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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
五部 氷鬼なる琅悸編
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氷鬼なる琅悸3

 剣で押さえ込まれている隙に、朱華と華朱が挟むように攻撃をする。


火竜爆竜破(かりゅうばくりゅうは)!」


竜牙崩焦(りゅうがほうしょう)!」


 横から突っ込んでいく朱華と、下から突き上げるように火柱をあげる華朱。造られた者だからだろうか、朱華と華朱は息がぴったりだった。


 二人も一瞬視線が合い、驚いたあとに不謹慎とわかりつつ笑みを浮かべる。


「不味い! 二人とも引け!」


 琅悸の動きから、ユフィがどのような攻撃を使うのかがわかり怒鳴った。微かな動きで彼が使う魔技がわるのは、この家系を見守り続けただけではなく、誰よりも彼の強さを知っているから。


「主殿!」


「朱華!」


 李蒼が華朱を庇い、柊稀が朱華を庇う。吹き飛ばされ人の姿を保てなくなった李蒼が、狼の姿で倒れた。


 それだけのダメージを負ったのだろう。


「李蒼! よくも!」


 知り合いだというから、面識はないが使わないようにしていた力。けれど大切な友人を傷つけられたら話は違う。


 華朱の瞳は金色に輝き、今までとは格段に違う魔力が放たれる。


 精霊眼の力が解き放たれ、魔技の威力もさらに跳ね上がった。剣の押し合いでは分が悪いが、素早さと技の威力でなんとかカバーする。


 李蒼の代わりに李黄が主をサポートするよう、華朱と共に戦う。というよりは、どうやら怒り狂っているようにも見える。


 李黄は、李蒼を一番という考えがあるため、傷つけられて怒り狂ってしまったのだろう。


 そこまでやっても、琅悸と対等に戦うことすらできない。朱華が加わるが、それでも状況は変わらなかった。


 実力だけの問題ではないのかもしれない。


(実戦慣れしている。傭兵家業のようなことをしていたのかもしれないな)


 意図的に戦い方を変えていたり、利き手を誤魔化していたり。実力を隠していたのは、その辺りに理由があるのかもしれない。


 戦い方を見ていた虚空は、冷静にそのようなことを考えていた。


(しかし、傭兵……)


 仮に傭兵のようなことをしていたなら、彼ほどの強さがあれば有名なはず。


 しかし、ベル・ロードの統治者としての立場があっても、そのような話は聞いたことがない。なら、一体どこで実戦を積んでいたのか。


 道場で剣術を教えるだけなら、実戦にはならないだろう。


 知っているとしたら、この精霊だと虚空は思う。ずっと傍にいたユフィは、すべてわかっているはずなのだ。


 なぜこうなってしまったのかも含めて。


(言わないだろうな)


 口止めされているのだろう。それは見ているだけでわかる。


(黒耀が必要だ。華朱なら呼べるか)


 冷静に状況を見れば、完全に動けないのは星霜と莱緋、瑚蝶の三人。陽霜も怪我が酷く、蒼翔の弓での援護は意味をなさない。


 女性陣では受け止めるのもやっとの攻撃。虚空と柊稀だけでは、彼を押さえることすらできないだろう。


 正直、ここまでの実力差があろうとは思わなかった。自分よりは強いとわかっていたが、全員でかかれば取り戻せると思ったことを悔いたほどだ。


「華朱、黒耀を呼べ!」


 後ろへ下がらせるよう前へ出れば、華朱がハッとしたように見る。


 背後を見て、戦えるのがどれだけなのか、彼の攻撃に対して対応できる状況を正確に把握すれば、華朱は後ろへ下がった。


「行かせません!」


 追うように虚空を吹き飛ばす琅悸へ、柏羅が割り込む。


「柏羅ちゃん!」


 さすがに華朱が慌てる。本来の姿を取り戻したとはいえ、彼女は華朱よりも腕が細い。琅悸の攻撃など、とてもじゃないが受け止めきれない。


 始祖竜だからといって、絶対ではないのだ。


「華朱お姉ちゃん、早く!」


 助けに行きそうになり、華朱はぐっと堪える。みんなが黒耀を待っているのだ。この状況を打破するために。


「黒欧!」


 魔法槍士である彼と連絡を取るため、すぐさま呼びかける華朱。


 乗りきるために黒耀の力が必要。彼が加わっても、乗りきれないかもしれない。


――主殿が必要なようですね――


 冷静な声が聞こえてきたとき、華朱はホッとした。応えてくれるとは言われていたが、自分は伴侶ではない。今はまだ、恋人という立場だ。本当に届くのかは気になっていたのだ。


「このままじゃ、皆殺しになってしまうわ」


 黒欧との会話をするために、自分を護るよう仲間が戦う。けれど、それも長くは続かないだろう。


 ここまで前線で頑張っている柊稀と虚空は、いつまでも耐えられるような状況ではない。いつ限界がきてもおかしくないのだ。


「強すぎるのよ、彼が……」


 あの状態だったことがあるから、華朱にはわかることがある。力が増幅するということだが、目の前にいる青年はそうではない。


 そうではないのに圧倒的な力を見せるのだ。


――最悪の事態が、現実になりましたか。すぐに向かいます――


「お願い」


 さすが魔法槍士だと思えた。仲間が敵になるという事態も推測していたなど。


 もちろん、華朱は加わったばかりで彼のことに詳しくなければ、彼がいなくなった理由もわからない。


(持ちこたえてみせる。黒耀が来るまで)


 剣を握り締めると、彼女は一気に攻め立てた。持ちこたえる時間はわずかでいいのだ。


 あの魔道生物の足を使えば、一瞬で移動することが可能なのだから。






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