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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
三部 神具編
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新たなる王の末裔

「別行動、大丈夫だろうか」


「大丈夫ですよ、琅悸。黒耀がついていますから」


「私達はこっちを考えよう」


 目の前にそびえ立つ魔刻山を見上げ、虚空は言う。今は、別行動をしている柊稀達を気にしている場合ではない。


 彼らがなぜ別行動になっているかというと、蒼翔から話を聞こうとした際に、雪精の塔を見たいと言われた為。


 あの塔を調べていいことを条件に、聞きたいことを話すと彼女は言った。


 提案したのは黒耀だ。調べている間に、魔竜族の神具を取り戻す。なるべく時間をかけないために、そうしないかと。


 その提案を断る理由は、どこにもなかった。


「ユフィ、魔竜族の神具は誰が使っていた?」


 戦う相手を知る必要がある。幸いにも、この精霊が知っているので戦略は立てやすい。


「七星剣を使っていたのは、聖なる王の伯母にあたる女性の護衛だ。腕は火竜族がやってる大会で、上位から抜けたことがない。剣技だけではなく、魔法も得意だな」


 どうする、と問いかけるように見られ、虚空は険しい表情を浮かべた。


 戦力は琅悸と虚空の二人。援護ならば氷穂でもできるが、三人でどこまでやれるのか。


 それに、彼はどうしても自分でやりたかった。己の一族に託された神具であったから。


「この奥へ行くのは久しぶりだな」


 大きな扉を前に虚空は呟く。長を継いだときに、一度だけ来たことがあったのだ。


「来たことがあるんですか?」


 始祖竜は神具のある方へいるべき。黒耀の一言で、柏羅はこちらについてきた。


 柊稀に一番なついているため、引き離すのは無理かと思ったが、彼女なりにしっかりと考えているようだ。


 自分がどのような存在で、どのような立場に置かれているのか理解している。過去での経験が、ただ護られるだけのか弱い少女から、抜け出させたのかもしれない。


「ここは、魔竜族にとって特別な場所なんだ。長になったときと、過去を繰り返さないため、定期的に来ることになっている。と言っても、私は長になったときしか来ていないが」


 その余裕がなかったというわけではなく、邪教集団のことを黒耀と追っていたのが原因だ。


「じゃあ、神具も見たことが?」


 氷穂の問いかけに、彼は頷いた。


「神具の保管をここにしたのも、世界統合の際に長をしていた者だと、家には伝わっている」


 なぜ遠く離れたここだったのか、虚空は疑問を覚えていたが、意味があることなのだと信じている。この場所を特別な場とする意味があるのだと。


 重い扉は、虚空が触れただけで開かれる。本来は魔力を判別して開くはずだが、過去の使い手にも扉は反応するのかもしれない。


 もしくは、この扉を開かせる秘密が使い手にあるのか。


 扉の奥は広い空間となっており、昔のまま。ここで激しい戦闘があったのだと、見ればわかるほど荒れている。これも過去を忘れないため、わざと保存しているのだ。


「こりゃすげぇ」


 精霊も口笛を吹くのか、と突っ込みたくなる反応を見せるユフィ。


 目の前に立つ無機質な青年は、間違いなく彼が知る全盛期の使い手。ここまで力の再現をできる相手に、恐怖すら覚えた。


「彼が過去の使い手。造られた者か」


 火竜族独特の緋色に髪は、洞窟の中にいてもハッキリとわかる。無機質な表情と感情の読めない茶色の瞳。


 意思があるのかもわからないが、手練れだということはわかる。それも、修羅場を知っているほどの。この青年は、何度も命をかけて戦っている。


「伊吹に会うなんてなぁ。造られたのだが」


 一瞬だが複雑そうな表情を浮かべるユフィは、すぐさま笑った。始まったばかり。かつての仲間は、これからまだ現れるのだ。


 その度に干渉に浸っていてはキリがない。


「やっちまおうぜ!」


「お前はなにもやらないだろうが」


 深くため息をつき、琅悸が動くのは俺達だと視線を向ければ、ユフィは笑うばかり。


 試すように動いたのは琅悸が先。一撃入れれば、あっさりと受け止められ弾かれた。


(さすが過去の使い手。これが何人もいるのか)


「琅悸!」


 迫る炎に、氷穂が氷を放つのは同時。いつでも放てるよう準備していたのだろう。しかし、魔力は相手の方が強いらしい。


 氷穂の魔法はあっさりと飲み込まれ、琅悸は剣で切り裂く。


「ユフィ、氷穂と柏羅を頼む」


 目の前の人物を相手するには、氷穂の魔力ではサポートすらもできない。


 いや、違う。神具を奪われた状態では力が弱くなるのただと、その場にいた誰もが気付かされる。


「黒耀は一人でやったんだったな。さすが魔法槍士だ」


「精霊眼がある。俺達とは違うということだな。俺も、この剣がなければ危ないかもしれない」


 魔法を裂く剣だからこそ、対抗できるのだ。なければ、魔法合戦になった瞬間に負けてしまう。


 剣を握る手に汗がにじむ。末裔の力には頼らないようにしていたが、どれだけ強い力に頼っていたのか、それを思い知らされた。


 二人が入れ替わるよう、交互に剣を交える。相手の動きを見抜かないことには、攻めることができない。


 攻めるポイントを探るような攻撃。どうしても詰めが甘くなってしまう。その上、二人は初めて一緒に戦う。互いのこともわからない状況なのだ。


「くっ…」


 肩に巻き付く炎を振り払えば、目の前に迫る剣。割って入る琅悸の背中を見ながら、虚空は瞬時に動く。


狼斬波(ろうざんは)!」


真空刃(しんくうじん)!」


 放たれた魔力の波動は、伊吹の放つ真空の刃にすべて打ち消される。


火竜爆裂剣(かりゅうばくれつけん)!」


 追い討ちをかけるよう伊吹の魔技は放たれた。爆風に吹き飛ばされ、身体は強く叩きつけられる。


「あ、伊吹は爆発系が得意なんだよ」


「先に言え!」


 思いだしたようにユフィが言えば、二人は同時に怒鳴った。


 情報を出すなら始めから得意技までくれ、と二人は思う。


「わ、わりぃ」


 苦笑いしながらユフィが頭を掻く。






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