44.冒険者ギルドにて
アーノルド家の晩餐会を終えたあとは泊まらせてもらったんだ。昨日の一件で妙にミリアと親密になった。それが何よりも嬉しい。
今日はギルドカードの更新に冒険者ギルドに行こうと思う。
冒険者ギルドに行くと声をかけられた。
「あれ!? ミリアさん!? なんで!?」
近づいてきたのはアーサーさんだった。
ローブを着ているため身体でミリアを隠す。
『アーサーさん、まず落ち着いて』
そう言って身体で制すると質問攻めにあった。
やれ、なぜ生き返ったか? あれは身代わりか? 骨も嘘をついていたのか?
みんな適当な野次馬精神で聞いている。俺が生き返らせたと言ったら信じてくれるのか? おそらく半分は本気だが、半分は嘘だと思って聞くだろう。
そうしたら、もう話す意味は無いんだ。伝承みたいに、こういう事があったって後世に残せたら、それはいいかもしれないけど。
「すみませーん! 私、ナイルのおかげで、生き返りましたー! お騒がせしてごめんなさーい! 詳しい話はちょっと奇跡のような事なのであまり言いふらさない方がいいかと思ってまーす! もし聞きたい方は個別に話します! できればそうっとしておいて欲しいでーす!」
ミリアはそう周りに言って落ち着かせた。
すると不満気な表情を浮かべながらも、野次馬はバラけて行った。
ただ、アーサーさんは目をしかめながらこちらを見ている。
『アーサーさん、これはテイマー特有かもしれないですが。モンスターがレベル100になったとき、マスターが死んでいた場合生き返らせることが出来るようです。俺の場合もたまたまかもしれませんが、ミリアを生き返らせることができました』
「じゃあ、本当にミリアさんは生き返ったと言うんだね?」
『そうです。信じるかどうかはお任せします』
「そうなんだね。にわかには信じ難いが、ふむ。ナイルさんとミリアさんが嘘をつくメリットもないしな。僕は信じるよ」
ナイルに向かってそういうと少し体をずらしてミリアの前で直立に立ったかと思ったら頭を下げていた。
「生き返って本当に良かったです。僕の指揮下で命を落とす結果になってしまい申し訳なかった! 後からテイマーはテイムモンスターと一緒に居るのが一番いいんだと指摘されたんです。僕の知識不足でした!」
「いいんです! あの危機は去りましたし、私は生き返りました! 結果オーライです!」
笑顔で言い放つミリアを見ていたらアーサーさんも自然と笑顔になった。
このミリアの笑顔の力は凄いのだ。
「ありがとう。これからはどこに行くんだい?」
「んー?」
ミリアは首を傾げながら俺を見る。
『北に行こうと思います』
「また、北は未開拓地帯だろう?」
『はい。レベルがまた1からになったのでレベルを上げるにはいいかなって思ってます』
「なるほどね。あれ? もしかして、ミリアさんもレベル戻ったの?」
「いえ! 私はレベルはそのままだったんですけど、スキル関係は再度取り直しって感じです!」
「なるほどね。でも、こう言って気分を悪くしたら申し訳ないが、再度スキルを取得できる機会があるのは羨ましいな。今だから色々とやり方があったなぁってわかるんだよね」
アーサーさんは少し俯いてそう言った。
良い方向に考えればそうなのだ。
ミリアなんか無理やり取らされたりしたスキルがあったから。
「私も、いらないスキルいっぱいあったので、良かったんですよぉ! 魔法を撃てます!」
そう言って魔法を撃つ構えをとる。
ミリアは口で「ボンッ」とか言っている。
もしかしたら、天然で厨二病患者かもしれない。
『プッ!』
その姿が可愛らしくて、思わず念話なのに吹き出してしまった。
「あーーー! 笑ったなぁ! ナイルゥー!」
すると俺の体をポカポカと叩き出した。
傍から見たら痴話喧嘩みたいに見えたようで。
「はいはい。仲がいいのはわかったよ。引き止めてすまなかった。では、旅は気を付けてね」
「はい! 有難う御座います!」
『また帰ってきた時に』
二人でアーサーさんに手を振り別れるとカウンターに向かう。
「ギルドカードの更新をお願いします! あっ! あれ? ギルドカードってどうしたんだっけ!?」
『あぁ。俺が持ってたな』
ローブにある内ポケットに大事に入れていたのだった。生き返ったことが嬉しくてカードのことは頭から抜けていた。
内ポケットから出すと、ミリアが受付に渡した。そういえば、ミリアが死んでた間の討伐は換算されるのか? 竜も討伐した事になってるのかな?
『あのー、討伐記録どうなってますか?』
「……」
目を見開いて固まっている。
『あのー?』
「あっ! すみません! 討伐記録が凄まじいので気を失いそうでした。竜も倒されたんですね」
『記録されてて良かったです』
「持ち歩いていたからちゃんと記録してます。無駄にならなくて良かったです!」
『ってことは?』
表示されているウインドウがAに変わった。
「えぇー!? 私がAランクなんて信じられない! 信じられないよ!」
『討伐報酬とかありますか?』
「何体か引っ掛かってます。今計算するのでお待ちください」
少しすると、後ろから重たそうな袋を持ってきた。
「金貨521枚です。重いですよ?」
ドスッと置く。
『お、おう。どうせ……』
「ナイル持ってちょうだいね?」
『はい! では、行きましょう! お姫様!』
今度こそレベル上げの旅に出る。




