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フットボールのギフト ~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~  作者: 相沢孝
第八章 (再開)魂のJリーグ編(2ndシーズン)
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白い小さい闘牛士 その10

 そんな感じで、後半40分から試合は再開。


 本日の主役がピッチから去ってしまった感はするけど、もう一組の主役はちゃんといますからね。


 さあ、もっと私達をフィーチャーしたっていいんですよ!遠慮しないで!!


 すると、イエニスタという縦のラインで骨となる選手がいなくなってしまいボールを保持出来無くなってしまった神戸FC。


 その空いたスペースにスルスルとやって来たのは、ご存じ、偽サイドバックファルソラテラルの我らが上司。幸いにもマークに付いていたポドルフスキさんも、スタミナが切れてきたため既に脅威ではなくなってしまった。


 それでも、セットプレイの一発があるため、下げるに下げられない神戸。つらいところだね。


 もっとも、長井さんのマークにはイエニスタさんの代わりに入った俊足の郷田さんを付けて来た。


 なるほど、確かにDFではないが、CBの二人に比べて足は速いのでどうにか穴を塞ぐことは出来たみたいだ。


 しかし、優位性は東京が相変わらず上。


 そうなると、東京のアタッキングサードで試合は進む。


 一英、ディアスさん、長井さんの前線三枚に加え、そこに司が加わりカルテットを形成すると魅惑的な攻撃で神戸を攻め立てる。


 だが、神戸の選手達から、ここまで来たなら、何が何でも勝ち点一だけは捥ぎ取ってやるぞという断固たる覚悟を感じられる。


 FWのポドルフスキさんもDFラインに入り、何とか東京の攻撃を凌ぎ切る。


 時計は後半の45分を過ぎ、残りはアディショナルタイムの3分間を残すだけとなった。


 この3分間が終われば、俺達のリーグ戦での東京の試合は終わってしまう。


 ありがとう東京。


 さよなら東京。


 天皇杯はあるけれど、それはそれ、これはこれ。


 だからこそ、チームの為の置き土産として何が何でも勝ち点3を取っておきたいのだ。


 一英とのワンツーで右サイドを抉ると、ディアスさんに合わせてクロスを入れる。


 だが、スピードでは劣るが、高さは兼ね備えている神戸DF陣。


 ディアスさんにヘディングで競り勝つと大きくクリアする神戸DF。


 だが、ここに来ても足が止まらないケンティーがそのセカンドボールをしっかりと拾う。


 再び攻撃を作り直す東京。


 右がだめなら左でどうだという事で、今度は司と代りに入ったナンちゃんとのワンツーで左のポケットを取る司。


 だが、そこからだと、角度が無い分、司必殺のシュートコースが無い。


 司は左足でゴール前にクロスを入れるとそこに飛び込むのは長井さん。


 しかし、長井さんのシュートはジャストミートしきれず……だが、ケガの功名。


 浮いたボールは山なりとなって、ふんわりと神戸ゴールに向かって行く。


 するとそれが絶妙のフェイントとなり、完璧に逆を取られてしまった韓国代表GKのキム・カンジュさん。


 そのままゴールに吸い込まれるか……と思った瞬間、そこにCBのアーノルドが突っ込んで来てオーバーヘッドでクリアする。


「うおぉぉぉぉおおー」と敵味方関係なく盛り上がる観客達。


 ここに来てクライマックスを迎え、絶叫の坩堝とかした『キングアマラオスティディオンinチョーフ』。


 すると、そのこぼれ球が神戸のPA手前で待ち構えていた俺に向かって飛んで来た。


 うほっ、いいボール! 


 このままダイレクトで打っちまえ!!……と思うも、神戸のDF陣が俺に飛びかかるように突っ込んで来てコースを塞ぐ。ガッテム。


 ならばと、俺はあえてボールをワンバウンドさせてからの、シュートフェイントで一気に縦に抜ける。


 だが、神戸DFも分かっているもので、絶対に中には入れさせないと体を挺してコースを塞いでくる。


 俺は促されるままに、ボールを持って縦に抜ける。


 ようやく相手を振り切れたと思ったその時には、既にゴールラインの手前までやって来てた。


 シュートコースは皆無。


 ならば一か八か、誰でもいいから触ってくれと、ゴールライン上角度0の所から逆足の右足インステップで渾身のクロスを入れた。


 直後、俺はバランスを崩してスッテンコロリン。


 ボールの行き先はどうなった!!


