『作戦失敗』
副作用、二日酔いクラスだろうと舐めて掛かってすみませんでした。
死ぬかと思いました。
あまりの苦痛にのたうち回るとは思わなかったから、大袈裟だとターリャに笑いながらいったのだが……。
いやはや、大正解だったわけだ。
というのが三週間前。
薬のお陰ですっかり元気になった俺達は、ルシーを飛ばしてハラ・ラハスン街へと到着した。
街は花畑の中に作られたと言われても過言じゃないほどだ。
そして街中にも花はなハナ華。
そこらが甘ったるい匂いに包まれてお腹一杯。
お腹をさすりながら街を歩く。
「まさか料理にも花が使われているとは思わなかったな」
「ほんのり甘いキャベツみたいだったね」
「だな。俺としてはシャキシャキ感がもう少し欲しいところだが」
残念ながら花びら相手にシャキシャキ感を求めてもどうにもならない。
蜂蜜アイスクリームを横目にギルドを探すと、大広間の中央に噴水が設置されているところに出た。
ぐるりと見渡すとギルド。
ギルドってのは共通して眼前に何らかの広場がある。
何でなんだろうな。
ターリャが噴水から飛んでくる飛沫を眺めながら訊ねてきた。
「次はどんな依頼を受けるの?」
「ああ、実はもうハバナからリストは貰っているんだ」
マジックバッグからリストの束を取り出した。
これは全部竜種関係の依頼だ。
護衛から観察、討伐などなどが勢揃い。
もちろんその中でも討伐だけを狙っていく。
「今回もしっかり準備をしておかないとな」
満身は怪我のもと。
傷薬に体力回復薬は100個貯蓄しておく勢いで。
「ターリャも準備するよ!実はこんなものを手に入れたのです!」
ムフーとターリャが高々掲げたのは高校試験時に活用していた暗記帳のようなもの。
「なんだそれ」
「見てて、これねー」
ペラリと捲ると回復系のノンラ・ドラ・トオーユーが記載されていた。
次のページも形式の違う回復系。
しばらく捲ると毒消しやら麻痺避けなどが現れる。
「これならターリャはすぐに真似して描ける!」
「なるほど」
「確かに描かないと覚えられないからな」
「んふふふー。あ!もちろん元々できた魔法も練習してるからね!」
「大丈夫だ。そこは心配してない」
何せターリャは真面目だからな。
ギルドに入り受付へと向かう。
そこでハバナに出して貰ったリストを提出しながら近隣の竜種情報を照らし合わせてまだ受注出来るかどうかを確認した。
幸い狙っていた依頼は無事だった。
今回はその依頼を受けることにした。
待っていたターリャが俺が戻ってくるのを見てやってくる。
「取れた?」
「取れたぞ」
あとは倒して吸収するのみ。
「ねぇ、トキ」
「どうした?」
「お手紙出したいんだけど」
「ああ、そうたな。俺も出さないといけないな」
ずいぶん溜まってしまっているだろう。
個人的にファックスと呼んでいる機械に向かい操作をすると、ドサドサドサーッ!と大量の手紙が印刷された。
量がエグい。
それを拾い集めているとターリャがポケットから手紙を取り出した。
「ウージョンカおねーちゃんに送って」
「分かった」
手紙を受けとり送信する。
これでよし。
「先にこれを読まないといけないな」
きっとハバナやオーモダズィから重要な情報が送り込まれているはずだ。
「一旦宿に戻ろう」
「分かった」
宿に戻り、大量の手紙に目を通した。
アウレロ達からはいつもの近況報告やら、人気者になっても待ってるぞ!などのいつもの手紙。
ウージョンカとエリナからのはターリャ宛。
「はい、二人から」
「わーい!!」
大事そうに手紙を受け取ると椅子に腰掛けて読み始めた。
俺はオーモダズィの手紙を見つけると、他の手紙を束ねてそれを読み始めた。
すると出るわ出るわボロボロと。
正直引くくらいの情報が出てきた。
