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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
六部 最終決戦編
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父が残した物

 共鳴するように、二つの黒水晶のペンダントが輝く。


 使い方も渡されたときに教わっていたのかもしれない。けれど、効果までは知らない双子。


 黒い光が抜け、二人の武器へ吸い込まれていく。次の瞬間、鳥が羽ばたく羽音が辺りに響き、黒い鳥が姿を現す。


「……親父?」


 鳥から感じる力に、驚きながら見上げる秋星。


「これは…父さんの力……」


 二人の言葉に、見守る仲間も驚いたように鳥を見る。目の前にいる人物も、父親と同じ力を持っているはずなのだ。


 現に、双子は手も足も出ないでいた。これは一体、どうなっているのか。


「そうか……じいちゃんは二つの力を分けてあったんだ」


 双子の父親である紅飛は、黒竜王の末裔であると同時に、火竜王の末裔でもある。力は二つあるのだ。


「九兎! 知ってるだろ!」


「ふきゅ。内緒の約束……ですがぁ、仕方ないですねぇ」


 これに父親が関わっている。飛狛だからすぐにわかったのだ。父親が絡むなら、このうさぎはすべてを知っている。


 九兎は誰よりも傍で見ていた。だから知っている。主の関わることなら、なんでもだ。


 それは、世界統合が成されて数年後のこと。丘で昼寝をしていた当時の主、白秋の元へ紅飛が来た。


「魔道生物を造ってもらえないか」


「必要に見えねぇけど」


 チラリとも相手のことを見ず、彼は答える。どう見ても紅飛には必要のないものだ。


 魔道生物であれ、造れば生きている命。やり方がわかっていても、意味なく造る真似だけはしたくない。命で遊ぶ行為だし、造られた魔道生物達を苦しめるだけになるから。


「俺の竜玉を核に、俺の魔力で、朱鞠のために残したい。俺が死んだ後のためにな」


 白秋が魔道士物も命として大切にしていることを知っているだけに、判断は白秋に任せようと思っていた。ダメなら、他になにかを考えればいい。


 とにかく、妻のためになにかをしたかったのだ。自分が死んだあと、妻が前へ進めるように。


「……死んだ後?」


 思わぬ言葉に、白秋が起き上がる。


「あぁ…できるか?」


 造ってもらえそうだと思った紅飛は、さらに問いかける。それに対して、白秋の反応は無言だ。


 竜玉を核にしてできるのか。言いたいことはわかったし、少し興味があった。もしも竜玉で造れたら、息子以降に役立つかもしれない。


 もちろん、やってみないとわからないことだらけ。竜玉はただの力ある玉ではない。核になるかすらわからないのだ。


 素直にできるかわからないと答えれば、試してくれと言われた。必要な情報で自分が知っていることなら教えるからと。


「けどなぁ」


 竜玉を使うということは、なにかあれば大惨事となる。末裔にとっての竜玉は、第二の心臓だ。さすがに即答はできない。


 引き受けるということは、紅飛の命を預かるということになるからだ。


 少し考えさせてくれとこの場での回答はしなかった。


「可能なのか……」


 いくら魔法知識があっても、竜玉の知識はない。白秋は王の末裔ではないし、そういった知識は魔法槍士にしか伝わらないからだ。


 だからといって、妻に問いかけてもどこまで知っているのかわからない。妻より紅飛のほうが詳しいと、彼は知っているから。


「ふきゅー。どうするですかぁ」


「悩むな。即答できることじゃない」


 なにが起きるかわからないのに、簡単には引き受けられない。


 けれど、返事を待たせるわけにもいかないだろう。やるなら早い方がいい。時間はあまりないと考えているから。


 それがわかるだけに、三日後に答えると告げたのだ。





 三日後、いつも通り丘で昼寝をしていれば、約束通り紅飛はやってきた。回答を聞くためだ。


「……なにが起きるか、正直わからねぇ。それでもよければ、やる。できるかも保証できねぇぞ」


 珍しく真面目な表情で待っていた白秋。それが難しさを語る。


 言葉の中には、失敗して死ぬかもしれないという意味も含まれていた。命の保証がされないことをするのだと。


「かまわない。すべて覚悟の上だ」


 その想いはさすがだと思えた。自分が死んだ後を考えるなど、彼は考えもしていなかったからだ。


(死んでもなお、妻を想うか。まっ、俺らの場合はどっちが先に死ぬかわからんしな)


 同じようなことはできない。短命の妻と身体の弱い白秋では、どちらが先に死ぬかわからないからだ。


「んじゃ、ちゃっちゃとやるか。時間があるうちにな」


「あぁ…」


 彼の願いを叶えるには、残された時間は長いようで短い。引き受けたからには失敗は許されないな、と白秋は思った。


 互いの身体が耐えられるうちに、ひとつの命を造らなければいけないのだから。






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