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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
五部 氷鬼なる琅悸編
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最後の神具5

 助教集団に付け入る隙を与え、仲間を傷つける結果になってしまったのも己の罪だ。


「私は、あなた以外の護衛なんていらない」


 彼でなければ意味がないのだ。他の誰かではダメなのだ。


「護衛としては、傍にいられない」


 氷鬼と呼ばれる自分が、護衛などしていいわけがない。


「なら、仲間として傍にいて。邪教集団を倒すための仲間として。そして、倒したら護衛はいらない。そうでしょ?」


 邪教集団に狙われることを恐れ、巫女護衛はできた。なら、狙う存在がいなくなれば必要ない。


 当然ながら、そのようなことが村や神殿に通じるかは、わからなかったが。


 彼が頑固なのはわかっている。こんなことで揺らぐことはないかもしれない。


 一度決めたら覆さないのも、彼の性格だ。わかっているから、氷穂にも考えはある。


「もし、それでもダメなら……私が神殿を捨てるわ。巫女の肩書きなんて、いらない」


「なっ…」


 彼女の決意に琅悸は驚く。跡取りがいない今、氷穂が巫女を投げ出せば大変なことになる。


 フェンデの巫女は、精霊の儀式を行う大切な存在。失うわけにはいかない。


「決めたの、琅悸とずっといる。もう手放さないって」


 彼が傍にいない日々を過ごし、どれだけ大切だったかを知った。改めて、再確認できた。


 だから、もう失いたくない。失うぐらいなら、自分がすべてを捨ててでも彼といる道を選ぶのだ。


「……強くなったな」


 強い決意を感じ取り、ただ護られているだけの女性ではないのだと痛感する。彼女も、この出来事を通して変化しているのだ。


「強くなきゃ、やっていけないでしょ。あなたの傍にいるためには」


「フッ……そうかもな」


 一度笑うと、琅悸は氷穂を抱き寄せる。


「巫女護衛はやらない。恋愛禁止だからな」


「わかってる。護衛にはしない」


 彼に規則を破れと言うのは無理だ。真面目な性格である以上、そのようなこと許せないだろう。


「大好きよ、琅悸」


 幸せそうに胸へ顔を埋めれば、琅悸は顎を持ち上げた。


「俺は、愛してる」


 氷穂が目を見開いて驚く中、誓いを立てるように琅悸は唇を重ねる。二人の想いを重ねるように。




「来ると思っていた」


 その日の深夜、部屋を訪ねてきた柏羅を見て、琅悸はそう言った。わかっていて、彼も待ち構えていたのだ。


「まだ、これを受け取っていませんから」


「これ…神具?」


 目の前に差し出された淡い光。氷穂も彼が受け取っていないことを思いだしたのだ。


 思いだしてから疑問が浮かぶ。地竜王の末裔としての力を失いながら、あれだけの力を持っていたのかと。


「琅悸お兄ちゃんは受け取っていないのですが、取り戻していましたから、末裔の力が戻っていたのでしょうね」


 疑問に気付いた柏羅が言えば、氷穂は納得したように頷く。


「それに、末裔の力には元々頼ってはいないようでしたし」


「大きな力に頼るのは好きではなくてな。なるべく使わないようにはしていた。その結果が今なのかもしれないが」


 自覚がないというのが本音である。


「不要かもしれませんが、この先必要かもしれません」


 持っていて損はないだろう。特に、彼ほどの力があれば、いざというときに役立つ。


「もらっとく。使わずに済むのが一番だが」


「そうもいかないかも……」


 氷穂もこの先を考えれば必要だろうと考えた。


「はい。きっと、この先はもっと大変になります」


 朱華の実力でも幹部ではないと聞いてしまった。もっと強い者がいると見ていいだろう。


 光へ手を伸ばせば、新たな神具へと姿が変わっていく。斧だった地の神具は、彼に合わせ一振りの剣へと変わった。


『護るために使えよ』


 ハッと剣を見る。呼び掛けられた声は、過去の使い手だ。


 しかし、彼はもういない。だからこれは幻聴かもしれない。


(護るさ…)


 氷穂を護るためだけに使う。琅悸はこの場にいない存在に、そう語りかけた。






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