『ようやく砂漠を抜けました』
砂漠終わりの街、プーニュツァ街。
見た目はミョタッシ街を反転させたような感じだが、壁の端に船着き場があるのは妙な感じだった。
「よしよしよし、もう歩けるよー」
船から下ろされたルシーとゼウイを撫で回すターリャ。
この2頭の装備を変えないとな。
ここから先はもう砂漠はない。ひたすらの岩場が続く。
それぞれ手綱を引きながら歩く。
「船を降りたらすぐに街だと思ったのに」
「船員達によると、あの渦は削り取る力が強い。だからこの岩盤地帯を盾にして、その奥に街を作ってるんだと」
「へぇー。ん?あの街は?」
「あの街、実は半分浮いているから関係ない」
「浮いてたんだ」
それを知ったのは船に乗って、見納めと街の方向を向いたときに判明した。
渦巻いている場所と港らしき場所の間が微妙に隙間が空いていた。
それをなんとなしに呟いたら、近くに居た顔見知り(宿での飲み常連で名前不明)に教えてもらったんだ。
なんでも、元々渦を利用する為に港を改築したから、長持ちするように渦に接する部分を浮かしているらしい。
どうやって浮かせてるんだか。
そうこうしている内にプーニュツァ街に着き、馬達の砂漠用装備を売った。
「もう砂漠は無いの?」
「砂漠はないが、次は岩の砂漠が続くぞ」
「岩の砂漠なんてあるんだ」
「あるある。しかも蛇が多いから大変だぞ」
「うええ」
「だが、その前に馬達の整備だな。蹄を手入れしないと」
そうと決まれば馬屋へ直行。
そこで爪切り屋を教えてもらい、蹄鉄を付け替えてもらう。
ゴリンと伸びた爪がノコみたいな道具で削られる。
「おおー……」
ゾリンゾリンと豪快に、そして繊細にルシーの蹄が削られていく。
それをターリャは「おおー、おおー……っ!」と声を上げながら夢中になって眺めていた。
ルシーの脚を膝に挟んで作業しているお爺さんがなんとも言えない顔して頬を掻いた。
「ううーん…。お嬢さんそんなにこれ見て楽しいかい?」
「うん。凄い面白い」
「そうかい…」
困った様子でお爺さんが俺を見る。
「お前さんの妹さんかい?変わった感性しとるな。普通女の子ってのはあんまり見るものじゃないだろう?」
はは、と軽く笑う。
その感性に育て上げちまったのは完全に俺のせいです。
「こんなに小さい頃からずっと馬と旅しているものですから」
「ほう。そんな年月旅を…。なら、納得だ。ほれ、よう見とけ」
感心したお爺さんが今度は誇らしげな顔で技を披露し始めたのを、ターリャは食い入るように見続けたのだった。
ルシーとゼウイの蹄をみてターリャが目をキラキラさせた。
「わあああ!!良かったね!綺麗にしてもらったね!!」
スベスベピカピカの蹄に新品の蹄鉄が填まってる。
凄いな。
こんなに綺麗になるのか。
「おおー、スゲーな」
思わず俺も感嘆の声を上げていると、お爺さんが誇らしげな顔をしていた。
「はっはっ!年甲斐もなく張り切りすぎたな!だが、完璧に仕上がったから、岩の砂漠をこえても整備はしばらく要らんぞ!そこは保証する!」
「ありがとうございます」
その後俺達の装備もしっかり整えてから旅立った。
岩の砂漠を進む進む。
砂漠といっても、あの砂漠とは違い足元がしっかりしているし、何より殺人的な太陽が少しはマシなのがいい。
それにターリャもここなら魔法が使える。
あの砂漠はあまりにも乾燥していたからターリャが水を生み出すための“素”すら枯渇していたから、どんだけ危険だったかが良く分かった。
とはいえここも安全と言うわけではないから気を付けないといけない。
「お、蛇だ」
言った側から蛇の群れ。
この辺りの蛇は何故か集団行動をとる。
みんな一様に猛毒を持っているのに、だ。
「さっさと逃げるぞ!」
「了解!」
そんな感じでどんどん南下していき、三週間目ごろからようやく広大な砂漠地帯を抜けたのだった。
久しぶりに宿を取ると、ターリャが小走りでベッドに駆け寄り勢い良くダイブした。
「もう小さくないんだからそんな飛び込み方したら壊れるだろ」
「ごめんなさーい」
言い方が雑。
でも気持ちは分かる。
岩の砂漠地帯では全く安眠が出来なかったから。
もちろん毒蛇対策はしていたものの、ターリャが水の壁でバリアしていても水のなかを泳いでくるし、なんなら毒を飛ばしてくることも多々あった。
もちろん他の妖魔の襲撃も無くはなかったが、脳裏に甦るのはほとんど毒蛇との戦いだ。
苦しい戦いだった。
「トキー」
顔を枕に埋めてターリャが俺を呼ぶ。
「なんだ?」
「明日1日ゴロゴロしてたい」
「いいぞ」
「やった!!!」
「俺は出掛けるがな」
「ええー!どこ行くの??」
「図書館」
最近全く行けてない。
それにここらの妖魔の情報も更新しておきたい。
ターリャがのそのそ起き上がる。
「ターリャも行く」
「ゴロゴロしてたいんじゃなかったのか」
「したいけどー、ターリャも図書館行くー!」
というか一人称どうした。
疲れすぎて年齢下がってるか?
「はいはい。じゃあ明日の午後一緒に行こう」




