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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
三部 神具編
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失われたもの2

 魔法槍士に仕える魔道生物。当然、過去にもいたわけで、すべてを知っている存在でもある。


――まず、精霊王の手助けですね。主殿を仲介に、一度だけ頼めます。飛狛殿より、判断はすべて柊稀殿へ託すと聞いています――


「僕に……」


 そんな大事なことを決めていいのだろうかと思わなくもない。自分ではなく、魔法槍士である黒耀が決めるべきではないかと。


――はい。使用用途も含めて、すべての判断を託すとのことです――


 つまり、彼の個人的なことでも構わないということ。先を読んだ過去の魔法槍士の言葉に、なにかあるのかもしれないと思う。


――そして、過去を襲撃した者なのですが――


「名前は華朱。火竜族、族長の一人娘。意味わかるか?」


 驚くことを言われ、柊稀は言葉を失った。自分が知っていることと違うのだ。意味がわかるわけがない。


「朱華は……」


 なに、と問いかける。真っ先に気になったのは、彼女の存在はなんなのか。火竜族の族長は丸ごと入れ替わってしまったのか、それとも娘だけか。


 どちらにしろ、彼女が自分を知っている理由だけはわかった。あの襲撃者は、あの村に確かにいたのだ。


 事態は、知らないところで始まっていたのだと知った。少しずつ、邪教集団は活動していたのだと。それも、自分の身近で。


――未来を変えるわけにはいかないので、申し訳ないのですが関与はできませんでした――


「調べて、いたんですか」


――はい。それが、飛狛殿からの頼みです。私もほっとけなかったので。少し勝手をしました――


 関与はできない。変えてはいけない。けれど、この先は違う。


 ここから先は変えるのではなく、作っていくのだ。自分達の未来を。そのために飛狛が残したもの。黒欧は勝手な行動とわかりつつ、隙を見つけては情報を探っていた。


(飛狛さん…ありがとう……)


 未来を知ったことで、未来を変えずに手助けをする。それが彼の答えだったのだろう。


――私が見てきたものをお話します――


 話すタイミングもすべて指示があったのか。それとも、黒欧の判断に任されているのか。


 黒耀の表情を見れば、今から話される内容は知らないのだ。それほど内密に、見続けていたのかもしれない。


 邪教集団と思われる存在は、蒼焔(そうえん)歴から動き始めたと言われている。


 黒欧がその存在を探し出せたのは、飛狛の推測の元、火竜族の族長を見ていたからだった。


――火竜族の族長は初代から火竜王の末裔でしたが、柊稀殿がこられた過去の時代で途切れています。その後、飛狛殿の妹の家系が継いでいます――


「それで精霊眼が火竜族の族長へ……」


 過去で精霊眼についても聞いていた。あの力は魔法槍士の父親である白秋から始まり、飛狛と妹に継がれたもの。


 白秋には子供が二人のみで、息子の飛狛はフェンデの巫女であった氷那との間に子供が二人。


 一人は魔法槍士、もう一人はフェンデの巫女へとなるため、未来と一致していた。


 妹は天竜王の息子である狛琉との間に子供が一人。あの時点では、子供は王族であったのだ。


――火竜王最後の末裔となった方は、亡くした奥方以外を妻にすることはなく、息子は魔法槍士になりましたからね――


 相談の末に、新しい長として狛琉の娘が選ばれていた。


 それ以来、精霊眼を継いだ者が長も継いでいた。


「全員が継いでいるわけじゃない?」


――はい。中には力を継がなかった方もいますが、おそらく発動しなかっただけかと――


「そうか。普通なら、精霊眼を意図的に発動させる必要はないからな」


 どうやら、そこの部分は過去で聞いたことと違うらしい。説明を求めるように柊稀は隣を見る。


「代を重ねて、精霊眼の力は弱まっている。俺やフェンデの巫女は独自で強める方法を持つが、火竜族の長は違う。衰退させていたはず」


――はい。火竜族は戦闘本能が強い関係もあり、鍛える長が多いので、その過程で発動する方もいましたが――


 力は弱くなっているはずなのだと二人は言う。あの女性も本来なら精霊眼を発動せず、眠らせたまま終わるはずだった。


 しかし、そうはならなかった。何者かが、発動させるきっかけを作ってしまったのだ。


 きっかけもすべて見ていたのだろ。視線で話を促す黒耀に、黒欧が頷く。


――双天(そうてん)歴百二十三年、海竜月(かいりゅうづき)(とう)。この日、族長一家は出掛けられました――


 幼い娘を連れて、夏祭りへ出掛けた。たったそれだけの外出。すぐに戻るはずだった。


 けれど、それは叶わなかった。夏祭りを見ることすら一家はできず。邪教集団の襲撃を受ける。


――妻子を人質にとられ、精霊眼でなくては読めないものを読まされました。その後は――


 言わなくてもわかった。殺されてしまったのだ。自分達の存在を知られないために。


 たったそれえだけの理由だと思うと、柊稀はいたたまれなくなる。


――ここで、族長一家は入れ替わっています。今いるのは、あなたといた朱華殿は、邪教集団が造った存在です――


「……造った?」


 一瞬、意味が理解できなかった。造ったという意味がわからなかったのだ。


 朱華が造られた存在とは一体どういうことなのか。






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