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死神博士と俺たちの200日戦争 緒戦 その3

「というわけで、チェルシーSC監督のトミー・トゥルエル監督のキャリアを紹介していきたいと思う」と満を持してと言った感じで話し出す司。いいんだぜ、もっと気楽に話してくれたって。それから、まだ口の周りにサルサ、ついてるからな。


 だが、司はそんな俺の思いなど気付かずに話し始める。


「トミー・トゥルエル、1973年、西ドイツ生まれ」


「あれっ、もしかしてクラップ監督よりも若かったりするのね?」と拓郎。


「おう、ご名答。クラップ監督は1967年生まれの現在54歳だが、トゥルエル監督は現在47歳、ちなみに明日誕生日だ」


「えーマジでー」と声を上げたのは俺。だってどう見ても40代には見えなかったんですもの。


「あれっ……ってことは、森監督よりもだいぶ若い?」と南君。


「だな」


「マジかー」と優斗。


「どう見てもクラップ監督と同じ年くらいに見えたのねー」と拓郎。


 やはり俺の目は間違ってない。


「ちなみに森監督はクラップ監督の一つ下な」と司。


「はへー、そう考えると、森監督若く見えるのねー」


「まっ、見た目はさておき、トゥルエル監督のキャリアをもう一度おさらいする」


「「ラジャー」」


「トミー・トゥルエル。ポジションはDF。地元のサッカークラブでユース生としてキャリアをスタートさせると、16歳の時、当時4部のアウスフトブルグに移籍。順調にキャリアを重ねるも2部のシュツットガルトがキャリアの最高で26歳の時、膝の怪我を理由に現役を引退」


 26歳、そして膝の怪我というワードが俺の心に棘の様に刺さる。


 そうか、この人は俺と同じような境遇に立たされたことがあるのか……


「引退直後から指導者を志し、アルバイトをしながら大学に通い、指導者の資格を取得。26歳の時にシュツットガルトU-15の監督に就任すると、育成年代では名を知られる指導者となる」


「ほほーう、引退後のキャリアとしては順調やな」


「2008年、マイルツU-19を優勝させたことにより、その手腕を買われ2009年8月、前監督のヨハン・アルデナス監督の解任によりトップチームの監督に引き揚げられる。これは実にリーグ開幕4日前の出来事だった」


「また随分と急な起用なのねー」


「36歳でトップの監督に就任したトゥルエルは2009-10シーズン9位、そして翌2010-11シーズン、シュツットガルトを過去最高の5位まで引き上げた」


「ほほーう、就任一年目から一桁順位でその翌年は過去最高か……普通に有能じゃねーか」と俺。


「その後、13位、13位、7位として、2014年5月、シーズン終了をもって退任」


「まあ、でも、アレだろ。シュツットガルトの予算的には出来すぎの結果やろ」


「まあな。そして1シーズン置いて、2015年6月、クラップ監督の後任として、ドルトムントの監督に就任」


「ああ、このあたりから俺も覚えてるよな。確かこの頃のドルトムントって……」と南君。


「ああ、クラップ監督が残したゲーゲンプレスから脱却し、4-3-3をベースに4-2-3-1、4-4-2、3バックなどさまざまなシステムを導入し『猫の目フォーメーション』なんて揶揄されたりもしたが、リーグ戦2位としっかりと結果も残している」


「普通に有能なのね」


「就任一年目は主力メンバーはどうにか引き留めれたが、2016-17シーズンにはフンメルト、ムヒタリオン、ギュドアンなんかの主力メンバーが軒並み引き抜かれて若手との大幅な入れ替えを強いられてるな。そんな中でも3位を確保し、ついでにDFBポカールでは優勝している」


「そうそう、ここら辺からいろんなサッカー雑誌なんかで取り上げられるようになったわ。僕も覚えとるで」


「そして、2018年5月、パリ・サンジェルマンSCの監督に就任」


「知ってる知ってる、フロントと軋轢をすぐ作るあのトゥルエルが、実力はあるがレイマールやムンバペなんかがいる問題児軍団のパリで1シーズン持つのか?なんて、いろんなサッカー雑誌で取り沙汰されてたよな」


「ああ、だが、そんなみんなの期待を裏切り、またもやトゥルエルはここでも結果を出す」


「「うんうん」」


「飴と鞭を使い分け、あの問題児軍団を見事手懐け、2018-19シーズンではリーグ1位を含む国内二冠、翌2019-20シーズンでは史上初のフランス国内四冠に加え、クラブ史上最高位となるCL準優勝の準五冠を達成。しかし、案の定というか、やっぱしというか、お気に入りのブラジル代表でもお馴染みのCB、チアゴさんの契約更新をレオナルドSD(Sports Director)が認めなかったことを知ると、烈火のごとく激怒して内紛勃発」


「そうそう、この当時、『サッカー界の歩く火薬庫』なんて揶揄するマスコミもいたよなー」


「まあ、トゥルエルが最優先と言ったチアゴとの契約を切ったレオナルドもレオナルドだけどなー」


「そうなのねー。あのあと、チアゴさん、チェルシーに移っても全然パフォーマンス落ちなくて今季もCBのファーストチョイスなのよねー」


「まあ、フツーに息が長いわな。たしか僕が中学の時ウイイレで遊んでた時、ミランで使ってたで」


「あれ、今何歳だっけ?」


「確か36歳、いや37だっけか……」


「「フツーにスゲー」」


「そして、その大好きなチアゴの後を追ってかどうかは知らんが、去年の12月にパリを解任されると、まるで当てつけの様に、その一か月後、チェルシーと契約。後はみんなも知ってるように、就任4カ月目にして、チェルシーSCを2度目のCL王者に導き、史上49人目のヨーロッパチャンピオンの指揮官となる」


「スッゲーなー」と俺。


「すごいよね」と南君。


「すごいのねー」と拓郎。


「すごいやん」と優斗。


「明日の試合、スタメンに起用された神児はもちろんだけど、優斗、お前もベンチ入りしてんだから、頼んだぞ」と司。


「もちろんやで、司君。この『浪速のガウショ』、クラップ監督のご期待に沿えるよう頑張らしてもらうわ」と優斗。


「いや、お前にはそういうの求めて無いから」と司。


「ははは、冗談やで、キッツいなー、司君も」と幾分顔をこわばらせて優斗。こういう時の司にジョークが通じないのは重々承知だ。


 と、その時、「デザートの桃のジェラードを持って来たのだー」とおにぎり。


「「「おおおっ!!」」」と称賛の声を上げる一同。


「大丈夫かね?」と司はため息をついた。



※1、レオナルドSD=スポーツディレクター(Sports Director)は、スポーツ組織やクラブの運営・強化を統括する責任者です。監督の選定、選手の獲得・放出、チーム編成、予算管理など、多岐にわたる業務を担当します。サッカークラブにおいては、特に重要な役職として知られています。ちなみにここのレオナルドさんって鹿島にいたレオナルドさんと同一人物。J歴代最高ゴールと言われている『レオナルドのアレ』の人。ジュニアユース時代の司がフリッパーズ戦で決めたアレね。(第60話参照)


 尚、トミー・トゥルエル監督のキャリアに関しては、wikipediaのトーマス・トゥヘル監督のページを参照にさせていただいております。

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