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『大会終了』

 舞台全体にヒビが入る。

 受け流した衝撃が凄まじくて、その余波が観客席を襲っていた。


「これで終わりじゃないぞ!!」

「!!」


 視界が悪い状態で、複数の飛来音を耳が拾い上げた。

 四方八方からの攻撃をほぼ勘で対応。

 全て受け流した。


 オーモダズィが口笛を吹いた。


「探知系のスキルでも持ってんのかよ。やべーな」


 そんなもん持ってるわけないだろ。

 勘だよ。


「さて…」


 オーモダズィの攻撃方法をざっくりと頭の中で整理した。

 スキルは重さ変動関係。

 それは間違いない。

 普段は剣に軽量化を施し、接触直前に加重。

 基本は自らの体か装備に留めているが、さっきは瞬間だが空間ごと加重させた。

 お陰で動きが鈍って回し蹴りを避けられなかったが。

 ついでにスペルだけで発動する魔法を高速で展開できる。

 はっきり言って強敵だ。


 ……しかし。


「……やっぱりどこかで殺し合った(やり合った)ことあるなぁ、これ」


 薄ボンヤリとだが、身に覚えがある。

 何処だったか…。







 視界を悪くさせる土埃が記憶と重なる。

 立ち込める生臭い血の匂いと、吐き気を催す腐敗臭が甦ってくる。

 …。




 視界の先に立つ黒い影を思い出した。





「……ああ…、彼処でか……」



 懐かしいロングスタ。

 彼処で一度殺し合った。


 思わず口元に笑みが浮かぶ。


「…なら、本気を出すしかないか」


 盾を小さくする。

 大きく息を吸い、オーモダズィを見定めた。

 思い出せ。

 あの頃を。

 あの時の感覚を。

 ざわりと、空気が冷えていく。


 それにオーモダズィが気付いた。

 わずかにたずろいだが、すぐに持ち直す。

 そうだ。

 そうでなければ生き残れなかった。


 歩み出す。

 ただまっすぐに。


 走り出す。

 オーモダズィ目掛けて。

 気持ちは肉食獣。

 獲物は奴…。


「ッッ!?」


 何かにビビったオーモダズィが、俺に向かって総攻撃を仕掛けてきた。

 電撃が飛んでくる。

 それは盾によって受け流した。

 土塊がスキルで物凄い速度で飛んでくる。

 全て紙一重で避け、さらに進む。


 オーモダズィの表情が変わった。

 だけど、顔は笑みを保ちながらも、剣を構えた。

 わかるぞ。

 人間、ヤバイとき程笑みを作る。


 だが、オーモダズィの笑みは、それとは何処か違う。

 オーモダズィが嬉しそうに声をあげた。


「ああ、確信を得た!!!! 

 フリモ!!今度こそ貴様を倒す!!!」


 雄叫びを上げてオーモダズィが猛攻撃を仕掛けてきた。

 切っ先が掠めた頬から血が飛ぶ。

 だが、これまでだ。

 オーモダズィ。


 相手の間合いからさらに踏み込み、オーモダズィの剣を小さくした盾や腕の装備を使って威力を殺して軌道を変えていく。

 すると、だんだんオーモダズィの表情に焦りが滲み出てくる。

 剣筋がぶれてくる。

 あと数歩で、俺の拳が届く。


「うおおおおおお!!!!」


 剣が大振りになった。

 と、同時に大型の魔法を発動したらしくオーモダズィの背後に3メートルはあるゴーレムらしきものが生成されて立ち上がった。


「無駄だ」


 盾を戻し、剣を抜く。

 それを素早くオーモダズィの喉元に突き付け、発動した。


 爆音を上げてゴーレムが爆発して粉々に砕け散った。


 相当ダメージチャージを溜めていたからな。

 舞台の方まで破壊してしまった。

 絶対これ怒られる。


 オーモダズィの剣が音を立てて地面に落ちた。

 そしてオーモダズィも膝から力が抜けたように尻餅を着き、俺を見上げて「ははっ…」と小さく笑う。


「やっぱ、強いなあんた…」


 司会が飛んできてオーモダズィと俺を交互に見て、旗を俺の方へと振った。



『勝者!!ザウスゥゥゥゥゥ!!!!!』



 ドワアアアアアア!!!!と地鳴りのような歓声が上がる。

 勝った。








 記者に囲まれた。

 俺は控え室に帰りたいだけなのに。

 おかしいだろ。

 職員が記者とか報道関係者を入れないようにしているって訊いていた筈なのに、押しくらまんじゅうが余裕でできる数が押し寄せている。

 どっから侵入した??

 ゴキブリかよ。

 つかマイクがゴンゴンとぶつかってきてじみに痛い。


「退いて退いて退いてください!!!」

「なんでこんなに入ってきてるんだ!!!」


 少し遅れて職員が大勢押し寄せて、記者を押し退けていく。

 しかしそこは記者も負けていない。

 良い記事を書くためにと他社と共同で押し戻そうとしていた。

 どっかで見た光景だなこれ。


 あ、早朝のラッシュ時の奴だ。


「ザウス様こちらでごさいますっ!」

「!」


 軽く現実逃避していると、ハバナが俺をちょいちょい手招きしていた。

 隙を見てハバナの方へと避難した。

 幸い記者も職員も俺の事を見てなかったからスムーズにいった。


 そして無事に控え室に入室。


「お帰りなさい!」

「ターリャ!」


 跳んできたターリャを受け止めると、ターリャは思い切り抱き付いてきた。


「ト…、すごくかっこ良かったよ!怪我は痛くない?」

「このくらい何でもない。腹裂かれたのと比べれば蚊に刺されたもんだ」

「いやあれと比べちゃダメでしょ」


 いまだに傷跡くっきりな場所をバシバシ叩かれた。

 ハバナが微笑み、スポーツドリンクの味の飲み物を差し出してきた。


「お疲れさまでした。もう少ししてから表彰式がありますので」

「わかりました。…………ところで」


 視線をハバナの横に移す。


「なんでここにオーモダズィがいるんですか??」


 何故か控え室にオーモダズィが俺よりも先に待機していた。








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― 新着の感想 ―
[気になる点] 思わず口がにやける。 にやける(若気る)男性が女性のようになよなよとして色っぽい様子。 元々は鎌倉・室町時代頃に貴人の側に付き従って男色の対象となった少年。
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