美容院のシャンプー
髪が伸びてくると
ぼくはいつも美容院に行く
美容師さんと会話したいのではない
人見知りのぼくにとって
コミュニケーションはむしろ課題だった
ぼくが美容院デビューを果たしたのは
大学生になった年の春のこと
それまでは1000円カットで安く済ませていたが
大学生になったぼくはモテたいという衝動に駆られていた
そんなぼくの期待に応えてくれるのが
そう、美容院である
病院と響きが似ているだとか
美容院は女の人が行くところだとか
くだらない偏見を抱いていたぼくは
高校とともに卒業していた
美容院の何が素晴らしいか
人見知りで飽き性のぼくが
美容院に通い続ける理由はただ一つ、シャンプーだった
気持ちいい、気持ちよすぎる
自分で頭を掻いたところで
そこにはなんの快感も生まれない
美容師さんが自分の髪に触れたときにはじめて
頭の外側にただならぬ快感を覚えるのだ
この快感はいったい何なのだろうか
シャンプーされる感触が気持ちいいのか
プロのテクニックに魅了されているのか
そうした可能性をよそに、ぼくは
美容師さんが自分の髪に触れている
その事実こそが快楽なのだとにらんでいる
荻野上風です。
美容院のシャンプー
Written by 荻野上風(Uhakaze Wogino)
・twitter https://twitter.com/Wogino_uhakaze
前作→【アンチ多様性】
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