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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
三部 神具編
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覚醒した炎3

 燃え上がる剣を片手に、柊稀が斬りかかる。瞳が炎のように赤く染まり、炎はさらに溢れていく。


 強い魔力に、二人は言葉を失い見守る。立ち入る隙が見当たらなかったのだ。魔法槍士である黒耀ですら、立ち入れなかった。


――精霊眼が発動します!――


 金色へ変わっていく瞳。空気が震えるのを感じ、慌てたように黒耀が精霊眼を発動させ、軽減させようとする。


「ぐっ…」


 何代にも渡り力が下がっている黒耀では、完全に受け止めることはできず。


 吹き飛ばされそうになった身体を支えるので精一杯。辺りに荒れ狂っていた炎は、一瞬で消されていた。


「さすが、初代の精霊眼だ。発動だけでこれだけの力を放つのか」


――力制限しなければ、これぐらいになりますね。あの魔力ですから――


「なるほど…」


 当たり前のように話す二人に、精霊眼の発動にこのような魔力の波動が放たれるとは、聞いてないよと言いたくなる柊稀。


 そんな彼を尻目に、魔力の差も関係があるのかと呟きながら、黒耀は立ち上がる。


 精霊眼に対抗するには、精霊眼を使うしかない。これだけは、柊稀では対抗できないのだ。自分がやるしかないと槍を握る手に力がこもる。


(俺に、やれるだろうか……)


 この戦いが始まる前なら、抑えてみせると言えたかもしれない。けれど、今は自信を持って言うことができない。


 三人ともが、ここからさらに激しくなると覚悟を決めた瞬間のこと。異変は起きた。


「なにが……」


 造られた使い手達に感情はない。痛みを感じる感覚もない。けれど、目の前で苦しげに表情を歪める白秋。


 一度伏せられた視線。それが再び柊稀を捉えた瞬間、変化がなにかを察した。


「白秋…さん……」


 彼だと、ハッキリと言える。過去で少し言葉を交わしただけだが、その違いはわかった。


「よぉ…久しぶり、か……」


 無機質な造られた使い手から、白秋という存在に変わったのだ。予想もしていない出来事に、三人とも言葉を失う。


――白秋殿、一体なにを――


 さすがに黒欧でも驚いたように見る。彼は昔の主の夫であり、昔の主の父親。誰よりも理解していたが、このようなことをするとは思っていなかった。


「なにって…約束…だからな。手を打つって……」


 別の力を押さえつけているのか、酷く苦しげにしている。一瞬たりとも気を抜くことができないのだろう。


「っても…長く…もたねぇ……」


 仕組みなんて話している暇はない。抑えつけている力は、禍々しくなった神具の力であろう。いくら魔法専門の天才と言われていようが、抑えつけていられるのはわずか。


 そのわずかで、用件は済ませなければいけない。


 白秋の右手が魔法陣を描いていく。複雑な魔法陣に、黒欧がハッとしたような表情を浮かべる。


――白秋殿、まさか――


 彼がやろうとしていることがなんなのか、黒欧は察した。付き合いが長かっただけに、それをやってもおかしくないと思えたのだ。


 思えたし、最善の手だと思ってしまう。すべてを見てきたから、黒欧は止めるべきなのか悩む。


「俺の精霊眼を…止められんのは二人…そいつじゃ…無理だ……」


 瞳が輝き、目の周囲に刻印が浮かび上がる。呼応するように魔法陣が赤く輝き出す。


 描かれた魔法陣は黒い空間へと変わり、不気味な光を発した。


「うわわ!」


「な、なんですか!?」


「いったぁ」


 ドサッと音をたて、黒い空間から吐き出される三人。


「えっ……」


 三人を見た瞬間、柊稀の動きが止まる。


「あ、あぁー!」


 思わず、現状もすべて忘れ叫ぶ。


「ん? うわぁ! 柊稀じゃねぇか!」


「ちょっ、待ってください。これってまさか……」


「未来……」


 呆然と呟く青年は、過去の世界で知り合った魔法槍士。一緒にいるのは魔法槍士補佐官の二人。


 思わぬ出来事に、誰もが動けずにいる。


 このようなことを予測できた者は、誰もいないだろう。たとえそれが、魔法槍士であっても。


「あれ…なんで…お前らいんの?」


 唯一わかっていた者でも、予定外ということはある。白秋は飛狛のみを引き寄せるつもりだったが、二人余分にいた。


「父さん…まさか…柊稀に手を打つって……」


 息子の言葉を聞き、不敵な笑みを浮かべる。答えとしてはこれで十分だ。息子に意味は通じる。


 当然、このようなことをしたということは、仕えるべき王の許可も取り済みだろう。父親がそこまでやらないわけがない。


「ふざけんなぁ! 巻き込まれた俺らはなんなんだよ!」


 いつもなら落ち着けとなだめる夜秋ですら、今回ばかりは同意するように睨む。


「わりぃ…もう…時間がねぇ…帰りは自力で頼むわ……」


 絶句する過去から来た三人に、こればかりは同情する現代の四人。


 様々な思考が交差する中、抑えつける力に限界が来たのだろう。徐々に戻っていくのがわかる。


 空気が完全に無機質な状態へ戻るのに、数秒程度であった。一瞬だけ時間が止まったようだ。






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