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発動!Nシステム その3

副題を「カタールW杯アジア2次予選」から「Nシステム」に変更しました。

 すると、その時、少なからずの衝撃がピッチの上に走った。


 紅白戦のメンバーは主力組とサブ組に分かれて戦うのだが、なんとSAMURAI BLUEで長きにわたり左サイドバックを守っていた永友さんにビブスが渡されたのだ。


 その事に気が付いた見学席にいたお客さん達からもどよめきが沸き起こる。


 もっとも、当の永友さんは当たり前のように森監督からビブスを受け取っており、おそらく事前に何らかの話が合ったのだろう。


 そして当然の如く、主力組の左サイドに入ったのは司。


 周りの選手達も少なからず動揺している。


 それと言うのも、試合前の直近に行われるこの紅白戦。よほどのことが無い限り、この主力組がそのまま本番でのスタメンとなるのだ。


 つまりこれまでのことから考えると、今度のパラグアイ戦の左サイドバックのスタメンは司と言う事になる。


 ということは、この紅白戦で俺は司と対峙することになるのか。もっともその前に厄介な奴がいるのだが……


 SAMURAI BLUE 紅白戦 30分 2本勝負が始まった。


 メンバーはこんな感じだ。


挿絵(By みてみん)


 まあ、見れば分かるが俺の対面に翔太と司がいる。


 …………マジか。


 しょっぱなから地獄じゃねーか、これ。


 思わずコンビを組むであろう円藤さんの方に視線を向けると、既に顔が死んでいる。大丈夫ですか?


 一縷の望みを託し、もう一人のコンビの相手である伊藤さんの方を見ると、露骨に目を逸らしてきた。ふざけんなよ!!


 そんな感じでキックオフ。


 直後、「行っくよー、神児君!!」とリードが切れたワンコのように飛びかかって来る翔太。来んなよ……


 まぁ、コレは翔太と対戦する時のお約束で通過儀礼の様なものだ。


 俺はしっかりと腰を落として翔太のドリブルを待ち構える。


 まぁ、ボールは取れなくてもいい。最悪抜かれなければ、ゴール前はどうにか人数は足りている。


 すると翔太はボールを足に吸い付けながら、不規則なリズムでステップを切りながらやって来た。


 本当にいつ見ても惚れ惚れするようなドリブルだ。


 まったく読めないし、一瞬でも気が抜けない。


 同年代、しかも八王子と言う狭い地域で同じフットボーラーとして出会えたことを素直に神に感謝したい。


 そして、それと同じくらいに、DFとしてこんな化け物と子供の頃から戦わなくてはならなかった己の運の無さを恨みたい。


 あっという間に目の前に来た翔太はお約束のように、まずはいつもの挨拶代りのダブルタッチで俺の右サイド(ライン際)を抜きにかかる。


 俺はそうはさせじと、ライン際を締めに掛かるが、それと同じタイミングで俺の右足に体重が掛かった瞬間を狙って、翔太が中に切れ込んでくる。


 これは俺と翔太のいつものルーティーンだ。


 しかし、子供の頃から会う度ごとにそのキレと精度とスピードは着実に上がって来る。


 只の一度たりとも落ちたことはない。


 一体こいつはどこまで行くのか。正直、純粋な好奇心として興味がある。


 だが、だからと言って、ここで為す術無くやられちまったら、SAMURAI BLUEでの俺の居場所が無くなっちまう。


 俺はすぐにターンをして進行方向を翔太と同じ向きに替えて体を密着させて肩を入れる。


 どうだい、翔太。俺のDFも中々のもんだろ。


 伊達に毎日、三苫君と練習してないからな。


 あまりにあっさりやられちまったら、毎日居残り練習に付き合ってくれているチームメイトに申し訳が立たない。


 激しく肩と肩がぶつかる俺と翔太。


 どうやら、第一ラウンドは引き分けって感じかな。


 だが、ここで絶対に気を抜いてはならない。


 一瞬でも気を抜けば、その瞬間、八王子のサッカー小僧に間違いなく俺の喉笛に噛みついて来る。


 さあ、翔太、掛かって来いよ!!


 と思った次の瞬間……「翔太ー!!」


 と、翔太の背後にいる司からの劈くような怒鳴り声が響く。


 うっひょー、相変わらず通る声だな。これだけ離れてても耳がキンキンするわ。


 すると、翔太は渋々と言った感じで、クルっとターンをするとボールを司に戻した。


 おやおや、今日は随分と大人しいじゃないか。 


 まぁ試合開始早々あんましインテンシティーの高いプレーは心臓に悪い。


 おい司、ちゃんと翔太のリードは掴んどけよな。


 ってか、もしかしてコレって俺が命拾いした?

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