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『遺物』

 スフを倒し、障害がなくなったので興奮しているゼウイを宥めてからもう片方の扉へ。

 構造は入口と大差ない。


 それにしても今回のでだいぶ二頭の性格が分かれたな。

 初ドラゴンでゼウイは半分パニックになっていたのだが、ルシーはドラゴン遭遇し慣れたのかいたって冷静。

 今ゼウイはそんなルシーを尊敬の眼差しで見つめている。

 こりゃ上下関係決まったな。


「ターリャ頼む」

「うん」


 入口の扉はターリャが触ったら開いた。

 きっとこの出口の扉もターリャが触れば開く気がする。


「よーし」


 ターリャが触れると入口同様に扉が光り、自動で開いた。


 この扉何なんだろうな。

 魔力に反応しているとかなのか。


 俺一人だったら完全に詰んでた。








 道なりに行くと分かれ道になっていた。


「今度は一本道じゃないんだな」


 手元にここの地図がない以上、自力でメモして出るしかない。

 しかも運の悪いことに俺の方位磁石は完全に壊れてしまった。

 街の位置も北もわからん。

 今分かるのは辛うじて復活した太陽の位置だけだ。


「どうするか…」

「んー、私に任せて」

「なんか策があるのか」

「うん、多分だけど…」


 ターリャがしばらく考えて、右を指差す。


「こっち」


 指差した方の道へと向かう。

 その後も何回か分かれ道に遭遇したが、ターリャはその度に迷いなく突き進む。

 何でこんなにスタスタ行けるんだ?

 四精獣の勘か?


「ん?」


 ターリャが分かれ道を選ぶ時に手元を見ているのに気が付いた。

 手元にはターリャの買った方位磁石。


「おい、ターリャ。方位磁石壊れてないのか?」

「え?壊れてないよ?ほら」


 ほら、と方位磁石を見せられた。

 ターリャの方位磁石は一つだけおかしな動きをしているものがある以外正常。

 その針は街にいるときにはびくともしなかった針だ。


 観察してみると、一本道の時はずっと前を指していて、それが分かれ道になるとそのどちらかの道を指す。

 もちろんそれが三本だろうが関係ない。

 カーブなんかも斜めを指していた。


 理解した。

 この余分な針は時代遅れの飾り針なんかじゃない。

 れっきとした役目を持った針だったんだ。


 他の二つも観察すると、微妙に動いていることが分かった。

 二つのうち一つはずっと上を指している。

 斜めにしても逆さにしてもずっと上を向いている。

 何のために向いているのか。


 もう一つの針は普段はびくともしないけど、近場に水があるとそこを指す。

 あの時買い渋らなくて正解だったわけだ。

 お陰で水にも困らず、暑さに喘がずに楽できている。


 ターリャの勘は信じるべし、か。









 丸一日歩き、休息を取り、目が覚めたらまた移動。

 そうしているうちに道が坂になってくる。


「なんだか道の様子が変わってきたね」

「だな」


 埃一つ無かった通路に砂が落ちている。

 フワリとかすかに空気が流れ始めた。

 出口が近いのかもしれない。


 そのまま歩いていると、ターリャの足が止まる。


「階段だ」

「光が見えるな」


 目の前にある階段をずっと辿っていくと、小さいが光が見える。


 階段自体は一段一段が大きめで、馬でも登れなくはない。


「よし、もうひと踏ん張りだ」

「うん!」


 めんどくさがる二頭を引っ張って一歩一歩登っていく。

 時折休憩しながら登りきると扉が見えてきた。


「扉だ」


 辿り着いて扉を調べてみた。

 古い扉だが、下のと違って一般的な木製の扉。

 しかし、なんでか外側から板が打ち付けられているみたいで普通に押したんじゃ開きそうもない。


「どうするの?」

「普通に押しても開かないんじゃこうするしかないだろ」


 右足を上げる。


「せーのっ!!」


 バガンッッ!!!!と盛大な音を響かせて扉が開いた。


「っしゃあ開いた…ぜ……」


 ギラギラ太陽に照らされた建物に、そこを行き交うたくさんの人達が驚いた顔をしてみんな足を止めてこっちを見ていた。

 何処だここ。










 どうやら俺達は街のど真ん中にある封鎖中の迷宮遺跡への扉から俺たちは出てきたらしい。


 迷宮遺跡とは大昔の都市が震災とかなんやらで廃れて、自然に埋もれて迷宮化したものや、当時の権力者がお遊びで作らせたもの。果てはドアーフ(別名“石と共に歩む人”低身長であるが怪力で、鉱石を採掘して暮らしている)達の坑道か。

 今回のは大昔の都市で使われていた聖堂の一部。


 で、話を聞くにちょっと前まではこの遺跡は解放されてたんだけど、とある時期から内部で消息不明になったり廃人になった人が多発したので封印されたらしい。

 俺の脳裏に甦るスフ。


 多分あれが原因だよな。


 そんな俺達は今居酒屋に来て飲食を楽しんでいる。

 いや、楽しめているっていうか、周りが楽しんでいる。


「あっはっはっはっ!まさか封鎖している迷宮の扉を内側から蹴破ってくる奴がいるとは思わなかったぜ!それ飲め飲め!」

「で?結局中には何が居たんだ???死神か?吸血鬼か??」


 このヴァオー街は俺達の目指していた街だ。

 砂漠のど真ん中にあって、水の涌き出る珍しい場所にできた街だった。

 特産品はスイカやメロンで、砂糖菓子より甘いという。


「わはははは!!それそれ!どんどん飲め!」

「そこのお嬢さんも好きなだけ果実水おかわりして良いからな!」


 正規の入口からではなく、迷宮からやって来た俺達を面白がって街の住人達が珍しい話が聞けそうだと俺達を居酒屋に連れてきたのだ。

 本当は断ろうと思っていたんだけど、外堀を埋められてしまった。さ宿代金二日分と、居酒屋代金奢りのパワーワードよ。


 お陰さまで俺は久しぶりのお酒にありつけていた。

 ターリャも甘い果実水を美味しそうに飲み、何の肉なのかわからない唐揚げを堪能したのだった。




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