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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
五部 氷鬼なる琅悸編
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氷鬼なる琅悸4

 救援を送り、時間は十分に満たなかっただろう。たったそれだけで、琅悸と直接剣を交えていた虚空と柊稀はボロボロになっていた。


 立つのもやっとの二人だが、それでも後ろを庇うようにいる。もはや気力だけで戦っているのだ。


(まずいな。魔力を使うわけにはいかないが……)


 剣技だけに虚空は限界を感じていた。しかし、魔力を何度も使えば音を失う。


 目の前の人物と戦うには、あまりにも危険すぎる行為だ。


 チラリと横を見れば、柊稀も限界が近い。ここで踏み留まらなければ、接近戦ができるのは女性陣しか残らない。


 辛うじて華朱が戦えるが、やはり力負けが大きかった。


(やるしかないか)


 ぎゅっと剣を握ると、虚空は魔力を高め始める。


「伏せろ!」


 次の瞬間、背後からした新たな声に、虚空はやっと黒耀が来たのだと知る。ここからまだ頑張れると。


「派手にやられてんなぁ」


「すごいですね。これを一人でやるとは、さすがですよ」


 こんな状態だというのに、笑みを浮かべている双子を見ればホッとするのを感じた。


「夜秋さん、秋星さん……」


「おぅ、来たぜ」


 まるで遊びに来たかのように答える秋星に、柊稀は力が抜けるのを感じる。


「柊稀!」


 慌てて朱華が支えるが、彼に剣を握る力は残されていない。


 すぐ隣でも虚空が倒れそうになり、黒耀が受け止めた。張り詰めていたものが切れてしまったのだろう。


「よく頑張った」


 状態を見れば、二人がどれだけ頑張ったのかわかる。目の前にいる青年相手では、それがどれだけすごいことなのかも。


 身体はすでに限界であろう。


「蒼翔、休ませてやるんだ」


「うん」


 後ろへ下げるように運べば、蒼翔へ身体を預ける。魔技のために高めた魔力を戻さなければ、彼は音がよく聞こえていないだろう。


 背に庇うよう、黒耀は立つ。これ以上仲間を傷つけさせないというように。


 笑いながらも、双子は琅悸に威圧をかけた。黒耀もいつもの無表情で油断なく見ている。だからか、攻撃は完全に止まっていた。


 警戒しているのだ。魔法槍士と補佐官が放つ威圧が普通ではないから。


 その中、ゆっくりと仲間の間を抜けていくのは飛狛だ。いつもと雰囲気や表情がまったく違う。


 柊稀と華朱以外は穏やかな彼しか知らないだけに、その豹変は驚くほどのものだったかもしれない。


「おいたは、ほどほどにしないとな!」


 なんの前触れもなく、一撃で琅悸の身体が吹き飛ばされた。


 一同が呆然とする中、飛狛の右手にはいつのまにか真っ黒な槍が握られており、静かに構える。


「お前も、ほどほどでやってやれよ」


「あと、あまりこちらへ被害を出さないでくださいね」


「めんどくせぇもんなぁ」


 態度も口調も表情も変わらない。けれど唯一違うのがあるとすれば、どちらもいつでも動けるようにしていることだ。


「気を付けるよ。まぁ、殺しはしないから」


 当たり前だ、と誰もが内心突っ込む中、飛狛と琅悸の壮絶な戦いは始まった。




 琅悸が仲間を傷つけていく。信じられないような戦いを見ながら、氷穂はなにがどうなっているのかわからなかった。


 ただわかっていることがあるのは、あのとき彼を手放してはいけなかったということ。


 自分の知らないなにかがあり、それが原因でこうなってしまった。


「ユフィ…教えて…」


 彼は間違いなく知っている。知っていて黙っているのだ。


「琅悸はなにを抱えているの……」


「……口止めされてんだよ」


 だから言えないと視線を逸らす。


「言いなさい!」


 珍しく怒鳴り声をあげれば、ユフィは困ったような表情を浮かべる。どうするべきか考えているようだ。


 言うべきだとわかっているが、彼が言いたくない理由も知っているだけに、判断に悩む。


「教えてやれよ。もう黙ってらんねぇだろ」


「同感ですね。彼を取り戻すなら、彼女の存在は大きいですよ」


 それとも殺しますか、と夜秋の視線がユフィを捉えている。


 琅悸に一番影響を与えるのは氷穂の存在。それは誰もがわかっていることで、ユフィも当然わかっていること。


 先程はまったく反応しなかったが、すべてを知った氷穂の声なら琅悸へ届くかもしれない。


「……わかったよ。言えばいいんだろ。琅悸は昔、殺し家業をやってたんだよ」


「えっ……」


 さらりと言われた言葉。どんなことでも受け入れる覚悟はしていたが、さすがに氷穂も信じられなかった。


 さらに信じられないようなことが、ユフィの口から語られる。


「……先代のフェンデの巫女が残した遺物。だからあいつは、氷穂の傍にいるために巫女護衛でいることに執着した」


「そんな……」


 あまりのことに氷穂は言葉を失う。それだけの過去が語られた。ずっと傍で見てきた、精霊によって――――。






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