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フットボールのギフト ~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~  作者: 相沢孝
第2・5章 涙のダイエット(ロードバイク)編
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ハンバーグ隊長 ジョージ

挿絵(By みてみん)


「この前さ、ハンバーグの友達がサッカーの試合で負けたんだよ。


 ものすごく落ち込んでさー、かける言葉も無かったんだ。


 いや、かけてやりなよデミグラス! ハンバーグ!!」


 司のハンバーグ隊長が止まらない。

 

 『炭焼ハンバーグ&ステーキのジョージ』※1に向かう車の中、ここぞとばかりに忘年会での鉄板ネタ、ハンバーグ隊長をぶちこんでくる司。


 でも、スピードワゴンの井戸田のハンバーグ師匠って、世に出るのはもうすこし後だぞ。


 司のパパとママの戸惑った顔がちょっと切ない。


 ――二時間前、


 軽めのサイクリングから帰った後、司の家のリビングでおしゃれおやつタイムになった。


「きゃー、苺のタルト、ちょーきれー」遥が目をキラキラさせながら声を上げる。


 

 テラテラと美しく光る表面に、きれいに並べられた苺。ところどころにラズベリーやブルーベリーが紛れているのもそれもまたよし。


 その出来栄えたるや、タルトの殿堂、あの『キルフェボン』※2のグランメゾン銀座店のスペシャリテ、ミックスベリーのタルトを彷彿とさせる。

 

 お母さん、ホームメードのケーキとして、家のおやつに出していいレベルじゃありませんよ。今すぐにデパ地下のショーケースに並ばせなくちゃ。


 すると司のお母さんが慣れた手つきでタルトを切り分ける。フルーツの下にはカスタードクリーム。そしてその上にバニラのアイスクリームを乗せる。完璧じゃないですか。

 

 さっくりホロホロと口の中で優しくほぐれるタルトと、甘酸っぱい苺のジャムが絶妙のハーモニーを奏でる。


 そこに挽きたて入れたてのコーヒーを合わせると、得も言われぬ濃厚なフレーバーが口の中でマリアージュ。


 おおよそ初めての経験に戸惑う俺達。


「お母さん、このタルトって……」俺はお母さんに尋ねる。


「あらやだ、神児君、気が付いた?」とチャーミングな笑顔。


「明らかに普通のタルトとは違うフレーバーですよねこれ……」


 遥も司もうんうんと頷く。


「だからあなた達に料理を作るのがやめられないのよ。作り甲斐あるわー」とお母さま。あざーっす。


「フルーツもめっちゃおいしいけれど、このタルトの香り、普通じゃないわよね」と遥。


「コーヒーとの組み合わせがたまんないよ」と司。


「実はこのタルトには発酵バターを使っているの」


「ほほーう、発酵バターですか」と俺。


 発酵バターとはその原料となるクリームを乳酸菌によって半日以上発酵させて作られるバターで、発酵という一手間を加える事によって、コクが深まり、特有の風味が増すのが特徴なのだ。


 そのままパンに塗るのはもちろん、お菓子に入れるもよし。


  特に焼き菓子がオススメだ!


「ええ、フランスから輸入したエシレっていうメーカーのバターを使ったのよ」とお母さま。


「ちなみにおいくらくらいなんですか?」と遥。


「250gで3600円だったかしら?」


「おおっと、普通のバターの10倍くらいしますね」と俺。


「そんなに高い原料使ってるの?」とパパ。


「実は、年末にクリスマスケーキの授業して、材料がちょっとあまっちゃってね」と恥ずかしそうにテレテレ。


 いえいえ、お母さま、グッドジョブでございます。


 自転車で疲れた体に、濃厚なバターの香りとフレッシュな苺の香りが染み渡る。こりゃ、正月早々旨いものが食べれたわ。


「ああ、おうち用にお土産も作っておいたから、後で持って帰ってね」と。


 すみません。何から何まで。


 そうして、午後の優雅なひと時を過ごし、俺たちはパパの秘密基地で地図を広げて今度のサイクリングの予定を立てる。


「江の島まで出れると、そのまま箱根方面でも鎌倉方面でもどっちでも行けるからねー」とパパ。


「えー、鎌倉とか箱根ですか?すごい楽しそう。私も連れてってもらってもいいですか?」と遥。


「もちろんさ」とパパ。


「あー、でも、それって、湘南や埼玉のJリーグの試合も見れちゃうんですよね」


「そうだね、シーズン始まったら行くか?」


「行く、行く、行く!」楽しみがどんどん広がっていく。


 そうこうしているうちに、あっという間に時間が過ぎていった。

 