追記で、あの薬使ったら早かったぜ!お返しはしたから安心しろよ!と。
まぁ、自白剤だもんな、あれ。
で、その内容はというと、カラス(仮名)達は拐い屋組織で、フトッチョ男爵とかいうのに雇われてターリャを拐いに来たらしいけど、俺という障害があまりにも邪魔なので先に始末しようとした。
薬打ってきたのは、自白剤代わりと、さらには駒にするためだったと。
うわ鳥肌立った。
「というか、フトッチョ男爵って誰」
あまりにも印象的すぎて、俺は秒で名前を覚えた。
今回のドラゴンは一般的なレッドドラゴンだった。
大きすぎず、小さすぎず、かなり平均的な一般レッドドラゴン。
「俺の試験相手が蘇ってきたのかと思った」
これを型どりに使ったといわれても納得するほどそっくり。
ドラゴンがこっちに向けて威嚇をしている。
咆哮しつつ尻尾をバシンバシンと近くの岩に叩き付けて砕いている様子から、大変苛立っているのが分かる。
食事の邪魔をしたからな。
実はレッドドラゴンは寒い時期に冬眠する竜種である。
なのでいまの時期、実りの季節。もとい秋にドラゴンの食事を邪魔してはならない。
諺にもある。
秋のレッドドラゴンは妻より怖いってやつだ。
意味はお察しの通り。
「じゃあ、ターリャ。作戦通りに」
「うん!任せて!」
ターリャもすっかり咆哮に慣れてしまったようだ。
ドウッとドラゴンが大きな火の玉を発射した。
それを盾で受けて威力を確かめる。
うん。まぁまぁかな。
突進してきたドラゴンを受け流し、引っ掻きやのし掛かり、尻尾での薙ぎ払いを受けて着々とダメージチャージを溜めていく。
そろそろかな。
ドラゴンが大きく息を吸い、胸を膨らませた。
さて、これが情報通りなら。
先程とは違う炎が吐き出された。
火の玉ではなく霧状の炎が周囲にばら蒔かれた。
以前戦ったグレイドラゴンが使った炎の本来の姿だ。
炎に巻かれる瞬間、俺はターリャの方を向いた。
「今だ!ターリャ!」
ターリャは大量の水の玉を作り上げると、それを一斉に爆発させた。
いや、霧散させた。
辺りが霧に包まれて、炎はあっという間に威力が弱まっていく。
「そのまま顔に水を被せろ!」
「えいや!」
だぽんっ、と一瞬で霧が巨大な水の玉になり、ドラゴンの頭を飲み込んだ。
よし、作戦成功。と思ったのだが。
突然のことにドラゴンがパニックを起こして、水を剥ぎ取ろうと暴れるが取れるわけ無い。
呼吸が出来なくなってきたドラゴンが苦しげに呻き、突然ターリャの方を向いた。
「!」
そしてそのままターリャに向かって突っ込んでいく。
「ターリャ!ドラゴンの足元に水を発生させて転ばせろ!!」
慌ててターリャに指示をだし、ターリャとドラゴンの間に割り込むと、ロックの外れた剣を抜き放って狙いを定めた。
突然の事態に一瞬固まったターリャだったが、俺の指示通りにドラゴンの足元に水を発生させると、ドラゴンは水の玉のせいで視界が悪いこともあって見事に足を滑らせた。
倒れたドラゴンの上に飛び乗り、素早く逆鱗を見つけ出して突きを放つ。
「おりゃああ!!!」
くぐもった爆発音と共に、ドラゴンが泡と血を吐き出すと、そのまま動かなくなった。
ふう、危ない危ない。
ターリャが恐る恐るやって来た。
「もう平気?」
「ああ。もう大丈夫だ」
ドラゴンから降りると、ターリャが頭に張り付けていた水を霧散させて消した。
しかし、あのまま窒息させようと思ったんだが、ドラゴンってのは思いの外息が持つんだな。
初めて知った。
いけると思ったんだけど、こりゃあターリャの攻撃方法をもう少し考える必要があるな。
ターリャがドラゴンに触れると光の玉が抜け出してターリャの手のなかに収まった。
それを食べるターリャ。
すると、久しぶりにターリャの体が輝き始めた。




