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始まりの竜  作者: 朱漓 翼
五部 氷鬼なる琅悸編
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氷鬼なる琅悸2

 空気を唸る剣と冷ややかな目付き。容赦なく襲いかかる琅悸に、手を抜くことなどできない。


 全力で剣を交えるのは虚空だ。腕がよくても、今の琅悸を相手に華朱では力負けしてしまう。


 力で負けないため、直接刃を交えるのは男に限られる。力押しの戦いなら、虚空か星霜が適任だ。


 それでも分が悪いと二人は気付いている。力押しでどうにかなるような相手ではないのだ。


紫翠陣(しすいじん)!」


 少しでも動きを制限させようと蒼翔が神具を使い、矢を放つ。矢は四本に分裂し、琅悸の周りへ結界を張る。


「そんな! 神具でやったのに一撃!?」


 一振りで結界が破壊され、蒼翔が驚いたように声をあげた。


 神具は普通の弓ではない。簡単に破られるようなものではないはずなのだ。


「無理だよ! あの剣は魔を裂くの! 魔法は通じない!」


 一度琅悸と戦っている朱華は、彼の剣には詳しい。魔法が一切通じないことも、魔力が関わる物すべてを切れることも知っている。


「そんな!」


「つまり、隙をつかなければ魔法は役に立たないってことね」


 魔法専門の瑚蝶は悔しげに杖を握り締めた。


 どう見ても彼は隙など見せたりしない。それはつまり、なんの役にも立たないということ。この戦いを見ていることしかできないのだ。


 その中、莱緋が一人動き出す。


 普通の魔法は一切効かない。けれど、と思ったのだ。


(私のなら、もしかしたら……)


 莱緋が使うのは天使族特有の魔法であり、竜族のものとは異なる。その上、彼女は聖なる力と呼ばれるものも扱えた。


 精霊に愛された天使のみが使える特殊な力。普段は護るために使っていたが、攻撃としても強い力を発揮する。


「下がってください!」


 叫ぶや否や、真っ白な翼を広げ金色の魔法陣から強力な魔力が放たれた。


「天使族の聖なる力か! これなら、琅悸にも届くかもしれねぇ!」


 昔を知るからこそ、この剣が聖なる力を切れないかもとユフィは思えたのだ。


「ダメだ! 結界に阻まれてる!」


 受け止められたのを見て虚空が叫ぶ。


「叩き込めばいいんだろ!」


 魔法を得意とする陽霜が結界を破壊するよう、攻撃魔法を叩き込む。


「そうね。今なら結界に集中しているはず!」


 魔力での押し合いになれば、自分でも役立てるはず。


 負けじと瑚蝶が攻撃をすれば、三人の魔力が重なり大爆発を起こした。


 土煙で視界が奪われた瞬間、強力な雷が瑚蝶を直撃し、氷の刃は陽霜へ襲いかかる。


 瞬時に二つの力を放ったのかという驚きと、疲弊していない姿にどうしたらいいのかという悩みしか生まれない。


 隙が生まれれば、見逃してくれるほど甘い相手ではない。強い力の反動で崩れ落ちた莱緋へ、無数の風の刃が襲いかかる。


 同時に、誰よりも早く気付いた星霜が小さな身体を抱え込む。


「星霜様!」


「ぐっ…うっ…」


 切り刻まれつつなんとか踏みとどまるも、背後に迫る刃を避ける余裕はない。ならばどうするのか。答えはひとつしかない。


 抱えた莱緋の身体を突き飛ばすのと、脇腹に剣が突き刺さるのは同時だった。


「……っ」


「星霜!」


 なんとか声を堪えるが、剣を引き抜かれると同時に口から血を吐き、星霜の身体は地面へ倒れてしまう。


「星霜様!」


「バカ! 逃げろ!」


「キャッ!」


 近寄ろうとする莱緋を見るなり、琅悸は容赦なく翼を掴み地面へ叩きつける。先程の攻撃で、厄介な相手とに認識されたのだろう。


 掴まれた翼は嫌な音をたてて折れ、莱緋は激痛に呻く。


「九兎! 怪我人を護って!」


「はいですぅ!」


 このまま二人を攻撃に晒せば、本当に殺されてしまう。二人から引き剥がすよう華朱が斬りかかり、注意を自分へ向けさせた。


 圧倒的な力を見せつける琅悸に、柊稀は後ろで見ている少女へ攻撃するチャンスを狙う。


 彼女がなにかをしたなら、あの少女を倒すことで琅悸が元に戻るかもしれないと考えたのだ。


 術者を倒せば魔法が効力を失うように、琅悸に施されたなにかが解けるかもしれない。今はその可能性に賭けてみるしか道が見つからなかった。


 琅悸は華朱と斬り結び、少女から離れている。少女はあの位置から動く気配もない。不意を突けばどうにかなるだろう。どうにかするのだと思っている。


(狙うなら今だ!)


 蒼い炎をまとい、柊稀が少女へ向けて駆け出す。だが、彼の速さは尋常ではなかった。


 当たると思った瞬間、振り下ろされた剣はあっさりと琅悸に受け止められ、押し合いとなる。


 少女を護るように暗示でもかかっていたのかもしれない。考えるべきだったと柊稀は唇を噛みしめる。


「琅悸…」


 目の前で彼を見ても、呼び掛けても、凍りついたようで揺らぎすらしない。


 どうやら、華朱を戻したときのようにはいかないようだ。きっかけすら掴めそうになかった。






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