小宮のグルメ その3
やはり、アスリートたるものベジファーストは欠かせません。
(前菜)
そんな感じで、キムチにナムルにチョレギサラダなんかを美味しくいただいておりましたら、来た来た来た来た、やって来ましたお肉ちゃん。
すると、「マジか……」と言葉を失う優斗。
「もう、これ、下駄じゃん」と同じく言葉を失う和馬君。
「これ、このまま食べれるの?」と困惑した顔で陽菜ちゃん。
「いや、流石にハサミかなんかで切るんじゃないの?」と口元を引きつらせて遥。
何はともあれ見てくれみんな、コレが大幸園の看板メニュー『特選タン(4切れ4200円※1)』だあぁぁぁぁぁああ!!
(特選タン写真)
デデーン!!
「こちら、焼き上がった後ハサミで食べやすい大きさに切られてもかまいませんし、そのままかぶりついても構いません」
「ちなみに他のお客さんは?」
「だいたい、他のお客様、最初はかぶりつきますね」
「ありがとう、お姉さん」
俺はそう言うと、その分厚く切られたタンとこれ以上ないくらい真剣に向き合いながら火入れをする。
サッカー以外でこんなに物事に真剣になったのは果たして何時以来だろう。
下駄のように切られた『特選タン』を周りのみんなもこれでもかと真剣な表情で火入れをする。
なぜならお姉さんから「『特選タン』は今日はこれで売り切れです」と宣言されちゃったからだ。
ええー、じゃあもう、失敗出来ないじゃないですかー。
『絶対に負けられない戦い』ではなく、『絶対に失敗できない牛タンがそこある!!』
到底焼肉を楽しんでいる雰囲気ではなく、ビルの谷間を綱渡りするかの如くの緊張感で皆、牛タンちゃんを焼くのであった。ちゃんちゃん。
――三分後、
(三分後の写真)
焼き上がった『特選タン』を目の前にして「どうする?どうする?」と右往左往する食いしん坊達。
ハサミで食べやすく切るのかい?
それとも分厚いタンをそのまま噛み千切るのかい?
さあ、どっちなんだい!!
「神児、行きまーす!!」
言うが早いが俺はお箸で牛タンちゃんをつまむとそのまま口の中に頬張りグッと噛んだ。
すると思いもかけず、ざっくりとした歯ごたえと共に口の中にタンのジュースがあふれ返った。
うーん、これで正解!!
「ほうほう、どれどれ」と司も俺と同じように前歯でガツっとこの分厚いタンを噛み千切るとそのままプルプルと感動で打ち震えている。
だろー!!だろー!!
男共は俺を真似て口の中に頬張り、女子達はハサミでチョキチョキ食べやすい大きさに切り分け銘々でこの『特選タン』を心の底から味わうのであった。
うーん、日本人に生まれてよかったー!!
いやー、欧州に渡って3年、あちらではついぞこういう焼肉屋さんは出会う事は無かった。しかもそれが八王子にあるって、地元サイコー!!
すると『特選タン』の感動を味わいつくす間もなく、今度は『特選ヒレ』!!
(特選ヒレの写真)
おやおや、これはこれは、美しいヒレ肉ちゃんじゃないですか。
僕、こういう美しいお肉ちゃんの焼き方知ってますよ。
コレ、焼いては休ませ、焼いては休ませしながらゆっくりと火入れするんですよね。
――五分後、
「どれどれ、一口、あーん」
丁寧に焼き上げたヒレ肉ちゃんを一口齧る。
途端に口の中でホロリとほぐれ、肉のジュースが口の中一杯に広がっていく。
ああ、幸せだ~。
あっちじゃ、なかなかこういうお肉ちゃんに出会えない。
ぼくはしあわせだなー。
すると、
「あんた、一人で楽しんでないでもっとみんなに話題降りなさいよ」とごもっともの遥様。
そうそう、この貴重な時間を使って銘々の近況報告をするんだった。
するとその時だった、
「はーい、上ハラミお待たせしましたー」とお姉さん。
……うーん、近況報告は、もうちょっと後でね。(ハート)
※1、こちらのお値段は2025年8月現在のお値段になっております。




