表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの竜  作者: 朱漓 翼
三部 神具編
65/174

触れられない心

 別行動をしていた琅悸達がダリウスに着いたのは、風獣月も半ばのこと。予定では柊稀達が先に着いているはずだと、宿屋を探す。


 どこかの宿屋に滞在しているはずで、柏羅がいれば目立つ。すぐさま見つかるはずだと。


「港ってこんなんなんだ。僕、オルドにも行ったことないから、初めてだ」


「そうか。ベリヤードにたまに来るぐらいだったな」


 珍しそうにキョロキョロと辺りを見る蒼翔に、虚空が笑みを浮かべる。


 オルドへ初めて踏み込んだものの、なにも見ることなくエルゼートへ来てしまった。だから、蒼翔にとってはここが初めての港だ。


 今まで見ることができないものを見る。元々、好奇心が強い蒼翔なだけに、ワクワクしているのだろう。わかるだけに、虚空は微笑ましく思っていた。


「学校があるからね」


 普通なら街から出ることはほとんどない。出る暇すらないのだ。


 こんなことがなければ、外の世界を見ることはなかったと思うと、少しだけ感謝したくもなる。


「私も、こんな遠出は初めてです。次はゆっくりと遠出したいですね」


 観光が目的ではないため、ゆっくりする時間はない。


 仕方ないとわかっているが、見知らぬ土地に来てなにも見られないのは、少しばかり悲しかった。


 それは氷穂も同じなだけに、気持ちは理解できる。


「おっ、あれ柏羅じゃねぇ?」


 しばらく歩いていると、ユフィは白髪の少女を見つけた。


「たぶんそうだろうな。ずいぶん背丈が伸びたようだが」


 白髪の少女など、そういない。たとえ最後に会ったときより背丈が違っていても、同一人物と判断できた。


「隣にいるのは誰かな? 魔法槍士殿じゃないよね」


 黒髪だが、少し赤がまざっている。髪の長さも黒耀と違い短い青年だ。どう見ても別人の青年が、親しげに話している。


 左右の瞳が色違いで、不思議な魅力だなと蒼翔は思う。


「あっ……」


「どうした、ユフィ」


 指を差したまま、口をパクパクさせる精霊に、琅悸は珍しいものを見たなと思う。


 長生きしているからか、彼は何事にも動じることはない。驚くことも、よほどのことがなければないのだ。


 そんな彼が驚いている。それほどの人物が、柏羅の隣にいるということだ。


「秋星ー! なんでお前がいるんだよ!」


 次の瞬間、精霊の叫び声が町中に響き渡った。


 自分の名を呼ぶ叫び声に青年は振り返る。そして、彼も見知った精霊に驚いた。


「ユフィか! いやぁ、そっか。そうだよなぁ。こっちにもいるよなぁ、一応精霊だし」


 ぶつぶつと一人納得をする秋星に、弾き飛ばす勢いで近寄るユフィ。そのまま胸ぐらを掴むから、慌てたのは琅悸達だ。


「お、おおお前、なんで! 幽霊か!? 造られたか!?」


 よほど動転していたのか、冷静なら本物か造られたか見抜けたはずなのに、それすらできずに問いかける。


「落ち着け落ち着け! いつもの冷静さはどうした!」


 胸ぐらを掴まれたまま激しく揺さぶられるから、秋星は慌ててなだめようとした。


 彼に掴まれたぐらいじゃ苦しくもないが、激しく揺さぶられるのは、さすがに勘弁してくれと思ったのだ。


「色々と理由はあるんだよ。とりあえず、柊稀の仲間でいいんだよな?」


 確認するように後ろを見れば、琅悸が頷いてそうだと応える。


「ユフィ、落ち着いて離れろ」


「あ、あぁ……」


 琅悸の声にようやく冷静さが戻ってきたのか、ユフィは秋星を離した。


 よくメンバーを見てみれば、秋星はなるほどと思う。よく集まったものだと。


「んじゃ、帰るか」


「はーい!」


 元気よく返事をすると、柏羅は秋星の腕にしがみついて歩いていく。


「すごいなつき方だな。柊稀以外であんなになつくなんて」


「ほんとだね。僕達となにが違うんだろ」


 少しだけ二人は妬いていた。なついてくれないわけではない。けれど、手を握ることすらしたことがなかったのだ。


「子供慣れしてるか、してないかじゃね? あいつ、昔っから子守りをよくしてたし」


 友人達の子供の面倒から、仕事先で出会った子供の面倒まで、よくやっていた。


 なによりも、秋星が子供好きなのが大きい。仕事が休みのときは、町の子供と遊んで過ごすことも珍しくなかった。


「確かに、私は子供が苦手だが……」


「なにさ。僕は平気だろって言いたいんだろ」


「教師なら、子供相手だろ」


「まぁ、ね……」


 でも苦手なんだと、蒼翔は小さく呟いた。






.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