 すると、お腹がグーっとなった。


 大変だ。


 腹が……減った。



--------------------⚽⚽⚽--------------------



「どうした、どうした、そんな付け合わせのフライドポテトでも見るような顔しやがって、続いては200gの鉄板ジョークだ。


 バンバーグこの前、サッカーの試合に出たんだ。


 そしたらハンバーグ、今までゴールキーパしかしたことが無かったのに、いきなりボランチで出場しろって言われたんだ。


 俺は監督に言ったんだよ。


 中盤なんかやったことないからできませんって。


 そしたら監督が俺にこう言ったんだ。


 大丈夫だハンバーグ。


 中盤のポジションってのはツナギが大切なんだよ。


 ハンバーグなだけにね…………ハンバーグ!!


 それではいくぞ、7,8,9、じゅじゅー!!


 ハンバーグ!! 」



 車内はスベっているのかウケているのかわからない微妙な空気。

 

 まあ、本家もだいたいこんな感じだもんな。


 そんな感じで、俺が勝手に八王子のソウルフードと呼んでいる、『炭焼ハンバーグ&ステーキ ジョージ』に着いた。


 40年以上の昔から八王子市民のワンパクなお腹を満たしてくれるハンバーグとステーキのお店だ。


 カランコロンカラーンとドアベルを鳴らして店内に入ると、まだ6時前だというのに店内は8割がた埋まっている。


 みんなここのお店のハンバーグが待ちきれなかったのだ。床がちょっとヌルヌルしてるのもそれもまたよし。


 俺も司もそしてもちろん遥もみんなここのハンバーグが大好物。


 みんながきゃっきゃと浮かれながらメニューを見る。


「俺、特選牛ハンバーグとサイコロステーキのセット、100gアップで、あとご飯大盛」と司。


「すいません、僕も同じでお願いします」と俺。


「じゃあ、私は特選牛ハンバーグとエビフライのセットで」と遥。


 おや、遥さん、ハンバーグのグラムアップもご飯大盛もしないのですか?


「じゃあ私はハンバーグとサーモンのステーキのセットで」と司のママ。


「僕はハンバーグとカキフライのセットにしようかな」とパパ。


「ソースはいかがなされますか?」とウエイトレスさん。


「俺、和風おろし」と司。


「あ、俺も」俺。


「私はデミグラス」とママ。


「私はイタリアントマト」と遥。


「私は納豆ソース」とパパ。


 おや、お父さんチャレンジャーですね。


 昔から気になってたんですが、チャレンジする機会が無かったんですよ。それ。


 セットのスープやサラダを食べながらおしゃべりに花が咲く。


 やっぱ、お肉を待っている時間ってテンション上がるよね。


 あちこちのテーブルでハンバーグがジューっと音を立てている。うん、いい音だ。


 すると、熱々の鉄板に乗っかったハンバーグが次々とやって来た。


「来た来た来た来た、ハンバーグ!!」と司。


「だから、なんなのよ、そのハンバーグ隊長って」とやっとツッコミが入る遥。


 すると、ウエイトレスさん、


「こちらのハンバーグ、ステーキでも食べれるお肉を使ってますのでレアでも食べられます。焼き加減はいかがなさいますか?」と。


「ミディアムレア」

「ミディアムレア」

「ミディアムレア」

「ミディアムレア」

「私はレアで」とパパ。


 すると店員さんが手際よくハンバーグを二つに切って、熱々の鉄板で仕上げていく。


「ソースはおかけしますか?」とウエイトレスさん。


「お願いします」

「お願いします」

「お願いします」

「ハンバーグ」

「あ、大丈夫です」とパパ。


 おや?なんか一人変なのが混ざっているぞ。


「では、ソースが跳ねるので紙ナプキンでお防ぎください」と共に、熱々の鉄板の上にソースをかける。


 ジュジュジューと食欲をそそる魅惑的なBGMが店内に広がる。


「おにっくー、おにっくー」と遥さんがナイフとフォークを手に持ってなんか踊っている。やめなさいよ、はしたない。


「可愛いなー、遥ちゃんは」とパパ。


「私も、もう一人女の子欲しかったのよねー」とママ。


「いっそ、うちの子にならないか?」とパパ。


「うーん、考えときます。おじさん」と遥は照れる。


 大丈夫ですよ、おじさん。後10年もしないうちに、遥、おじさんの娘になりますから。


 俺はそんなことを思いながら、熱々のハンバーグを食べる。ハンバーグ!!


