(仮)対ブランドル戦 その3
2021年10月30日 (土) アンフィールド
♪ シーンジ ナールセ シーンジ HE’LL PASS THE BALL 40YERDS (奴は40ヤード(36.58)mのパスを通す)♪
♪ HE’S BIG AND HE’S F**KING HARD (奴はでっかく、クソみたいにタフな奴だ) シンジ ナールセ シーンジ……♪
アンフィールドのゴール裏から俺のチャントが聞こえて来る。
すると……「すっかりお前のチャントになっちまったなコレ」そう言って、司は手をかざし超満員のゴール裏を見上げる。
「まあ、これもいいけど、前のチャントも気に入ってんだけれどな」とKOP達の雄姿を見ながら俺は言う。
「『♪行けー、ナルセ シーンジ♪』って奴か?」とペットショップボーイズの『Go West』に乗せて司がおちゃらけて歌った。
「……よく覚えてたな、それ」
司がボケたことよりも、そんな昔の歌を覚えてくれていたことに対し驚きを隠せない俺。そう、それは嘗て、前の世界で俺が八王子SCに在籍してた時のチャントだった。
「まあ、俺だってスタッフでいたからな。八王子SCに……」そういって目を細める司。
そうか、あれからもう、13年か……思い起こしてみても本当にあっという間の出来事だった。
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リーグ戦現在2位のリバプールとそれを勝点6差で追う6位のブランドル。前節、首位のチェルシーを叩き飛ぶ鳥を落とす勢いのシーガルズ。※4
ここで勢いに飲まれまいと立ち向かう俺達リバプールSC。
試合前日の最終ミーティングでクラップ監督は言った。
「いつもどうりに我々のフットボールをやってブランドルに勝ち切る」と。
その瞬間、チーム内の動揺が走った。
何故ならブランドルが得意とする『疑似カウンター』にもっとも相性が悪いとされる戦術が俺達の得意とする『ゲーゲンプレス』だからだ。
自軍深くまで相手をおびき寄せ、食いついた瞬間に一気に盤面をひっくり返す『疑似カウンター』。
それは罠と分かりつつも、ブランドルの誘いに乗り、ボールを奪いきれなければすぐさま失点の危機に陥ることを意味していた。
「監督、それはあまりにも危険です」
思わず司は声を上げる。
「うんうんうん」とモーさんを始めとする主力メンバー達も司の意見に同調する。
だが……「なぁ、司、日本の古い諺には『虎穴に入らずんば虎子を得ず』という言葉があるよね。僕達は相手チームの戦術によってこれまで築き上げた『ゲーゲンプレス』という戦術を手放したりはしない。何故なら我々はリバプールだからだ」
クラップ監督の覚悟が見えた。
EPL 第10節 リバプールSC vs ブランドルSC、ブランドルのキックオフで試合は始まる。
そして今日のメンバーはこんな感じです。はい、ドンッ!
(対ブランドル戦 メンバー表)
CBはダンク師匠とマチャドさんのいつものメンツ。
両サイドバックは俺と司。
中盤はアンカーにミルトンさん、一列上にアンドーさんとサビーニョさん。
そしてトップはいつものメンツで右からサルーさん、ファビーニョさん、マネラさん。
今度のミッドウィークにアトランティスとのCLを控えているが、ほぼベストメンバーと言って過言ではないリバプール。
一方のブランドルも一週間前にチェルシーを撃破した時と同じ面子。
俺の対面する左サイドには三苫君にカクレジャ。
中盤の三枚はトロタークにマクウリにカイセラとベストメンバー。
こちらはCLもELも無い分、余裕を持った選手起用か。
ともかく、両軍とも現在持てる戦力を余すことなくつぎ込んだバッチバチの真剣勝負だ。
この後、W杯予選があるからって、手を抜いている余裕なんて無い。
司からは「くれぐれも郁に怪我だけはさせるなよ」と言われているが、そんなことを気にしてたら三苫君にチンチンにやられちまうぜ。
『今を戦えない者に、次や未来を語る資格はない』そう言ったのは、俺の敬愛するフットボーラー、イタリアの至宝、ロベルト・バッジョ。
ですよね、バッジョ様。
という訳で、キックオフ直後から俺の縄張りの右サイドではバッチバチのデュエルが繰り広げられることとなる。
すまんな、春樹。
※4、ブランドルの愛称で胸のエンブレムにも描かれているシーガル(かもめ)に由来します。




