表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの竜  作者: 朱漓 翼
六部 最終決戦編
139/174

双子の決意3

 すべてが終わったあと、飛狛の扱いはまた変わった。正式に魔法槍士の後継者として公表されたのだ。


 周りからの好奇の視線を浴び、頼りないと噂が流れ、それでも心配かけないよう必死に笑う。造り笑顔しか見せなくなった。


 同じで同じではない。ハッキリと感じた瞬間だった。


「自分からそれを望むのか」


 決意の眼差しを向ける幼い双子に、父親は真剣な表情で問いかける。


「望む。僕は、僕達は飛狛の傍にいる」


「俺達は、なにをしても許されるから。そのために最後の教えをくれよ」


 魔法槍士が独自に使う、末裔の力の使い方。それが絶対に必要だと、二人は思った。


 彼が継いだとき、同じ道を進んでいくために。魔法槍士と同じものを手にする。


「……早死にするぞ」


「わかってんだよ! 死ぬまで飛狛といてやるさ!」


「死ぬまで……今のままだと、秋星が先に死にそうだよね」


「うっせぇ! どうせ、俺は弱いですよーだ!」


 拗ねたようにそっぽ向く秋星に、夜秋と父親が笑う。


 懐かしくも遠い昔の記憶。


「秋星!」


 地面に叩きつけられた身体。これが何回目になるかもわからない。痛みなど、すでに感じなくなっていた。


(昔と、なんも変わってねぇ。結局、俺は弱いままだ。夜秋にも劣る)


 ぼんやりとした霞む視界。父親の姿を見ながら、父親と過ごした日々を思いだす。


「なぁ、なんで俺の精霊石、変化しねぇの? 夜秋はあんなに変化したのに」


 秋星は精霊石を育てる、という行為に苦戦していた。教わった通りにしているのに、精霊石はまったく変化しなかったのだ。


「夜秋は、確かに優等生だ。なにをやりたいって、迷いがないんだろうな」


 俺だって迷ったのに、と父親が笑った。


「迷ったのか?」


 幼い秋星が知る限り、父親が迷ったりする姿は見ていない。いつも真っ直ぐ、自分の道を歩いていた。


 そんな父親のうしろ姿は、秋星にとって憧れだ。


「まぁ、な。六歳でもらったが、俺が変化させたのは四年後だ」


 無敵と信じるほど強い父親が、四年もかけた。信じられないと見上げれば、苦笑いを浮かべる。


「迷うことは悪いことじゃない。ゆっくり考えろよ、付き合ってやるからさ」


 幼い少年が悩む姿を知っている父親は、いくらでも付き合うと笑った。その迷いが晴れるまで、どこまででも付き合ってくれた。


 優しく笑いかけてくれた父親。厳しくて、けれど誰よりも理解してくれた、秋星にとって自慢の父親だ。


 自慢の父親をこんな風に利用された。許せるわけがない。絶対に許せないことなのだ。


(なんとか、俺達の手で……)


 自分達の手で、造られた父親を消したかった。どれだけ無謀なことだとわかっていても、それは息子としてどうしてもやりたかったこと。


 しかし、気持ちに身体はついていかない。起き上がろうとしているのに、まったく力が入らないのだ。


(このまま、ここで死ぬ……)


 そうしたら、どうなるのだろうか。過去に戻ることができない。それだけだと秋星は思った。それによってなにか変化があるわけではない。


(俺達は、所詮飛狛の下にいるだけだ)


 抜け道であるということは、彼を支えることに役立ちはした。したのだが、いてもいなくても同じ存在であるということでもある。


 魔法槍士ではない自分達は、歴史を変えるほどの存在ではない。まったく変わらないわけではないが、それは個人的なもの。


 子供もいるのだから、産まれる予定の命が産まれない、などということもない。


(なら……)


 どんな戦い方をしてもいいと思えた。目的のために手段は選ばないと決めたのだから。


 片割れもそのつもりだ。秋星が動けば夜秋も動くとわかっている。あとは、必要な力を解放するだけでいい。


 高まっていく力を感じ、夜秋がチラリと視線を向ける。片割れがなにをやろうとしているのか察したのだ。


(秋星…まさか、あなたが先に動くとは……)


 一番力を使うことを避けてきた。力を過度に使えば、命を削るからだ。それが魔法槍士と同じ力の使い方をするということ。


 家庭を大切にする秋星は、なるべく命を削らないよう。一分一秒でも長く生きるため、基本的に剣以外を使わない。


 そんな彼が自ら命を削る選択をした。ならば、夜秋に拒否する気持ちはない。


「飛狛……これでダメでしたら、あとお願いしますね」


 にっこり笑うと、飛狛の表情が強張った。高まっていく二人の力は、嫌な予感しかしない。


「なにをする気だ」


「なにって、力を使うだけですよ。ただ、それだけです」


 彼の直感が違うと感じる。ただ力を使うだけではない。これは、もっといやな使い方だ。それこそ、命を捨てるやり方だと、飛狛の直感が訴える。


「……たとえ、相討ちになっても……あれだけは僕達でやります!」


 黒い影が身体を覆う。力が高まり、魔力が溢れているようだ。その溢れる魔力は、飛狛から見ても異常なもの。






.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