EPL 第1節 ノウリッジ戦 その3
後半が始まると、リバプールは予定通りにゲームのインテンシティーを下げて来た。
そうなると、必然とノウリッジがボールを持って攻め込む場面が増えて来る。
流石はCPの優勝チーム。
PLを世界最強リーグと言うと、各方面からの「ちょっと待った!」が掛かるのだが、こと、CPを世界最強の二部リーグと呼んでも誰からも文句を言われないくらい国内外からその実力が認められている。それがイングランド二部リーグのCPだ。
もしもCPの優勝チームがJリーグにやって来たら、あっさりと優勝を掻っ攫うだろうと言われている。
そのレベルのリーグを優勝してきたチームだ。ボールを持って攻めてくるとやはりそれなりに迫力はある。
攻撃パターンはサイドから崩して中央にセンターリングを入れる典型的なイングランドのフットボールを体現するノウリッジFC。
Jに比べて別段変わった戦術を取っている訳でも無いが、もしこのチームがJに来たら、純粋な高さと速さと強さで、あっさりJのチームを打ち破ることは容易に想像できる。
だが、その攻撃を受けるのが、世界最高レベルのGKであるアリソンさんと、世界トップのCBのダンク師匠とウチの鯱。そう簡単にはゴールを割らせやしないさ。
ゲームは意識的にノウリッジが攻めてリバプールが受けるという展開になっている。
もちろん守備をしているのはその3人だけという訳ではなく、ミルトンさんは精力的に動き回り中盤のスペースを消してくれるし、アンドーさんの効果的なマークでノウリッジの攻撃のスピードを遅らせる。
なるほど、受けに回っても世界レベルなのがうちの強みか。
まあ、今の内からクラップさんもいろんなシチュエーションを見たいのだろう。
だが、こういう状況になると、それまで全くかなわないと思っていたウチのレギュラー陣達の穴やら粗やらが色々と見えて来る。
まず、何と言っても、TAAのプレイスバックが遅い。SC東京だったら、司の雷が瞬時で落っこちて来そうなプレイがいくつも見えた。
それもまあ、TAAの持っている攻撃力を考えれば許容範囲なのだが、俺の目から見ても、「おい、今のプレー、もっと早く戻れたよな?」と言いたくなるプレイがちらほら……
その分、拓郎が前につり出され、ダンク師匠、司とスライドして凌いでいるのだが、これが上位チームだった場合を考えると果たしてどうなる事やら……
ちなみに早速だが、再来週の第3節ではホーム『アンフィールド』で去年のCLチャンピオンチームのチェルシーSCを迎え撃つのだ。
うーん……厳しいなー。
そうこうしているうちに、リバプールにボールが渡ると、切れ味鋭いカウンターがノウリッジに襲い掛かる。
相変わらず『新3フロント』はキレッキレです。
そうなってくると、互いに重心が後ろ足に掛かり、ゲームが膠着し始めるというのがフットボールの常。
なかなか、拓郎が前に出るような状況にならないなと……そんなことを思いながらピッチの脇でアップをしながら見ていたら、あっという間に後半の15分がやってきました。
もちろん、クラップ監督から呼ばれてテクニカルエリアに行くと、
「シンジ、お前の守備で、しっかりと右サイドを支配して来い」と。
「ウイッス!」と俺。
審判の持つ、交代ボードには『66番』OUT、『24番(俺の番号)』INと……
そうして俺は、このクラブに来て初めて、満員のサポーターの前でピッチに立ったのだ。




