49.未開拓地帯モンスター襲来
今日はようやく出発する事にしたのだが、グンガさんに気に入られたミリアは教えを乞うた為に、結局一週間も入り浸ってしまったのであった。
「あぁー! 私も強くなれた気がするなぁ!」
『いや、実際かなり強くなったんじゃないか?』
俺がそういうのには訳があり、グンガさんと最後に戦った仕合の時の光景を思い出す。
グンガさんが繰り出した突きに対してなんとか躱したミリアが力任せのハイキックを放ったのだ。それをグンガさんがガードしたんだが。
その後、目を見張る光景が。
なんと、グンガさんの体は浮いたかと思うとそのまま数メートル吹き飛んだのだ。その時のグンガさんの顔が凄かった。
獰猛な笑みを浮かべて駆けてくる姿は俺にはトラウマになりそうだった。ミリアもまた好奇に満ちた眼差しで見つめていたのは驚いたものだ。
「そぉかなぁ? 私も戦ってみようかなぁ!」
『いやいや、俺が守るから大丈夫だ!』
この時の俺は少し意地になっていたのかもしれない。ミリアは俺が守ると誓ったから。
「でもさぁ、何個も流派を修めてるなんて凄いよねぇ。グンガさん」
『そうだな。ミリアに教えてくれたのってガルン流空手だったよな?』
「そうだね。私に合ってるって言ってた」
グンガさんが空手を教えると言い出した時は遠い昔を思い出して懐かしい感じと。なぜ空手を知っているのかという疑問が湧いてきた。
しかし、聞いたところによると世界を旅した中で知った流派らしくガルン流空手とは俺の知っている日本にある空手を異世界風にアレンジしたもののようであった。
見たことがある正拳突きや、回し蹴りなどの基礎的なところは勿論あった。それだけではなく、武器の受け流す形や対処法まで語り継がれているようであった。
ミリアは武器は使えないので、丁度いいという判断になったのかもしれない。
「モンスター相手に通用するかなぁ?」
『もしかしたらするかもしれない。けど、通用しないかもしれない。だから、危険な目に合わせたくないから俺に守らせてくれないか?』
その言葉には少しためらい「しょうがないなぁ」と言ってはにかんだ笑顔で許可をくれたのであった。
話している内にもう森林や湖は見えなくなっていた。
なんだか、岩場が多い地帯に入ったようだ。
グネグネと道を選んで行かないと進めなくなってきた。
これはあまり良くない状態だなと考えていたら、やはり良くないことが起きた。
岩場の上からは角を生やしたヘビの形をしたデビルスネーク。別の岩場の下場所からは大きなダチョウのようなダーチ。反対方向からは大きなハリネズミ風のニードルウス。
俺達は囲まれてしまった。
まずは岩場を背にしてミリアを壁際に寄せる。
左右からと上から狙われている。
デビルスネークが頭を出して様子を見に来た。
ドラゴニック流 太刀術
『昇龍』
下から上への切り上げを放つ。
すると、少しデビルスネークが怯んだ。
その隙に右と左を狙う。
右のダーチを突きで牽制すると嫌がって下がった。左のニードルマウスが行けると思ったのか、丸まって突っ込んできた。
針が長いが、リーチはこちらに分がある。
ドラゴニック流 太刀術
『突竜』
太刀を引き絞ると力の限り突き出す。
少し金属同士が擦れ合うような音がしたが、突き刺して絶命させる。
よしっ!
まずは一体!
してやられたと思ったのか、デビルスネークが下に跳躍して俺の目の前に現れた。
これは好都合だな。
着地したのを確認すると、縮地で迫る。
ドラゴニック流 太刀術
『竜牙』
下からの斬撃と上からの斬撃で挟み込み食うように斬る、
二つの斬撃が顎を閉じた。
「シャーーーー!」
デビルスネークは後ろに下がって逃げた。俺はすぐさま追う。
ドラゴニック流 太刀術
『竜牙一閃』
デビルスネークを真っ二つにする。
そこにダチョウに似たダーチが突撃してきた。
『ぐぅ!』
何とか太刀で抑える。
だが、ここで怯む訳にはいかないのだ。
ドラゴニック流 太刀術
『昇龍』
縦にガードしていた太刀で切り上げる。
切り裂いたが、浅かったようだ。
だが、少し距離が空いた。
それで十分だ。
ドラゴニック流 太刀術
『竜牙! 一閃!』
放たれた斬撃は長い首を真っ二つにした。
やはり、流派として確立されている太刀術は運用がスムーズに行くな。
我流とは大違いだ。
だが、折角の我流だから、そのうち使おう。
『けっこうスムーズに倒せた気がするが……』
「さっすがナイルー! 強いねぇ!」
ミリアに褒められると少し照れてしまうが、ここを出るのが先だな。
『ミリア! こっちだ! この囲まれた地帯からは出よう!』
「そうだね! 行っくよぉ!」
どこかのアニメの主人公のように勢いよく駆けていくミリア。
そういう所も可愛いんだが。
行き止まりの岩場を抜けると少し開けたところに出た。
そこには大人しいモンスター?がいた。
ラクダのように移動手段に昔使用されたとされる、デクダを発見した。
ゆっくり近づいて頭を撫でるとスリスリと寄ってくる。
『デクダが仲間になった!』
ゲームのようなアナウンスを自分で発してしまつた。これからの旅が楽になるなぁ。




