カタールW杯アジア最終予選 Ⅱ その4
日本のFK、オマーンゴールまで20mってとこか。蹴るのはもちろん司。
だが、角度がちょっと無さ過ぎる。
ゴール前に上がって来た真矢さんと富安君と何やら口元を隠してヒソヒソ話をする事おおよそ30秒……どうやら方針が決まったらしい。
ちなみに俺はセンターサークルの中からその様子を眺めている。真矢さんと富安君がゴール前に上がった代りだ。なんてったって俺だって元リバプールのCBなのだから。(あれっ、なんだか目から汗が……)
すると審判の笛が鳴り試合が再開する。
一度、二度、フェイクを入れてから司の右足から放たれたボールは鋭い弧を描きながらオマーンのゴールを襲う。
いったか!?
誰かに当たってコースが変わればそれでよし、当たらなくともそのままゴールインって寸法だ。
だが、残念ながらオマーンのキーパー、アルルカランが決死のダイビングで必死のクリア。あー、やっぱ、コースが厳しかったかー。
すると山なりに飛んできたボールの落下地点に入ったのは三苫君の小学生の頃からの幼馴染の田中君。一瞬も躊躇することなく、エイヤッと右足を振った。
オマーンゴール前18m、田中蒼衝撃のミドル炸裂!!
いったかー!!
だが、残念なことにボールは枠を捉えきれず宇宙開発。
思わず頭を抱える田中君。
そして同じようにセンターサークル内で頭を抱える俺。
今のボールは、もうちょっと、こう、体を被せて打てば、枠に入ったんだけどなー……と、自分のところに来るはずも無かったボールを見ながら俺。
ふと見ると、田中君の宇宙開発を見ていた三苫君が何か言いたげだ。
でも、まあ、三苫君だって、自分が作ったチャンスを幼馴染が外したのだからきっと笑って許してくれるだろう。
ですよね、上司!!
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その後もオマーンの右サイドを蹂躙しまくる三苫君。
すると、オマーンの監督も、こりゃ叶わんと言った感じで、後半の10分、右SBの14番の選手を下げて21番の選手を投入。
もしかして、コイツもめっちゃ脚速いとか!?
だが、替わりに入った21番の選手が右サイドに入るのかと思ったら、俺の対面する左のSBに納まった。
んっ……どういうこと?
と思っていると、チーム一の俊足の17番、アルプサディーが右サイド行く。
なるほど、チーム一の俊足の17番を三苫君に付けたのか。流石は経験豊富なブランコビッチ監督だ。冴えてるぅー。
ゲームが再開するとその直後、今度は日本の右サイドに稲妻が走った。
……ですよねー。
そりゃー、17番のお陰でどうにか今まで伊藤さんの攻撃を止めてたんだもの。
枷が外れりゃ、ウチの稲妻は相当なもんよ。
伊藤さんがあっという間にオマーンの左サイドをゴリゴリと抉る。
すると、こりゃたまらん、と言った感じで4番のアルハルデと21番のアルゲラニの二人がかりで伊藤さんを止めにかかる。
……ってことは、アレだ。久しぶりにどフリーになった俺がオマーンのPA内にスルスルと侵入すると、そこに待ってましたとばかりに伊藤さんからのマイナスのクロスが入った。
うほっ、いいボール。
オマーンゴール前18mのところから渾身のスカッド発射。
完璧に真芯を捉えたボールはボールパターンの残像を残したままオマーンゴールに突き進む。
ヨッシャ、イッターと思う間もなく、ボールはキーパーの腕をすり抜けそのまま胸に着弾すると、オマーン正GKアルルカランをゴールにぶち込んだ。(えーっと、そっちじゃ無いって……)
その一方で、アラルカランを吹き飛ばしたボールの方は盛大に枠を逸れ、無情にもゴール裏に飛んで行った……
千載一遇のチャンスを逃しオマーンゴール前でガックシと跪く俺。
もうちょっと、右か左にズレてくれればなー、ちきひょー……と思っていると目の前にスッと手が差し出された。
見上げるとそこには慈愛に満ちた笑みを浮かべる我らが上司。
ああ、こういう時にこそ、寄り添ってくれる友が何より必要なのだ。
まったく上司は頼りになるなーと差し出された手を握った瞬間「チッ、チッ、チッ、チッ」と笑みを浮かべたまま舌打ちが止まらない上司。
ヤダ、おっかない。そんなんだったら普通に怒鳴られた方がまだマシですよ。
「ったく、テメーは、何でここぞって時に決めきれねーかなー」と笑みを浮かべたまま毒を吐く司。
「はい、すみません。精進します。ごめんなさい」と俺。
「もうちょっと、右か左にズラすくらい出来るだろうが!!」と笑みを浮かべたまま器用に怒筋も浮かべる司。
「いや、多分、それすると、自分、枠から外れるんで(キリッ)」俺は正直に思ったことを話す。
「下手くそかっ!!」
……ぎゃふん。
2022 FIFAワールドカップ・アジア3次予選グループB 第六節 オマーン vs 日本の試合は後半の11分、鳴瀬神児が千載一遇のチャンスを決め切れず、スコアは0-0のまま進む。トホホ……




