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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
二部 過去編
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過去での一時

 未来からの襲撃者を追い返した一同。その場は、なんとも言えない雰囲気となった。


 苛立っていたのが嘘のような雰囲気で近寄ってくる飛狛の父、白秋。


「よくわかんねぇし、めんどくせぇことに首突っ込むのも嫌だが、ひとつ確認。もう終わったんだよな」


「おそらく、な」


 あの感じでは、元の時代に戻っただろう。簡単に時空を越えられるなら、またありえるかもしれないが。


「無理だな。いくらあいつの力でも、何度もできるもんじゃねぇ」


 そこは白秋がきっぱりと言い切った。彼が言うなら、間違いはないのだろう。


「で、もうひとつ。俺、いる?」


「ぷっ」


 それにはさすがに笑った。めんどくさいことに首を突っ込むのが嫌と言いながら、混ざるべきかと訊ねてきたからだ。


「白秋さんらしいですね」


 夜秋も呆れながら、けど心強い気持ちにされた。


 場所を移しての話し合い。まずは彼に話すことから始まったのだが、大方は理解していた。


「どこまで関わっていいのか。そこが問題か。いや、関わるべきじゃないんだが……どうすっかなぁ。色々見えてはいるが……」


 言うべきなのか、言わないべきなのか。白秋が悩むのを見て知りたいと言ったのは柊稀だ。


「本当はいけないのかもしれません。でも、僕は知りたいです」


 自分に関わりがあるなら、彼女のことも知りたい。どう見ても、彼女は邪教集団とは違って見えた。


 柏羅を狙うわけではない。けれど、柏羅のことで巻き込まれてしまった女性だと思われる。


「たぶんな、あの女は娘……飛狛の妹。その血族者だ。精霊眼もだが、止めに入ったのは、俺が連れてる魔道生物だった」


 魔法槍士の血族になると知り、でも驚きはない。あの金色に輝く瞳を見てしまったから。


 飛狛が同じように変化したのを見て、なんとなく察したのだ。


 始祖竜の一件に巻き込まれたということは、飛狛がこれから見つけるなにかが、始祖竜に絡むのだ。


「俺が見つけたそれは、彼女の生活を狂わせる……つまり、必要なのは精霊眼」


「だから、フェンデの巫女が狙われたって言ってたんだ」


 今まではよくわからなかったことが、急に見えてきたような気分になる。過去に来たことで、知らなかったことを知れたからかもしれない。


 知識が欲しくなった。未来に帰れば、自分で見て考えなくてはいけない。彼らに頼れないように、琅悸達に頼りっぱなしでいるわけにもいかないのだ。


「あの、えっと……」


「知識が欲しいんだろ。教えてやってもいいが、それじゃ意味がねぇ」


「そうですね。必要そうな本を用意しましょう」


 双子が言いたいことを察し、そう声をかけた。二人とも未来へ戻る前に、ある程度の知識を持たせようと考えていたのだ。


 自分からやる気があるなら、二人はいくらでも協力するつもりだった。


 未来への帰り方。それが一番の問題になる。来たときは始祖竜の力できたが、帰りは期待できない。


 なぜなら、いつ始祖竜の力が動くかがわからないからだ。


「帰り方は俺が調べる。たぶん、あそこから帰れるはず」


 飛狛の言葉に周りは反対したが、彼は頑固。一度言い出したら、もう無理だとみなわかっていた。


「まっ、がんばれよ。俺は関わらないからな」


 手をヒラヒラと振って部屋を出ていく白秋に、苦笑いを浮かべる息子。父親の性格を理解しているだけに、言葉の意味も正確に察している。


 見た目や言動を信じてはいけない。それが彼の父親だ。


「三日休暇。それだけは譲らないぞ。病み上がりですらないんだからな」


「……わかりました」


 少し拗ねたような表情を見せたので、天竜王は笑った。彼からすれば、いくつになっても飛狛はかわいい弟なのだ。





「なに考えてるんだ?」


 深夜、執務室に二人はいた。


「別に。なんも考えてねぇよ」


「嘘つくな。付き合いも長くなれば、さすがにわかる」


 そう言われれば、白秋は降参するしかない。彼と友人は誤魔化せないとわかっていたのだ。


「未来に……関わるべきじゃないんだろうな」


「知識を与える分には、いいんじゃないか」


 白秋だから与えられる知識が、情報がある。それぐらいなら、許されるはずだと。


「あれは、間違いなく李蒼(りそう)だ。ずいぶん力は変わっていたがな」


「止めに入ったのは、お前の実力がわかっているから」


 この時代では主である白秋。誰よりも実力を理解しているからこそ、あのとき止めに入ったのだろう。


 なら、なぜ連れてきた。そんな問いかけがしたかった。なぜ飛狛を狙うとわかっていて、未来の主を連れてきたのか。


 それが、どうしても気になっていた。


 さらに気になっているのは、そのあとに出てきた獣だ。


九兎(きゅうう)だったが、どうも様子がおかしい」


 普通の状態ではなかった。主の影響を受けているのかもしれないが。どうしても白秋は気になった。あの異常な状態が。


「少し調べてみる。あいつは、まだよくわかってねぇんだ」


「それがいいな。未来に起きる異変、なにか見えるかもしれない」


 関わってはいけない。わかっていながら、二人はなにもせずにはいられなかった。


 最後に叫んだ言葉が忘れられなかったからかもしれない。


「あんなの言われちゃ、飛狛がまた無理するからな」


「白秋も、なんだかんだ甘いよな」


「いや、精霊眼に関しては俺の継いだ結果だしな」


 無関係じゃないと彼は苦笑いを浮かべる。だからこそ、なにかできるならしたかった。


 先の世にいる、自分の力を継ぐ者達へ。







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