54.アントの集団
こちらを見つめる赤い光。
『こいつはアーミーアントだな』
「うわぁ。ちょっと嫌いかも」
『俺もだな』
カチカチと口のハサミを鳴らして威嚇しているようだ。
せっかくの休憩を邪魔してくれたな。
その時は何も思わずにアーミーアントの頭を落としたのであった。
後から後悔することになろうとはその時は思わなかった。
その日はゆっくりと休んだ。
次の日、目を覚ますと何やら周りがざわめいている気がする。
「なんか、変な感じだねぇ?」
ミリアも何か異変を感じ取ったようだ。
なんだから大きなものが蠢いているような。
『ミリア。一応戦える準備を』
「あぁふっ。はぁい」
欠伸をしながら準備をするミリア。
俺も警戒しながらだが、休めたから魔力は回復したしな。
戦いになっても問題は無い。
少し離れた岩場から黒い影が現れたと思ったら次々とアーミーアントが出てきた。こちらに向かってくる。
『そういう事か。仲間がやられたから復讐に来たのか?』
「うわぁ。数が多いね」
ミリアがそういう感想を抱くのも無理はない。この光景は胃からせり上がってくるものがあり、ちょっと気分が悪い。
あっ、胃は無かったわ。
『はぁ。朝の運動といきますか』
「おぉー!」
そう意気込んで戦い始めたのは良かったのだが、次々と迫り来るアーミーアントに精神的にも削られ始めた頃。
「ねぇ。もう見たくない!」
『同感だ。もう巣を攻めよう』
アイツらが湧いてでるところを突き止める。
その為にはこの大群を始末しないとなぁ。
なんかないかなぁ一気に吹き飛ばす方法。
魔力でって言ったってこの数は限界がすぐに来てしまう。何せ見渡す限りアーミーアントなのだ。どこから出てきているのかも分からない。
なんか持ってたような。
なんだっけ。
おっきい何かが。
あっ! 魔石!
『ミリア! 昨日の魔石とって!』
アーミーアントを捌きながらミリアに指示を出す。ミリアは急いで袋から取り出すと渡してくれた。
『これを使えば殲滅できる!』
「それどうするのぉ?」
『魔石ってのは限界まで魔力が溜まってるもんなんだよ。だから、こうして魔力をこめると』
ピシッと魔石にヒビが入りだした。
俺はなるべく遠くに投げた。
「投げていいの?」
『ミリア! 伏せろ!』
「えっ!?」
頭を下げさせて俺が盾になるようにミリアを包み込む。
チュドォォォォォォォォォォォンンンッッッ
凄まじい爆風に吹き飛ばされないようになんとか耐える。周りにはアーミーアントのバラバラになったものがそこら中に散らばっている。
吹き荒れていた爆風はやがて止み、砂埃も少しは晴れてきた。
アーミーアントは見事に大量にいなくなり、様子を見に穴から出てくるのを見つけた。
『あそこだ! ミリア行くぞ!』
「うん! 突撃ー!」
二人でアーミーアントの巣に突撃する。
中に入るとアーミーアントが通る分の穴しかないので倒すのはかなり楽であった。
何せあちらが大して攻撃ができないものだからこちらとしては楽なことこの上ない。
バッタバッタとなぎ倒していく。
時折横から出てきてしまうアーミーアントがいて焦ったが、ミリアが頭を殴り飛ばしていてそれを見た時は少し固まってしまった。
頭がねじ切れる位の威力で殴っていたものだから、俺は震え上がった。その拳怖すぎる。
中は分岐が多岐に渡っていたが、アーミーアントが出てきた所は倒してそのままにする事で通路を塞ぐ。
そうやって奥に奥に進んでいくと少し開けたところに出た。
そこには一際大きな羽をつけたクイーンアントがいた。
『サクッと倒すか』
そう思ったんだが、そう簡単にもいかないらしい。ゾロゾロと部屋の周りからアーミーアントが出てきた。
守るためのアーミーアントを周りに置いているって感じか?
俺は全身と太刀に魔力を込めて立ち向かう。
我流 刀術
『大車輪』
一番近いアーミーアントに肉薄し、周りにいた者を全て斬り裂く。
ドラゴニック流 太刀術
『竜牙一閃』
目の前にいる奴らは全て絶命させる。
まだまだいる。
ドラゴニック流 太刀術
『竜牙十閃』
縦と横の十字になるような斬撃を放つ。
かなりまとまった数吹き飛ばした。
もう少しで道が空く。
ドラゴニック流 太刀術
『竜牙米閃』
縦と横斜めの斬撃を立て続けに放つ。
もう目の前にはクイーンアントしかいない。
ドラゴニック流 太刀術
『火竜の咆哮』
火球の一撃を放つとクイーンアントは抵抗も何もせずに火球が迫り来るのを見ているだけであった。もしかしたら、アーミーアントがやられた時点でもう抵抗する気は無かったのかもしれない。
潔のいい最後で。
クイーンアントが寄りかかっていた壁諸共吹き飛ばした。
この巣はもう終わりだろう。
『ミリア大丈夫か?』
「なんとかねぇ。早く出たいね」
俺は壊した壁の先を見る。
光が見えた。
『この先に出口があるみたいだぞ?』
「ホント? 良かったぁ。引き返すの面倒だと思ってたんだぁ」
一緒に光に向かって歩みを進める。
光の向こうには草原が広がっていた。
遠くには街のようなものが見えている。
なんとか荒野地帯は抜けたみたいだな。
ということはどこ?
未開拓地隊を抜けた先って人住んでるんだ?
疑問を抱えながら街に向かってみるのであった。




