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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
六部 最終決戦編
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神竜の神殿4

 一方、別部隊はと言うと。


「琅悸にすべて任せるか」


「それがいいですね」


 双子のこの発言に全員が乗っかってしまい、琅悸が深くため息をついていた。


(選択と人選を間違えたかもしれない)


 飛狛といるべきだったか、飛狛と黒耀を分けるべきだったかもと反省したのだが、すでに手遅れだ。


 戦力的に飛狛と琅悸は別がいいと言われれば、断りづらかったのだが、そこは素直に断るべきだと学ぶ。


 なによりも、この双子は中々に厄介だと気付いた。いや、厄介というよりは、めんどくさいと言うべきか。


「間取りは簡単にしか把握してないのですが、こちらは二階を通って中庭へ出ることになります」


 過去で数回入ったことがあると、夜秋が内部を話し出す。


 神殿の内部など簡単には変わらない。間取りを変えるほど使われてもいない。それはすでに確認済みのこと。


 ならば、彼らが知る通りで問題なく進めるだろう。


 話を聞いていれば、氷穂と琅悸がおや、と気付く。聞いている間取りが巫女殿と同じだと気付いたのだ。


「巫女殿と内部の造りが同じみたいですね」


「あぁ。聞いてる話だと、まったく同じだ」


 創歴に造られたものだからかもしれない。塔の造りが同じなように、もしかすると神殿もそうなのかもしれない。


 さすがに、創歴の神殿に入ることがないことから、蒼翔でもその辺りは知らない。話を聞きながら、興味深そうに見ている。


「なら、先頭は任せた」


 ニヤリと笑う秋星に、言わなければよかったと後悔する。


「苦労するな、琅悸」


「まさか、こうなるとは思わなかった」


 苦笑いを浮かべる虚空に、琅悸は引きつった笑みで返す。


 嫌ではないが、この双子に言われるのと自主的にやるのでは、やはり感覚が違う。


「巫女殿と同じ造りなら、中庭で合流できます。行きましょう」


 中には間違いなく敵がいる。挟み撃ちに遭わないため、正面を避けて左右から入ったことが吉とでるか凶とでるか。


 どちらにしても、過去から来た三人の協力があればなんとかなるだろう、と琅悸は歩き出す。


 入ってすぐの階段を上り、二階通路へ歩いていく琅悸。正面広場が見えるが、パッと見は変化がない。


(罠か? 正面が無防備すぎる。俺達が引っ掛かるのを待っていたのか、左右から入ることを想定していたのか)


 もし後者なら、この道は危険かもしれないと琅悸の警戒心は強まる。


 同じような考えに至ったのだろう。夜秋、秋星をはじめ、虚空、星霜は内側へ女性陣を歩かせた。


 外側は丸見えで、なにかが飛んでくる可能性がある。隠れる場所もないため、盾になるつもりだ。


「琅悸?」


 先頭を歩く琅悸が急に足を止めた。鋭い視線が一点を見ている。


 なにかを見つけたのだと、緊張した空気が辺りを包む。


「うわぁ、かっこいい」


「琅悸さん、弓もできるんですね」


 遠くに見つけた敵を弓で射れば、蒼翔と莱緋が瞳を輝かせて見る。彼の容姿と身長でやられれば、とてもかっこよく見えるのだろう。


 氷穂ですら、琅悸を見ながら頬を赤らめている。普段は弓を使う姿を見せないだけに、初めて見た姿だったのだ。


 少しばかりムッとしたように、星霜が視線を逸らす。莱緋の態度が気に入らないのだ。


 もちろん、この少女に意味もなければ悪気もないのだが、わかっていても苛立つ。


「ずるいよね。なんでも出来すぎじゃない。僕達の立場がないよー」


 ふと我に返ると、蒼翔は拗ねてみせる。弓の使い手として、文句が言えないほどの腕前だったのだ。


「マジか……つまりよ、霜瀬さんに弓やらせたらできるんだろな」


「間違いないでしょうね。あの人も万能ですからね……」


 さすがに双子も驚かされた。ここまでやるとは思わなかったのだ。


「俺、ずっと見てきたけどな、万能なのは霜瀬と琅悸だけだぜ。こいつ、霜瀬と楼森(ろうしん)を足したような感じだ」


 あっさりとユフィが言えば、双子は納得。二人を足したと言われれば、一番わかりやすい例え。


「あぁ、楼森は霜瀬の弟だ」


 誰、といった感じで見ている氷穂達を見て、ユフィが知らないのだったと付け足す。


「見た目もだよな。霜瀬さんは見事な女顔だったけど、楼森さん足して割ったら、こうなるんだろうなぁ」


「なるな! 母親に似たから、よく女に見られてたなぁ。懐かしい」


 造られた存在として対面したのを思いだせば、誰もが納得の顔立ち。星霜と莱緋だけがわからなそうにしていたが、他のメンバーは苦笑いを浮かべながら話を聞いていた。


 そのまま見通しのいい道を抜けると、待ち伏せのごとく邪教集団の者がいる。


「……これも琅悸に任せます?」


「待て、それはなしだろ」


 さすがに待ったをかければ、夜秋はニヤリと笑っていた。冷や汗が流れる。彼は本気で言っているとわかったのだ。


「いけますよ。あなたなら」


 わかっている。これぐらいなら確かにやれるのだが、ここで容認したら最後、すべてやらされるだろう。この双子の考えることは、だいぶわかるようになってきた。


 さすがにまずいと拒否する。


「楽させてもらおうぜ」


「そりゃいい!」


 ケラケラと笑う秋星にユフィが乗っかった。


「お前はなにもしないだろ!」


 戦力外のユフィは、戦闘になってもならなくてもなにもやらない。そんな彼にだけは、さすがに言われたくなかった。


「えー、場の空気を明るくしてるぜ」


「それだけだろ」


 冷ややかに言われれば言葉に詰まる。事実であるからではなく、彼が冷ややかに言うときはやばいとわかっているからだ。


「俺と虚空で行ってやるよ。仕方ねぇから」


 四人のやり取りに呆れた星霜が言えば、虚空も頷く。なんでも琅悸に頼るのはよくないとも思っていたのだ。


「そうかそうか! 任せた!」


 笑う姿を見て、なぜだか許せてしまうから秋星は不思議な存在感だと琅悸は思った。






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