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フットボールのギフト ~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~  作者: 相沢孝
第二章(再開)あすなろジュニアユース編

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U-15 その3

 挿絵(By みてみん)


 俺も自軍に戻っていくと、司がトコトコと近づいてきて、「よぉ、Dマットと何話してたんだよ」と司。


「ああ、後でブレ球の蹴り方教えてくれってさ」


 俺はそう言うと、自軍に戻っていったディクソン君を親指で指す。


「えっ、あのまぐれ当たり教えられんのかよ」と驚いた顔で司。


「し、失敬な狙って蹴ったから、アレ!!」と精いっぱいの反論をする。


「あっ、そう。だったら、この試合でもできるんだな」と意地悪な顔で司。


「いやー、それはどうでしょうー?」


 俺はそう言うと頭をポリポリと掻く。


「そういうの、まぐれってんだよ」


 司はそう言うと、ジトーッとした目で俺を見る。


 …………意地悪な上司め!!


「まあ、ともかく、サイドチェンジでDマットの裏ボンボン通して行くからさ、走り負けるなよ神児」


「ええー、そんなにボンボン蹴って来るの?」とうんざりした顔で俺。


「まぁ、そういうなって、せっかくのトップでプレーできるチャンスなんだから、ここでいいプレーしたらこの後もちょくちょく呼ばれるぞ」


 そういうと、監督の方をチラッと見る。


「じゃあ、いっちょうやりますか」


 そう言って伸びをする俺。


「あと、俺のマーク緩かったら、そっちからのパスもよろしくな」と司。

 

 と、その時、「よーし、じゃあ、集合」と大場さん。


 俺たちは大場さんを中心に集まっているU-15のメンバーの輪に加わる。


「……ともかく、右サイドのDマットのケア頼んだぞ、神児」と大場さん。


「はい!」


「プレスに行くときは沖田とお前、あと俺で囲い込むからうかつに縦に抜けられるなよ」


「たのんだぞ、神児」と沖田さん。


「わかりました」


「それからチャンスがあったら裏のスペース効果的に使っていけ」


「はい!」


「あとほかに何かあるか?」と大場さん。


 すると、司が、「あのー、チャンスがあったらどんどん中に入っていきますので」と。


「了解、監督から聞いている。片山、岩崎、司の空いたスペースのケア、よろしくな」

「ういっす」


「じゃあ、行くぞ、アイツらU-14の試合で俺たちがチンチンにしちまったから、ちょっとピリピリしてる。気を付けろよ」

「はい」



 そうして、府中武蔵野FCのキックオフで試合が始まった。


 府中武蔵野FCさん、最初は様子見でDFラインでパス回し。うちもあえてそんなにプレスに行かない。


 するとしびれを切らせたディクソン君はDFラインまで下がってボールを要求。なるほど足元にボールを欲しがるタイプなのかな?


「じゃあ、行くぞー」とわざわざご丁寧に予告までしてドリブルを始めた。


「神児、行ってこい」と大場さん。後ろを見ると沖田さんと大場さんでがっちり守ってくれている。


 ではお言葉に甘えて、デュエルいかせていただきます!!


 と、ディクソン君、いきなりのバックステップ。そして、足の裏でチョンチョンチョンとボールを転がす。


 なるほど、てっきり縦のドリブルでバチバチやるのかと思ったら、ボールの取り合いがご所望なんですね。


 上等だ。プロフットボーラー舐めんなよ!!


