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フットボールのギフト ~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~  作者: 相沢孝
第八章 (再開)魂のJリーグ編(2ndシーズン)
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白い小さい闘牛士 その5

 控室では長谷川監督の話が続く。


 イエニスタには橋元選手がマンマークでつき仕事をさせるなという事と、ポドルフスキにボールが入ったら長井さんと司の二人で当たることを確認する。


 攻撃の方はDFラインからのロングボールを多用して、神戸の陣形を間延びさせるというのが長谷川監督の基本的な考え方。


 まあ、早い話、イエニスタさんにボールを触らせるなという事だ。


 たしかに、今季、神戸はそういう戦い方をされると脆かったはず。火力はあるがスピードは劣る大艦巨砲主義的な神戸に対しては最適解かと思われるのだが……相変わらず、俺の担当の古畑選手に関しては特に言及はされないまま打ち合わせは終わる。


 まあ、確かに、前半、活躍してたとは言い難いプレーだったんだけれど……なーんか存在感が無さ過ぎて逆に気味悪いんだよねー。


 かといって、監督に、「俺のサイドにいる古畑選手って、この後リーグ戦でメッチャ点取りまくるから今の内にしっかりとマーク付けておきましょう」……などと言えるわけもなく、司からも、「とりあえず、目を離すな」というお達しだけは頂いているのだが……


 すると、「なーんか、イエニスタさん、嫌な感じなんですよねー」と一英。


「そうか、なんか、30分過ぎあたりから空気になってなかったか?」と手厳しい森永さん。


「流石に、まだ来て早々だから他の選手との息があってないんじゃないの?」とは東野さん。


「まあ、確かに、途中から全然プレーに絡まなくなっちゃったけれど……」と一英。


 たしかに前半の30分過ぎからプレーに絡むことは殆どなく時折バルサの同僚だった『お散歩メッツ』※2の如くあたりをキョロキョロ見回しながら歩く始末。


 流石にボドルフスキさんは何か怒鳴ってたが、他の選手はイエニスタに何か言えるわけもなく……


 前半終了間際に東京が押し込めたのはそのせいでもあったんだけれどね。


「ともかく、引き続き、イエニスタには細心の注意をもって当たれ。ワンプレーで試合をひっくり返すことが出来るプレーヤーなんだから」と監督。


 そんな感じで後半戦の幕が開く。


 キックオフは東京から。


 スタジアムのお客さん達も、イエニスタの思ったようなプレーが見れなくなり盛り上がりも前半程ではなくなってしまった。


 それでも、4万人を超える観客の熱気というものは普段の試合とは一味違う。


 レッズさん相手だと似たような感じにまで近づくのだが、やはりここまで満員だと一味違う。監督からは「今日は二人共交代するつもりはないから」と言われているのでこのまましっかりと勝ち切りたいところだ。


 そんなことを思っていたら、イエニスタがプレスに来ないのをいいことにハッシーがそのまま持ち上がり、東野さんとのワンツーから、右サイドをフリーで駆け上がった一英にパスが通った。


 おっしゃー、行けー、一英、バルサのパイセンにちょっといいとこ見せて来い!!


 小刻みなステップから、神戸PA内に侵入する一英。


 ボールを奪いに来た左SBの橋倉さんを股抜き一発で抜き切ると、GKのキムさんと一対一。


「打てー、一英!!」と、俺の声とほぼ同時にニアサイドを打ち抜く一英。


 だが、僅かに力が入ってしまったのか、ボールジャスト一つ分、枠を逸れるとボールはそのままゴール裏に……悔しさのあまりその場で頭を抱えてへたり込む一英。


 そう言うとこやぞ、一英、いまいち一皮剥けきれないのは。


 お前の大好きなパイセンの司にそこら辺の事、もう少し教えてもらえ!!


 もう、あんまし、時間は無いんだから……


 今のプレーで点を決め切れなかったのは痛かったが、相変わらずペースは東京が握っている。


 前線から鬼軍曹よろしくポドルフスキさんが何か怒鳴っている。


 おそらく、DFの寄せが甘いとでも言っているのだろう。


 それに今のプレー、Wの古畑さんがディフェンスに戻ってもおかしくないのに、相変わらず東京のDFライン付近をフラフラしていた。


 どうやら、あそこからのカウンターを狙っていたらしい。


 攻めるのか、守るのか、カウンターなのか、ポゼッションなのか、相変わらずその意図が見えてこない神戸FC。


 できれば、今の内に1点でも多く取ってリードを広げておきたい所なのだが、あと一歩のところで決め切れない。


 こんな感じでチャンスを逃し続けていると、後で痛いしっぺ返しを食らうのはフットボールのお約束なのだから……



※2、『お散歩メッツ』=イエニスタの元同僚でバルセロナのレジェンド、神の子メッツ。その圧倒的な攻撃力とは裏腹に、守備時まったくゲームに参加せずお散歩をするかのようにてくてくと歩き始めることを揶揄していう。別にこれは守備をサボっている訳ではなく(ホントか?)相手の守備陣形を頭の中にインプットしてその弱点を炙り出す為と言われている。(ホントか?二度目)

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― 新着の感想 ―
イニエスタクラスになると、油断とも言えないほんの少しの隙をすり抜けて点を取りに行けるのが恐ろしい
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