 すると……「おおおおおー」と身を震わすような4万4千人の絶叫が聞こえた。


 みると、頭を抱えて跪くキーパーのキムさんと、神戸ゴールの中に収まっているボールが……


 そして審判が、笛を吹いてセンターサークルを指さした。


 得点が認められたのだ。


「うおぉぉぉぉおお」と、 俺は喜びを爆発させて、ゴール裏のサポーターの元に駆け寄る。


 俺は最後の置き土産として勝ち点3を手に入れることができたのだ。


 まだ試合は終わってないですけれど、『シャー』※6をやってもいいですよね!!


 だって、最後のリーグ戦ですもの。『シャー』しちゃいますよ!!


 俺はサポーター達に向かって腕をぐるぐる振り、『シャー』をしようとしたその時だった。


 見るとゴール裏のサポーター達は俺に向かって「違う、違う」と手を振って来た。


 んっ……それってどういうことですか?


 すると、サポーター達はゴール裏のさらに上にある巨大スクリーンを指さしている。


 なになに……と目を凝らしてみてみると、スーパースローで、俺の蹴ったセンターリングを神戸の選手がクリアするも、クロスバーにボールが当たり、その跳ね返りがGKのキムさんの後頭部に当たって、まるでピンボールのようにゴールに吸い込まれていく様子が映し出されていたのだ。


 えーっとこれって……オウンゴール?


 声は聞こえないけれど、俺の口の動きで何を言いたいのか分かったイケイケの皆さん。


 その誰もが生暖かい目でうんうんと頷いている。


 でも、それって、実質俺のゴールってことでいいですよね。


 もしかして、これが最後かも知れないので、せっかくここまで来たんだから、サポーターからのリクエストは無いけど、とりあえず『シャー』をすることにした。


 ……んっ?文句無いよね。


 俺は超満員のお客さんに向け腕をぐるぐる振り回すと、



 ぐるぐるぐるぐる『シャー』、


 ぐるぐるぐるぐる『シャー』、


 ぐるぐるぐるぐる『シャーーー』と、勝利の雄叫びを上げる。


 すると、流石に三回目あたりから、イケイケの皆さんもお情けで『うおぉぉぉぉぉ~』と掛け声をかけてくれた。優しいなー。涙がちょちょ切れますわ。


 俺はこの熱い想いをサポーターに届けとばかりに渾身の『シャー』を決める。(多分合計で7回くらい)


 そして、「来週の水曜日も来てくださいよー!!」と……


 一通り、ゴールセレブレーションを済ませてすっきりした気持ちでピッチに戻ると、審判さんまでもが優しい目をして俺を迎えてくれた。なんかどうもすみませんね。


 そして……「鳴瀬選手、遅延行為でイエローです」と言ってイエローカードを提示された後、二枚目のイエローという事で、立て続けにレッドカードも提示され、そのままベンチに帰らされた。



 昭和高田生命2018年度J1第20節、SC東京vs神戸FCの試合は後半の48分神戸FCのオウンゴールにより3-2でSC東京の勝利となった。



 その日の夜、司のお説教があったのは言うまでもない。




※6『シャー』、SC東京の試合後のお約束でその試合のMVP(イケイケの皆さんからのリクエスト)がゴール裏に行き、腕をぐるぐる回して、サポーターの掛け声に合わせて拳を突き上げるパフォーマンス。ノリノリでやってくれる選手もいるが、恥ずかしがってやらない選手もいる。もちろん私は、ノリノリでいつもやってますよ!!(サポーターに求められなくたってね!!)

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― 新着の感想 ―
いくら次の試合居ないとはいえ、退場するとは(笑) 有る意味【伝説の試合】だな(笑) 主演鳴瀬、助演イエニスタ?(´・ω・`)?
主審「警告はしてたからね?」
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