新たなる王の末裔2
ようやく相手の動きが見えてきたのか。同時に互いの動きも理解してきたのだろう。次第に二人が攻撃体制に入っていく。
「緑槍乱舞!」
琅悸が地面へ剣を突き刺せば、地面から魔力で作られた槍が大量に突き出す。
「魔精焔刃!」
「一振りか……」
すべて切り裂かれたのを見て、悔しげにする。そんな琅悸を見ながら、ユフィの内心はそうだろなと思う。
彼はすべてを知るからこそ、琅悸が使う技に伊吹は対処可能なのもわかっている。今の技は伊吹の友人が得意とする技で、琅悸の扱う技はその家系の物ばかりだ。伊吹には常に相手していた技でしかない。
力量は別として、戦い方が読まれてしまえば琅悸には厳しい相手。
(勝敗は、虚空次第か)
戦況を冷静に分析し、ユフィは見守った。おそらく、本人達もわかっているはずだと。
(あとは連携かぁ。だいぶよくなってきたけど)
昔から交流があったわけではない二人。さらに、フェンデの巫女護衛という立場を気にし、琅悸が下がり気味なのがユフィは少し心配だった。
少しだけ心配された連携は、なんとかというのが評価である。いいとは言えないが、悪いとも言えない。
(強くいかなければダメか)
けれどこのままではいけない。意を決すると、虚空が剣へ魔力を集める。
察した琅悸と視線が絡み、目が細められた。正確に意図を察したのだ。
(フェンデの巫女護衛。噂以上だ)
力量も洞察力も、自分とは比べようがないほどある。もったいない、と思う。彼が護衛に徹するのも納得がいくが、そうではなくて、もっと仲間として動いてくれればこれほど心強い相手はいないのに、と思わなくもない。
一人で伊吹を食い止めるよう、琅悸が斬りかかる。食い止めることだけでいいなら、彼の実力で造作もないこと。
始まれば虚空は考えることを止めた。ただ意識を集中し、彼が作る隙を待つ。彼なら必ずやってくれる。自分が動くと確信して食い止めてくれているのだ。
「虚空!」
渾身の一撃が伊吹の体制を崩させ、逃さないように虚空が駆け出す。
「魔竜、破傲陣!」
(陣……あんなのがあるのか)
攻撃を見て琅悸は酷く驚いた。
通常、陣とつく魔技は攻撃用ではない。サポート用と言ってもおかしくはない技。
陣で囲った範囲での攻撃力を増幅したり、身を護ったり。使い方はそれぞれだが、連携して使うことも珍しくない。
琅悸自身も、得意とする属性の魔技に合わせ、増幅効果がある陣の魔技を会得していた。
しかし、目の前で虚空が使って見せたのは攻撃用。サポート用を意図的に攻撃として使っているわけでもなく、陣の中へいる対象の敵を攻撃するためのものだった。
「すごいな、その力」
「魔力の消費がでかい。可能なら使いたくはないんだが」
これしか思い付かなかったと苦笑いを浮かべる。
けれど、大量の魔力を消費したおかげでなんとか伊吹を倒せたようだ。琅悸は技の破壊力に舌を巻く。これは自分でも受けたくないと思ったほどだ。
「虚空、そのままやれるかぁ?」
「……やるしかないんだろ。あれを取り戻すということは、そのまま使い手になるってことだ。巫女には無理だろうし、琅悸には一番やばいってやつをやってもらわないといけないからな」
実力を目の前で見たからこそ、なおのことそう思う。
剣をしまい、虚空は神具を見る。これを取り戻すために、どれだけの魔力を使うのか。
一番心配なのは、魔力がもつかどうかなのだ。失敗するかもしれない。そんな不安が胸の中に過る。
(信じろ。必ずやれる)
仲間が信じてくれているのだ。自分が信じないでどうするのか。そう言い聞かせ、虚空は神具へ手を伸ばす。
触れてすぐ、引き込まれる感覚に慌てる。このまま引き込まれてはいけない。
大量の魔力を放ち対抗すれば、耳から音が消えた。無音の世界を感じるのはとても久々である。
誰かが呼び掛けているかもしれない。だが、今の虚空にはわからない。
だから無音の世界に身を任せる。すると、なにかが流れ込んでくるのを感じた。悪いものではない。大切な者を想う気持ち。
(この神具に宿る、使い手の気持ちか)
神具に残された使い手の心。戦っていた人物の感情だと気付く。
暖かい気持ちもあれば、冷たい気持ちもある。仲間や家族を想う心は、とても心地よい。
(あの強さは、大切な者を護るための力か……)
ユフィから聞いた護衛の話を思いだす。護衛していたのがとても大切な存在なのだ。
誰よりも、なによりも大切に想う。そんな心が宿っている。
(これは……)
違う。違う心がある。虚空は使い手とは違う人物の心をみつけた。
その心は自分に近い気持ちだが、自分よりも強い気持ち。同族を護りたいと、救いたいと願う強い想い。
(そうか、彼が世界統合でこの剣を使っていたんだな。今度は私が使う。同族を護るため、仲間を護るために……。なによりも、彼が救い、彼らが作った平和を守るために)
暖かい光が溢れていく。神具へ再び暖かい心が宿っていく。
虚空の想いが神具を解き放ったのだ。
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