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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
一部 旅立ち編
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裏切りの朱華

 寝静まった深夜、闇に紛れるよう彼らは現れた。音もたてず、気配を消し、黒いローブで闇夜に同化する。


 目当ての場所は石造りの神殿。目当てのものは始祖竜。始まりの竜である。


「結界が張ってあるな」


「前回邪魔をした者か」


「地竜王の末裔か。厄介だな」


 結界の前でどうするかと話す数人。地竜王の末裔を抑えなければ、目的は達せない。


 さすがに末裔の力は警戒しなければ危ないと、彼らもわかっている。それほどの力なのだ。


「安心して。彼を抑える手はあるから」


「ミルダ様!」


 黒いローブの隙間から緋色の髪が見える。ミルダと呼ばれた女性は、どうやら火竜のようだ。


 ミルダ様と呼ばれるということは、この女性は彼らの中で高位の存在だということ。


「結界は私が破壊します。行って、始祖竜を我らの手に!」


「御意!」


 一斉に姿を消す黒いローブの集団。合図となる結界破壊まで身を潜めたのだ。


 誰もいなくなると、長身の人物がやって来る。黒いローブで性別はわからないが、おそらく男性であろう。


「来ていたの」


「……」


 ミルダの言葉に答えることなく、その人物はジッと見る。視線だけで連絡事項を伝えているようだ。


 しばらく視線だけでのやり取りをする二人。


「わかったわ。マスターにもそう言っといて」


「……」


 答えを聞けば、了承するように頷く。そのまま戻るかと思えば、ミルダに近寄る男性。


 腕の中へ抱き寄せ、すぐさま離す。言葉は一度も発することがなかったが、彼なりの意思表示であった。


 用件はすべて済んだのか、今度こそ離れていく男性の背を見送り、静かに目を閉じる。


(今は役目だけを考えればいい。私の役目は、この結界を破ること。末端を中へ入れれば終わり。あとのことは、あの子がやってくれるわ)


 一瞬チクリと胸が痛んだが、気持ちを切り替えれば、茶色い瞳で結界を見据えた。




 爆発音と同時に神殿の中へ黒いローブを着た集団、邪教集団が武器を片手に雪崩れ込んでいく。


「やはり、来たか……」


 入ってすぐの広間、そこには琅悸が待ち構えていた。襲撃を予想していたのだろう。


 寝ていたようには見えず、寝る支度すらしていない。普段着のまま剣を持ち、敵を見る。


「さすが巫女護衛。地竜王の末裔だ」


「だが、今回は負けぬ!」


「末裔の力など、時期に消え失せるのだからな」


 一瞬、琅悸の表情が変わった。末裔の力が消えるとは、一体どういう意味なのか。


 この力が消えるという考えは一切なかったのだ。琅悸は考えの甘さを痛感した。


 彼らは思っていた以上に、目的のためへと動いていたよう。その手段と知識も手に入れた上で。


 だが、と琅悸は笑った。どうやら彼らは、自分の力は末裔のものだけだと勘違いしている。


(俺も舐められたものだな)


 突然笑った青年を前に、邪教集団はバカにされたような気分になった。実際、バカにしているのだ。


 彼から見れば、目の前にいるのはたいしたことがない。末端など苦もなく蹴散らせるのだから。


「来たか……」


「残念だが、お前の相手は我らではない」


 目の前にいた人物が意味深く笑わなければ、気付けなかったかもしれない。


 その攻撃は唐突に背後からやって来たのだ。


「地竜王の末裔は任せたぞ!」


 後ろから来た襲撃者に気をとられ、邪教集団の一団が駆け抜ける。追おうにも、襲撃者はそれを許さない。


「やはり、お前か……」


 敵でいないでくれ。願っていたことは叶わなかった。彼の前に現れたのは、朱華だったのだ。


「ふふっ。わかってたんでしょ、私が邪教集団だって」


「なんとなく、な」


 目の前で笑う女性は、まるで別人だと思う。柊稀や柏羅と笑っていたときとはまったく違う。


 彼女が相手なら自分が手を抜くと思ったのか。考えてすぐ、自分の考えを否定した。


 そんな理由ではない。おそらく、目の前にいる女性は末端とは違うのだ。


 立ち振舞いに隙はなく、末端とは比べ物にならない実力を感じる。琅悸を抑えるための実力を持つのだろう。


(ユフィを置いてきたのは正解だったな)


 すべて一人で抑えるつもりだったが、もしものことを考えておいたのだ。朱華が敵だった場合のことを。


「私は簡単に殺れないよ」


「そのようだ」


 時間稼ぎされるのがわかっていても、どうにもならない。あっさりと押し退けることが出来そうにないからだ。


 賭けてみるしかなかった。始祖竜が選んだ柊稀に。選ばれたことに意味はあるはずなのだ。


 彼は、本当の意味で弱いわけではない。そして、彼女が本当の意味で敵になれていないことも、琅悸は気付いていた。






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