AFC U-23選手権2016決勝戦 後半 その5
尚もガオォォォーと今度は日本ベンチに向かって吠える朝野さん。
なるほど、なぜ、サンアローじゃなくて複数形のアローズだったのか今分かりました。
さては朝野さん、最初から複数点を取るつもりだったのですね。
そしてサンアローズの名前の由来は三本の矢。もしかしてハットトリック狙っちゃってますか?
その一方で完璧に心が折れてしまった韓国代表。
そりゃ、2-0から15分そこそこで3点取られちゃ心も折れるってもんだ。
そして未だに交代のカードを1枚残しているキム監督。
もしもし、もしかして延長戦とか視野に入れちゃってます?
じゃあ、その前にうち、もう1点くらい取っちゃいますね。
そうして試合再開後に嵩に掛かったように再び韓国に襲い掛かるU-23日本代表。もう手心とかそういうの一切ありませんから。取れるうちに取れるだけ取る。これ、勝負の基本。
しかしそうなると逆に変な力が入ってしまい、決定的なチャンスを何度も迎えるもなかなか点に結びつかない。
サッカーって難しいなー……と思ったらGKのキム選手からファン・ソンミン君に縦一本が入る。アレレレレー。
直後、健斗が寄せる間もなくペナルティーエリア外からドッカーンとキャノンシュート。
やべえ、やられた!!と思ったら、またまた魂のセービングの久慈引さん!!
今日何回助けられたのだろうこの人に。
それにしても、やっぱおっかないわこのチーム。
久慈引さんのファインセーブが無かったら、この試合どう転んでたか全くわかったもんじゃない。
すると司もそれを機敏に察したのか、本来の5バックにそそくさと戻る俺達。
だが、もう再び、韓国は前半のようなあの魅惑的なフットボールは出来なくなってしまっていた。
その後はシュートに持ち込まれることもなく、淡々と試合が進むと……すでに時計は後半の48分。
日本も韓国のこの長引く連戦のおかげで既に完璧に足が止まってしまっていた。
そう、俺以外を除いてな。
もしかして、これって、絶好のチャンスかもしれない。
俺は周りの様子を伺いながらスルスルと右サイドを上がっていくと、それに気が付いた司から矢のようなサイドチェンジが飛んできた。
そして相変わらずドンピシャで俺の右足に収まるという……本当にそのパスの精度には恐れ入る。
既に韓国の選手達は俺のアンダーラップについては来れない。
そしてそのまま、韓国のペナルティーエリア内に侵入すると、お得意の右斜め45度の角度から、今日の試合を締めくくるべく渾身のスカッドを叩き込んだ。ガオー。
直後、思いのほかアウトに掛かったシュートは思いっきし枠を外れると、バッカーンと遅れてやってきた韓国DFのテンプルにぶち当たってバタリと倒れた。
……………………水を打ったように静まり返るドーハ アブドゥッラー・ビン・ハリーファ・スタジアム。
直後、試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くも、オフィシャルの人達はそれどころじゃないといった感じで担架をもってせわしなくピッチに走り込んで来た。
優勝の瞬間を噛みしめるはずが、とてもそんな空気ではなく、ざわざわと落ち着かない両チームの選手と観客とスタッフの皆さん。
えーっと、えーっと、えーっとー……
すると、「お前最後にそれはないだろ」とドン引きの様子の司。
「いやー、点が取れないからって最後にアレはないわ神児君」とベンチからやって来たビブスを着ている優斗。
わざとじゃない、わざとじゃない、わざとじゃないって。
そして日本の選手の誰もが、優勝した喜びを表すこともなく心配そうに倒れたまんまの韓国の選手の様子を伺っている。
もしもし、大丈夫ですか?
何やらドクターの人達が心配そうに韓国の選手に話しかけているところを見ると、どうやら意識はあるみたいだ。
ほー、やれやれ。
そしてなんか、韓国のキャプテンが俺のことを指さしてなんだかめっちゃ怒ってる。
そんなわざとじゃないですよ。ほんとです。信じてください。
だってほら、わざとだったら、もっと前半の途中でやってますから……はい。
そんな感じでAFC U-23選手権2016は日本の優勝で幕を閉じたのだった。
はい、いろいろと反省してます。




