。いつまでやってんだよ」


「うるさい! あとだあと!」


 盛大にため息をつく秋星。振り返り、どうするかなぁとぼやく。


「止めるの、お前の仕事だろ」


 呆れたようにユフィが言えば、心底嫌そうな表情を浮かべる。


 確かに止めるのは秋星がやっていたが、飛狛を止めろというのは、ある意味で命がけなのだ。


「やれやれ、しょうがねぇ。やるか……」


 このままだといつまでやっていのかわからない。腕輪を手にすると、二本の剣を取り出す秋星。二人が斬り結ぶ寸前に割って入り、どちらの攻撃も受け止めてみせた。


「ほら、終わりだ終わり」


 何事もないように言うが、飛狛の槍を受け止める腕が微かに震える。片手で押さえるには、かなり厳しいのだ。


「あー、わかったわかった。終わりにしようか」


 槍を引き戻し、一振りする青年。もちろんユフィは知っている人物であり、なんともいえない複雑な表情を浮かべる。


「ユフィいるぜ」


「あっ、ほんとだ。へぇ、じゃあ霜瀬さんの血族はその人だね」


 手合わせをしていたときとは真逆な雰囲気をした青年。


 笑うと少し女性的な一面を見せる。手合わせを見ていなければ、弱そうに見えたことだろう。


「あぁ。水鈴さんの血族、麒狛さんの血族。特にほら、フェンデの巫女は氷那ちゃんにそっくりだぜ! いやぁ、未来は楽しいなぁ!」


「嫌がってたのは、どこへいったんだよ」


 散々帰ろうと言っていたのだが、開き直ったら楽しむことにしたようだ。切り替えの早さはさすがだと思う。


 彼のこういった面は、時折見習いたいと思うほどだ。


「琅悸、タイミングが悪かったな。今日の船は出てしまったから二日後だぞ」


「そう、か」


 船よりもこの二人がなんなのか。琅悸はそちらの方が気になった。





 場所を移し、火炎山での出来事を四人に説明する。このまま過去からの来客が同行することも。


「俺達はなんもしねぇけどな」


「あんまり、未来に干渉するべきではないだろうからね」


 過去の魔法槍士と補佐官と言われれば、琅悸達もさすがに言葉を失う。


「まったく、白秋もとんでもねぇことすんな。仕掛けは?」


 ムスッとしながら腕を組むユフィ。こいつは本当に精霊か、と刺さる視線すら気にしないほど、不機嫌そうにする。


「火炎山で神具を使う。これ以外、見当がつかない。まだ他に手があるとは思うけど……あるとしたら、父さんの目に関するんじゃない。俺とは違うし」


 いくらなんでも、父親一人で出来ることだとは思っていない。誰か協力者がいるはずだ。それが母親の可能性は低いだろうから、誰か他の心当たりはある。


「帰って聞くさ。ユフィはわかんねぇけどな」


「ムキィー! こっちにいる間に解明しろー!」


 そんな無茶な、と誰もが思った。今現在、魔法槍士である飛狛がわからないというなら、やった本人にでも聞かなくてはわからないだろう。


 第一、長生きの精霊ならわかるんじゃないかとも言いたかったりする。冷静になればわかるだろうに、と。


 おそらく、そんな考えは塵ほどもないのだろう。


 ユフィと秋星が他愛ない言い合いを始めると、苦笑いしつつ飛狛は放置する。これは、過去の世界ではいつものことなのだろう。


「ところで、柊稀はどこですか?」


 柊稀と瑚蝶、それからもう一人の来客である夜秋。三人の姿が見当たらない。どうしたのかと氷穂が問いかける。


「あぁ、すぐに呼ぶ。バーバラに置いてきたからね」


 神具を手に入れた際の疲労が酷く、バーバラで休息をとらせたままほっといた、というのが正しい。


 琅悸達が来たらすぐに呼べばいいという、軽い気持ちだったのだ。


「夜秋がいるし、迎えに行ってくるよ」


 あっさりと言う青年に、どうやってと言いたげに蒼翔が見る。


「相変わらず、便利な力だなぁ」


 描かれていく魔法陣を見て、ユフィが呟く。


「朱秋のほうがいい力だろ。あいつ、一度見ただけで魔法も魔技も覚えるからね。さすがに、俺にはできない」


 そんな力があるのかと虚空は思ったが、精霊眼を持つのだと考えれば、それぐらいできて当たり前だったのかもしれないと考え直す。


「厄介だよなぁ。俺からすりゃ、お前の属性転換も嫌いだけどよ」


 苦笑いを浮かべながら飛狛が魔法を発動させる。その力は、一同を驚かせるには十分だった。





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