 ウマイ、ウマイ、ウマイ。牛肉の魅惑的な香りが口いっぱいに広がっていく。


 ああ、これはトリプトファンとかいう幸せホルモンのおかげかな。

 

 白米とのマリアージュがたまりません。


 すると、独自のオーダーをしていたおじさんが、ソースをかけずにお肉に塩コショウを振って食べている。


「それ、美味しいんですか?」と興味津々の俺。


「ちょっと食べてみる?」とおじさんが一切れくれる。


 じゃあ、こっちもお返しでどうぞ。


 俺はそのソースもかけない塩コショウだけで味付けしたハンバーグを食べてみる。ハンバーグ!!!


「あっ、おいしい、これ!!」と俺。


「だろー、おじさんこの前、この食べ方見つけてさ、それ以来こればっか」


「じゃあ、納豆ソースは?」


「ああ、これ、頼んだことないからちょっと興味本位で」


「すみません、少しもらえませんか?それ」と俺は納豆ソースを指さす。


「いいぞ、はい」とおじさん。


 俺はおそるおそる、お肉に納豆ソースを付けて食べてみる。


 もっとも、見た目は納豆ソースと言われなければわからない見た目だ。


 刻んだ納豆やら玉ねぎをマヨネーズベースのソースで混ぜているサラサラのソース。


 味付けはしょう油とマヨネーズかな。そんな感じで食べてみると、おやおや、これ、ありですね。


 コクのあるマヨネーズしょう油のオニオンソース。で納豆の香りとコクがあとからやって来る。


 これは隠れた名物でした。次からこれ頼もうかな。


 すると、


「じゃあ、俺もちょっと」と司。


「じゃあ、いいですか」と遥。


「だったら私も」とママ。


 いつの間にか、みんなでそれぞれのソースを回し始める。これはこれでああ楽しい。


 俺は、和風おろし、デミグラス、納豆ソース、そして塩コショウと特選牛ハンバーグを堪能する。ああ、美味しい。


 270gのハンバーグと100gのサイコロステーキがあっという間に胃袋の中に入った。


 ああ、しあわせ、正月の元旦からごちそうしか食べてない。


 司じゃないけど、俺も体重大丈夫か?


 しかし、そんな心配をしつつも、その後もしっかりデザートとアイス、そして仕上げにコーヒーを堪能した。


 あー、いいお正月だ。幸せです。どうもありがとうございます。


 さすがに司の家に入りびたりで家に帰ったら、母さんから小言を言われたけれど、お土産の司の母ちゃんが作った苺のタルトを差し出したら、「キャー素敵」とイチコロだった。


 ハンバーグ!!




※1、『炭焼ハンバーグ&ステーキのジョージ』=八王子市民のみならず、お隣の日野市、昭島市、立川市の食いしん坊さん達のお腹を満足させているお店。国道16号線沿いの八王子のお山の上。北島のさぶちゃんちの近所と覚えておいてくれれば大丈夫。(何が!?)〒192-0042 東京都八王子市中野山王2丁目8−9


※2、『キルフェボン』=タルトの殿堂。『キルフェボン』とグーグルで画像検索するとそこはもう桃源郷。一度は行きたいスイーツのシャングリラ。とりあえず一回ここのHP見た方がいいっすよ。(アドレス載せたいけどいろいろ規定がありそうなのでゴメンね)〒104-0061

東京都中央区銀座2-5-4 

ファサード銀座1F(テイクアウトスペース/地下1Fカフェスペース

サッカー小説のはずなのですが、今のところ、このお話が今いちばんいいねをもらっております。

というわけで、炭焼ハンバーグ&ステーキ ジョージの紹介です。

食べログ等にもいろいろ掲載されているのですが、このページが一番詳しく載っているかな?

https://8dabe.com/2018/12/27/george/

お近くにお立ち寄りの際は是非どうぞ。

中央高速八王子インターから車で5分程です。

個人的にはランチで1500円前後で食べれちゃうのがおすすめです。

あと、デザートの盛り合わせがコスパいいので是非一緒に注文してください。

ちなみにこちらに出ている料理やお店は全て実在するものです。

いろいろ参考にしてください。

そうそう、キルフェボンのタルトがこちら↓

https://www.quil-fait-bon.com/menu/?tsp=1

5/29ランチで炭焼ハンバーグジョージに行ってきました。

https://twitter.com/footballnogift/status/1530800651290042374?s=20&t=jibpblBV-BlCAp2tv7Zyfw


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>>「ミディアムレア」 「ミディアムレア」 「ミディアムレア」 「ミディアムレア」 「私はレアで」 司父の一人称は店員向けに「私」と言ってるだけ? ミスか分からないので感想に
[気になる点] 自転車の話いつまで続くんだって目次を見たら絶望した。
[一言] サッカー小説だけどサイクリングと料理の話が一番面白いかもしれない
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