 俺は腰をグッと落として腰からボールに当たりに行く。


 すると、嫌な予感がしたのだろうか、すぐさま、CBにバックパスをする。なんだ、拍子抜けだな。オイ。


 途端に険しい顔になるDマット。どうやら俺のことを危険な敵であると認識してくれたらしい。


 鼻が利くな、お前。


 ならば、という事で、俺は少し下がり目にポジションを取り、ディクソン君を誘ってみる。


 ほら、前に、いいスペース空けてやったぞ。


 すると、足元にボールを要求したディクソン君は、そのスペース目掛けて一気にドリブルを始める。


「神児、来たぞ!!」大場さんの声が聞こえる。


 俺はディクソン君に並走するように体を寄せる。そして、ディクソン君の足元にボールが入る直前にボールを奪おうと試みるが一歩足りない。


 懐、深っ!!思わず口走る。


 前の世界でも何度かアフリカ系の選手とやり合ったことがあるのだが、とにかく手足が長いので、取れたと思った瞬間にスかされるのだ。


 前の経験がなかったら、バランスを崩してあっさりぶち抜かれていたところだ。


 俺はしつこく、体を寄せて体に手を掛ける。なに、このくらいならファールはもらわない。


 腕を引っかけながら、体を寄せスピードを緩めさせる。見ると沖田さん、大場さんもプレスの網を狭めてきた。


 沖田さんは行けると思ったのか、ボールに目掛け足を伸ばす。


「それダメ!!」


 それを待ち構えていたディクソン君、右足をニュっと伸ばしてボールに触ると、俺たち三人のプレスの隙間に体をねじ込む。


 しまった!!と思った次の瞬間、ディクソン君は一気に内に切れ込んでいく。


 俺はすぐさまスライディングをした。


 ピピピーッと主審の笛。


 やべー、イエロー出るか?と思ったけれど、ギリギリセーフ。


 どうにかつま先がボールに先に触れていたおかげで、注意だけで済んだ。


「ナイススライディング」と大場さん。


「お前、そんなこともできるのか」とちょっと驚いた沖田さん。


 どうやら俺のスライディングのことを言っているらしい。


 まぁ、前の世界ではそれで飯食ってましたから。俺。


 それでも、ゴール前30mでのフリーキック。正直言って嫌な場所だ。


 すると、ゴール前に、俺と一緒に前の試合に出ていた180センチのフォワードが。


 オイオイお前も出てくるのかよ。


 GKの怜哉君が壁の指示を出す。


 俺は片山さんと一緒に、相手のノッポのフォワードにマーク。やはり頭一つ飛び抜けている。高っけーなーおい。


 もっとも、実はチームの中では一番ではないが背の高い方の部類に入る俺は、チーム一の高身長の片山さんとペアを組んでこのノッポ君を押さえに掛かる。


 実はこういうの得意なんです。任せてください。


 ディクソン君がFKを蹴ると同時に、俺はそののっぽ君よりも早くジャンプをして肩に手を掛ける。すると俺に邪魔され思ったようにジャンプができないのっぽ君。


 やはりというか、ここにボールを放り込んできたディクソン君のフリーキックをクリアー。相手チームのコーナーキックになった。


「おまえ、上手いなー」と片山さん。


「あざーっす」と俺。


 攻撃よりも守備を褒められた方がうれしいと思ってしまうのは前の世界からの習慣なのかな?


 ともかく、まだまだ、相手ボール。


 気を引き締めて守備をこなさなくては。


 コーナーキックもどうにか凌ぐが、相変わらず、府中武蔵野のペースのまま試合が続く。


 俺たちの右サイドも、先ほどディクソン君1人に3人をぶち抜かれそうになって、ちょっと腰が引き気味になっている。


 すると、自軍でボールを奪取に成功した綾人君が単身でドリブルを開始して、ゴール手前30mのところからロングシュート!!

 

 キーパーにはじかれてしまったが、悪くないシュートだった。


 そして、「もっと積極的にボールを奪いに行けー」と声を上げる綾人君。


 確かに、ちょっと消極的になりすぎていたな。


 綾人君はそのままCKを蹴ると大場さんの惜しいヘディングのシュートがクロスバーの上を通過した。


 その後も翔太ドリブルや司のオーバーラップなど攻撃を仕掛けるがどうも単発で終わってしまう。


 もっとも理由は分かっている。


 右サイドに張っているディクソン君がいるせいで、司たちがボールを持っても、思い切って中に絞れず、うちのチームが数的優位を作れないからだ。


 先ほどの単独突破が俺たちの脳裏に焼き付いている。そして府中武蔵FC側にとっても、ディクソン君のいるサイドには1人いればあとは何とかしてくれるという意識があるのか、こちらサイドには人数を割くことなく中盤に人を配置している。

 

 やはり俺のいる右サイドからも積極的に攻撃を仕掛けなければならないか。


 俺はそう思うと覚悟を決める。


 俺は大場さんにボールが入ると、ディクソン君の裏にボールを要求しながらオーバーラップを掛ける。


 一瞬反応が遅れたディクソン君。裏を取ったと思ってドリブルを仕掛けた瞬間、あっという間に追いつかれた。


 速ぇー!!!、俺はなんとかボールを取られないよう体を入れつつ、なんとかディクソン君にボールをあててタッチに逃げる。


 やっかいだ。右サイドの沖田さんも大場さんも俺にボールが入っても、前に走らず、ディクソン君にボールを取られてもカウンターを食わらないようにその場にステイしている。

 

 これでは厚みのある攻撃なんかできやしない。

 とにかく1対1でディクソン君に勝たなくては…………ならば、しょうがない、奥の手を出すか。


 俺はそう思うと、ニヤリと笑った。

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